一人の男と少女の出逢い

とある日の事、突如となく二人は巡り会う事となる。
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琢凱提督(仮) @kusohayararu

「一人の男と一人の少女の出逢い」

2015-07-24 20:49:00
琢凱提督(仮) @kusohayararu

1. とある港に一人の男が居た、動きやすい短パン・半袖シャツ・首にタオルを巻いてその男はせっせと木箱を倉庫から船へと運ぶ。

2015-07-24 20:49:03
琢凱提督(仮) @kusohayararu

2. その男は提督と呼ばれる身柄ではなく物資調達員。 運ばれてくる資材を諸提督の船に積んで行く、いわゆる裏方の仕事である。 提督になれるのはほんの一握りの人間だが此方は人手がいくらあっても足りないとも言えよう。

2015-07-24 20:49:06
琢凱提督(仮) @kusohayararu

3. 嗚呼、今日もこうして1日が過ぎてゆくのか…。 そんな思いを頭に巡らせながらもこの男は仕事に回る、無論提督になれない事に悔しさはあった。知り合いにも何名か提督は居るので話を聞く度に憧れと悲しさが突き刺さる。

2015-07-24 20:49:08
琢凱提督(仮) @kusohayararu

4. が、不満と言う不満は溜め込んではいなかった。なれずともこうして影で支えられるだけでも充分な程満足感を得ていた。 だが…、そんな日々にとある変化が訪れようとしていた。

2015-07-24 20:49:10
琢凱提督(仮) @kusohayararu

5. それはとある日の事だった、大事な提督宛ての書類を秘書艦から通して渡して欲しいとの事であった。 時にこう言った仕事も回されるのは日常茶飯事だ、それに普段はお目にかかれない艦娘とも僅かの間だが雑談も出来る。 そう思いつつも秘書室へ向かえば先客が1人、秘書艦と話をしていた

2015-07-24 20:49:13
琢凱提督(仮) @kusohayararu

6. 珍しいな、と考えつつも戸の傍に腰掛けては話の内容を伺う。 ??「今回の戦いで、自分は充分な戦果を挙げられなかった。 その上周りの足も引っ張ってしまった…、だから…」 ??「…除隊命令は完了してる筈ですが他にも何か?」

2015-07-24 20:49:20
琢凱提督(仮) @kusohayararu

7. ??「それなら大丈夫さ、もう一つ頼みがある」 ??「…頼み、とは?」 互いの間に切羽詰まった空気が流れる秘書艦も分かった上でも問い掛けであろう。 ??「自分の解体を、お願いしたい。」 ??「……」 より空気は重くなる、それは扉越しからでも痛いくらいに伝わっていた

2015-07-24 20:49:31
琢凱提督(仮) @kusohayararu

8. ??「解体、ですか…。」 本来艦娘の解体は本人の意思では無論出来ない、その上自分から志願する者など指折り数えても少ないくらいだ。 ??「勿論考えた上での結論さ、でもこのまま足を引っ張るくらいなら…誰かの糧になった方がまだマシさ。」

2015-07-24 20:49:35
琢凱提督(仮) @kusohayararu

9. 更に空気は冷たく、張り詰めた物となる。互いに言葉もかけづらく反対も賛成も促して良いのか分からない程に。 一部始終を聞いていたこの男も考え込んでいた、提督としての経験は無いとは言え基礎知識程度は叩き込んでいる。 本来は聞かなかった事にすべき筈…だが別の思いもよぎっていた

2015-07-24 20:49:37
琢凱提督(仮) @kusohayararu

10. それは彼女を引き取ると言う選択肢、自分の相方にすると言うのだ。 だがそんな事など不可能以外の言葉は見当たらない、本来艦娘は提督方の建造・もしくは海域にて出会った艦娘を艦隊に迎え入れるというのが常識だからだ。 それでも滾る思いを止められる事は出来ずにいた。

2015-07-24 20:49:39
琢凱提督(仮) @kusohayararu

11. 男は行動に出た、張り詰めた空気を引き裂かんばかりに戸を勢い良く開ければ開口一番にこう告げる。 琢磨「待ってください!!」 二人の艦娘は驚いた様に目を丸くすると扉に視線は釘付けとなった。 ??「あの…、どちら様でしょうか?」 当然の様な質問が返ってくる。

2015-07-24 20:49:41
琢凱提督(仮) @kusohayararu

12. 1人の女性は黒色の肩まで掛かる長髪にカチューシャ・黒縁の眼鏡と知的な雰囲気を漂わせていた。 そう、彼女は軽巡洋艦大淀である。 男は一目見ただけで分かった、まさかこんな形で出会うとは双方とも思っていなかっただろう。

