「ヒストリー・リピーツ・ヒムセルフ」#1

ジュセー:サブ @Shiroboshi3

「サラバ。エフェメラ=サン」エスカリエは爆発四散跡にオジギをした後、おもむろにスリケンを生成した。尋常ではないほどに薄いスリケンを。そしてそのスリケンを……自らの身体に刺した。「グワーッ！」何度もそれを繰り返す。繰り返す。 50 #S57Ninja

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(バンディットとかいう胡乱な輩は強敵であったからな)「グワーッ！」幾度か繰り返した後、彼はギルドにIRCメッセージを送信した。『エマージェンシー。ソウカイヤのニンジャと遭遇。エフェメラ=サン死亡。私も重傷な。そのニンジャは逃走。帰還重点』 51 #S57Ninja

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ギルドからの応答を確認すると、彼はその場を立ち去ろうとした。直前、エフェメラの爆発四散跡を振り返った。(サラバ。エ、エ……エフェメラ=サン。君のことは記憶に留めておくよう努めるよ。名誉に思ってくれていい……オヒガンが実在するのなら、そう思っていてくれ) 52 #S57Ninja

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……「実際情けない様です。ケジメは既に済ませました」……「そのニンジャはバンディットと名乗りました。実際強豪であり、ギルドの未来を担うべき尊い若者を失いました」……「私も重傷を負い、近々ネオサイタマで行われるソウカイヤとのイクサへの参加も厳しく」……。 54 #S57Ninja

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エスカリエは自らの派閥の長であるニンジャにドゲザをしながら、謝罪の言葉や媚びの言葉を放った。ドゲザは最も屈辱的な行為であり、名家出身の彼にとっては一般的なドゲザ感覚よりも遥かに屈辱的であるはずだ。しかし彼はそうは思っていなかった。 55 #S57Ninja

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それはドゲザを見ている者の身分が理由であった。エスカリエのドゲザを無感情に見つめるは、ザイバツ・グランドマスターの一人である。エスカリエは、自分よりも身分が高い相手に対して屈辱的な感性は持たぬ。彼が彼らしい感性を向けるのは格下の者に対してだけなのだ。 56 #S57Ninja

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エスカリエはケジメし、ドゲザをし、謝罪をした。ギルドはそれを認め、処罰は僅かな謹慎に終わった。その謹慎の間に、ソウカイヤとザイバツとの戦いが行われたという報が彼の耳に入ったが、彼は然程興味を抱かなかった。自分とは関係のないイクサであると認識していた為だ。 57 #S57Ninja

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そのイクサに、グランドマスターである自らの派閥の主やマスター位階のニンジャの参戦への疑念こそ抱いたものの、エスカリエはその疑問をすぐに捨てた。偉大なるロードの考えへの疑問など、愚かだからだ。興味も無い。ロードの考えに興味を抱くなど、シツレイの極み……。 58 #S57Ninja

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そのような事は恐れ多い。ただ事実だけを彼は呑み込んだ。そして謹慎を終えた彼は再びギルドから与えられしミッションをこなしていったのだ。アプレンティスやアデプト、一部のマスターを見下しながら。 59 #S57Ninja

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それから、数年の月日が経った。60 #S57Ninja

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エスカリエは毎日を理不尽への怒りと共に過ごしていた。彼の位階は未だアデプトであるからだ。彼はそれがおかしいと思っていたし、なぜそうなのかも理解できなかった。「今頃はグランドマスターであるはずなのだ。ちょうど空きも出来ている」「何か言われましたか？」 61 #S57Ninja

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「いや。なんでもない。任務に集中しろ、ノール=サン」「わかりました」ノールと呼ばれた灰色ニンジャ装束の男は頷いた。彼らは今、アンダーガイオンの六階層に居る。62 #S57Ninja

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(あの時も六階層だった)エスカリエは心中で、あの日の出来事を思い起こす。アプレンティスと共に六階層……実際は四階層である……に赴き、ソウカイヤのニンジャと遭遇した時の事を。(あのアプレンティス……フェ、フェ……なんだったか？まぁ良い) 63 #S57Ninja

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「時にノール=サン、アンダーガイオンは実際臭くて不潔だな」エスカリエはノールの青白い肌を見ながら言う。「ええ、実際汚らわしい場所ですよ！こんなところで生まれ育ったと思うとムシャクシャします！」ノールは声を荒げ答えた。(好かん男だ)とエスカリエは思った。 64 #S57Ninja

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「ああ、そうだな」素っ気ない返事をエスカリエは返した。彼の心中では、グランドマスターの文字がグルグルと回り続けている。トランスペアレントクィリン、イグゾーション……偉大なるグランドマスターには今、二つも空きがある。 65 #S57Ninja

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「汚いといえばですよエスカリエ=サン。あの例のあいつ、あれ……」「ニンジャスレイヤーか」「それですそれです。実際あの悪趣味なビラや、イグゾーション=サンを殺めた輩！汚らわしくて許せないですよね！」ノールは興奮しながらエスカリエに言葉を投げる。 66 #S57Ninja

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「ああ、うむ……着いたぞ」メンポの奥で面倒気な顔をしながら、エスカリエはノールにマキモノを渡した。「君にキンボシをやろう」「ありがとうございます！」ノールはサッとマキモノを受け取り、闇商人アジトへと入っていった。(好かん。どんな罪をギルドに報告しようか) 67 #S57Ninja

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彼は近場に椅子が無いかと探したが、何もなかった為、壁に寄りかかった。(ギルドからは簡単な任務ばかりをさせられる。これで今日も任務が終わる……)彼が飽いていた簡単な任務の日々に終わりが近づいている事を、彼は知らない。 68 #S57Ninja

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「ヒストリー・リピーツ・ヒムセルフ」 #1 終わり。 #2 へ続く。 #S57Ninja