「ヒストリー・リピーツ・ヒムセルフ」#1

まとめ用に再放送行為したのでアカウントが違います。ごあんしんください。
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ジュセー:サブ @Shiroboshi3

バイオスモトリによる労働力によって、大型のリフトが降下を始める。数十人は搭乗できるであろうこのリフトには今、二人しか搭乗しておらず、どこか寂しい。二人の内の片方……細身の男はどこか落ち着かない様子だ。 2 #S57Ninja

2015-07-29 16:07:18
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

ゴウン、ゴウン、ゴウン……降下音が鈍く鳴る度に、細身の男は身を強張らせるのだった。「緊張しているのか、エフェメラ=サン?」もう一人の、中肉中背の男が聞く。「……アッハイ。実際緊張しておりまして」細身の男は弱々しく答える。それを見て中肉中背の男はほくそ笑む。3 #S57Ninja

2015-07-29 16:10:06
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

エフェメラと呼ばれた細身の男の顔は青ざめている。「緊張を解したいのならZBRの投与がよかろう」そう言い、中肉中背の男がエフェメラに注射器を手渡す。「え、遠慮し」「ん?何か言ったかね?時にエフェメラ=サン、君はアプレンティスだね。私はアデプトだ」 4 #S57Ninja

2015-07-29 16:12:06
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

「アッハイ」「アデプト……いや実質マスターだ。 グランドマスターになる男だからな、私は」「アッハイ」「君もそう思うな」「アッハイ」「アデプトなどに収まるような器ではないからな私は」「アッハイ」……ゴウン、ゴウン、ゴウン。リフトは降下し続ける。 5 #S57Ninja

2015-07-29 16:16:59
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

二人を乗せたリフトは軋んだ音を立て、地下4階層で止まった。6 #S57Ninja

2015-07-29 16:18:42
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

「ヒストリー・リピーツ・ヒムセルフ」 #S57Ninja

2015-07-29 16:20:11
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

ブーン、ブーンズッズー、ブンズズー……違法乱立高層ビルが乱立する猥雑な街並みに扇情的テクノが鳴り響く。 7 #S57Ninja

2015-07-29 16:21:44
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

雅さ、礼節、奥ゆかしさ、福利厚生……そういったものからはかけ離れた猥雑な場。しかし、まだここは中層、つまり下がある。これでも下に比べれば遥かに良いのだ。 8 #S57Ninja

2015-07-29 16:22:46
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

ここはアンダーガイオン。華やかでありながら奥ゆかしさも兼ねたアッパーガイオンとは真反対の地下都市。貧窮民、社会の汚点……そういったものが押し込められた、謂わば掃き溜めの場。 9 #S57Ninja

2015-07-29 16:24:53
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

(やってしまった。またZBRを……足を洗ったのに!ニンジャになって、免疫力や抵抗力を強靭にしたのに!)エフェメラは悔いていた。まだアプレンティスの身である、それ故にアデプトであるニンジャ……エスカリエの勧めを聞き入れてしまったことを。10 #S57Ninja

2015-07-29 16:26:33
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

かつてモータルであった頃、ドラッグによって人生を狂わせたエフェメラはノードラッグを誓っていた。そしてそれを態度で示していた。エスカリエも当然その事を知っている。その上でエスカリエはエフェメラにZBRの投与を強要したのだ。 11 #S57Ninja

2015-07-29 16:28:28
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

(早く任務から解放されたい。このニンジャから解放されたい!そして再びノードラッグを誓いたい!)メンポの奥で 悔しさを噛み殺しながら、彼は心の底から祈った。そこに「アー、それにしても」エスカリエが欠伸まじりに言の葉を紡ぐ。エフェメラは聞き流そうとした。 12 #S57Ninja

2015-07-29 16:29:40
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

(このニンジャは任務とはなんら関連性の無い話しかしないのだ)「それにしてもだ、この場所というのは」エフェメラは聞き流す。「雅さも奥ゆかしさもなく」エフェメラは聞き流す。「笙の音さえない!唾棄すべき低俗な電子音の喧しい事といったら!」エフェメラは聞き流す。 13 #S57Ninja

2015-07-29 16:31:02
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

聞き流す、聞き流す、聞き流す……。 二人の歩みはゆったりとしている。 エスカリエが何かしら喋りながらゆったりと歩くので、エフェメラはそれに合わせているのだ。彼としては早く任務を終わらせたいのだが、追い越せば何を言われるか、何をされるか、わからない。 14 #S57Ninja

2015-07-29 16:32:19
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

_____________ 15 #S57Ninja

2015-07-29 16:33:32
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

傲慢たる男は、傍に歩くアプレンティスを見ながら邪悪な笑みを浮かべていた。(これはこれは、聞き流しておるな。ネンコの概念を知らぬと見える。これも報告物だな)「エフェメラ=サンよ、お前もそう思うだろう」「はい」エフェメラは素っ気ない返事を返す。 16 #S57Ninja

2015-07-29 16:36:08
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

その後も幾つかのやり取りがあったが、エフェメラは態度を改める様子が無かった。傲慢たる男、エスカリエはメンポの奥で口元に弧を浮かべる。(このグランドマスターも同然の私に斯様な態度を取るとはな)彼はエフェメラの露出している部分の肌を見る。青白い肌を。 17 #S57Ninja

2015-07-29 16:37:23
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

エフェメラの青白い肌は、ただ日に焼けていないというようなものではない。日が届くことのないアンダーガイオン出身者特有の肌だ。アッパーガイオン出身者との外見上の差異は一目瞭然。これはエフェメラがアンダー出身者であることの確かな証拠だ。 18 #S57Ninja

2015-07-29 16:39:27
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

「それにしてもアンダーガイオンは臭い!実際不潔だ!こんなところで生まれ育った者がいるなどとても信じられん!そんな輩には同情を通り越した感情が湧き出るというものだ!……お前もそう思うだろう?」エスカリエはエフェメラのアンダー特有の青白い肌を見ながら言った。 19 #S57Ninja

2015-07-29 16:41:53
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

「!!……は、はい」エフェメラは青白い肌を一層青くして俯いた。彼は自らの出身地であるここ、アンダーガイオンが良い場所だとは勿論思っていない。だが、腐っても故郷なのだ。それへの罵倒には、流石に反応をしてしまった。エスカリエは邪悪な笑みを浮かべる。 20 #S57Ninja

2015-07-29 16:44:20
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

「フゥーム?なんだねエフェメラ=サン、その返答の仕方は。ギルドのニンジャはそのような気の抜けた返答など……これは査定物であるな?」「……はい」エフェメラは憎んだ。浅はかな自分、そしてこのアデプトに。(ああ、なんたるウカツ!俺の栄光の道は消え去った!) 21 #S57Ninja

2015-07-29 16:45:39
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

________________ 22 #S57Ninja

2015-07-29 16:48:07
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

数分後。彼等は猥雑な街並みから少し外れた建物の前にいた。「とことん」「感じが良い」「あっ、スゴイ」などの看板の仄かな電光が二人を照らしている。「さてエフェメラ=サン。任務の最終目的地点だ」「はい」「君の初任務が故、キンボシは君に譲ろう」 23 #S57Ninja

2015-07-29 16:49:24
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

エスカリエは懐からマキモノを取り出し、エフェメラに押し付ける。エフェメラは何度目かわからぬ憎悪を抱いた。(何がキンボシを譲ろう、だ。自分が面倒なだけだろう!)彼は平静を装いマキモノを受け取った。「いってきたまえ」「……ヨロコンデー」 24 #S57Ninja

2015-07-29 16:50:20