2015-07-24 20:49:44
琢凱提督(仮) @kusohayararu

13. 琢磨「ええ、突然割り込んできて申し訳ありません。 でも…、話を聞いてしまった以上見過ごす事は出来ませんでした。」 男は深々と頭を下げる、大淀もそれに返すように告げる。 大淀「いいえ、聞かれてしまったからには過ぎた事ですしお気になさらず。」

2015-07-24 20:49:47
琢凱提督(仮) @kusohayararu

14. 大淀「それに、こうして割り込んで来たと言う事は貴方なりの考えがあって来たのでしょう?」 彼女は柔軟な性格の様だ、焦る表情も見せなければ穏やかな笑みを浮かべながら説明を続ける。 琢磨「はい…、単刀直入に言わせて頂きます。 彼女を…自分の相方として引き取らせて頂きたい」

2015-07-24 20:49:50
琢凱提督(仮) @kusohayararu

15. 大淀「なるほど…、何故そう思ったのです? 失礼ながら貴方は提督では無いはず…それにもし提督だとしても艦娘の個人取引は許されてないですよ?」 彼女の意見はごもっともだった、だが提督に着任していない彼だからこそこの提案を出してみたのである

2015-07-24 20:49:51
琢凱提督(仮) @kusohayararu

16. 琢磨「提督着任をしていない自分なら…、解体はせずとも除隊は完了している彼女を引き取るという形なら問題はないはずです。」 大淀も再び片手を顎に添えれば考え込む、彼の意見は当たってるからなのか…それとも反論を促そうとしているのか。

2015-07-24 20:49:53
琢凱提督(仮) @kusohayararu

17. 大淀「不可能ではない…と思います。 けれどこの事は私一存の答えでは決まられません…ですので…」 踵を返せばそう説明する、しかしこの男も察しが良かったのか繋げる様に言葉を返す。 琢磨「つまりは保留…と」 大淀は言葉は返さずに相槌を打つように小さく頷いた。

2015-07-24 20:50:25
琢凱提督(仮) @kusohayararu

18. その時だった、扉越しから男性特有の野太い声が響き渡る。 ??「おーい、入るぞ?」 そう言って執務室にもう一人の男性が増える。 筋肉質な見た目、黒いサングラスに低めのトーンの声、そして海兵帽に海兵服。 一目見て彼(琢磨)も提督と判断した 大淀「あら、お早いですね」

2015-07-24 20:50:50
琢凱提督(仮) @kusohayararu

19. ニコリと大淀は微笑みかける。提督は何も言わずに彼(琢磨)と目線を合わせる。 しかし次に提督から出てきた言葉は少し意外な物であった。 ??「おっ、琢磨さんじゃないか。ここで会うとはな」 琢磨「ええ、お久しぶりですリカルド提督。 自分も予想してませんでしたよ…」

2015-07-24 20:51:16
琢凱提督(仮) @kusohayararu

20. そう、彼らは昔からの知り合いであった。 多少の交流は勿論時々飲みにも行っていた程だ。 しかし大淀は二人の間柄を知らなかかったのか口元に片手を添えて軽く驚いた様な表情をする。 大淀「まあ、彼とお知り合いだったなんて…初耳でした」 リカルド「ああ…、話してなかったな」

2015-07-24 20:51:24
琢凱提督(仮) @kusohayararu

21. リカルド「まあそれは追々話すとして…、何でまぁ引きとろうと思ったんだい?」 流れを切るように直球の質問をぶつけてくる、二人の間柄だからこそ容易く踏み入れるのだろう。 リカルド「元々除隊を願った艦娘だ、引き取るのは提督は不可能だが何故なのか聞いとかないとな…」

2015-07-24 20:51:31
琢凱提督(仮) @kusohayararu

22. 琢磨「最初…この話を聞いた時は酷いと思いました、除隊を志願したとは言え解体されるのはもっと酷い…って思います」 リカルド・大淀「……」 琢磨「けど、この娘を見た時に思ったんです…自分の傍で見守ってやりたい…親代わりになりたいって思ったからです。」

2015-07-24 20:51:41
琢凱提督(仮) @kusohayararu

23. リカルド「まあ、良いんじゃないか? ちゃんとした理由もあるみたいだしな」 大淀・琢磨・??「!!」 2人は驚いた、無論もう一人の娘もだ。 まさかこんな結論が返ってくるとは思いもよらなかったからだ。 リカルド「元々俺らも別件で来た訳だし深く追求は出来ん…がな。」

2015-07-24 20:51:47
琢凱提督(仮) @kusohayararu

24. 大淀「でも…我々の一存で決めて良いのでしょうか…?」 リカルド「除隊は完了してるなら誰かが決める決定権だってない筈だしそれも一つの選択肢としてアリだと思うが。後はお二人さんで決める事なんじゃないか?」 彼(琢磨)は表情を緩ませた、しかしスムーズすぎて不安でもあった

2015-07-24 20:51:54