「ヒストリー・リピーツ・ヒムセルフ」#2

最終セクションな。
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ジュセー:サブ @Shiroboshi3

「ヒストリー・リピーツ・ヒムセルフ」 #2 #S57Ninja

2015-07-29 17:48:11
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

(……遅いな)エスカリエは苛立たしげな顔をメンポの奥で作った。(マキモノを届けるだけだろう。これは報告物であるな)彼は装束に刻まれたザイバツの紋を神経質そうに触れながら、若きアプレンティスたるノールがドゲザとケジメをする様を幻視した。1 #S57Ninja

2015-07-29 17:48:26
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

(愚かなるアプレンティス。グランドマスターたるべき私に従っているということを自覚しているのか)エスカリエはザイバツ紋を撫で、苛立たしげな目を建物の入り口へと向けた。(私が直接ケジメをしてやるべきか?) 2 #S57Ninja

2015-07-29 17:48:45
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

エスカリエは歩き出した。一歩一歩大儀そうに。そして入り口前へと至り、扉に手を掛ける。 「……!」何を察したか、彼は飛び退いた。直後、「グワーッ!!」扉がひしゃげ、そこから影が打ち出されたのである!その影はニンジャ!ザイバツ・アプレンティスのノールである!3 #S57Ninja

2015-07-29 17:49:40
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

「何!ノール=サン!?イヤーッ!」「グワーッ!」エスカリエは吹き飛んで来たノールを叩き落とし、見下ろした。彼の脳裏に真っ先に浮かんだのは、あの日の光景。自らの属する派閥の主へドゲザをした時の光景である。 次に哀れな若きアプレンティスへのカイシャクが浮かんだ。4 #S57Ninja

2015-07-29 17:49:55
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

エスカリエはあの時の光景を思い出しながら、この場において一番の選択を考えた。周りには誰もいない。このエリアでミッションを遂行しようとしているザイバツ・ニンジャは居ない。(カイシャクをすべきか?)彼の出した結論は、あの時と同じ選択であった。 5 #S57Ninja

2015-07-29 17:50:19
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

あの時と同じ。カイシャクを。だが、その必要は無いようであった。何故か?……ひしゃげた扉の奥から放たれたスリケンがノールの頭部を貫いたからである。「アバーッ!サヨナラ!」ノールは爆発四散した。エスカリエは舌打ちし、顔を上げた。そして叫んだ。「何者だ!」と。 6 #S57Ninja

2015-07-29 17:50:34
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

そう間を空けることもなく、ひしゃげた扉の奥から人影が見えた。人影の正体は、スリケンの投擲主である。無論ニンジャ。赤黒の装束を身に纏ったニンジャ。そのニンジャは並々ならぬ殺意と憎悪を滲ませた目で、エスカリエをきっと睨む。エスカリエは動じることなく睨み返す。 7 #S57Ninja

2015-07-29 17:50:51
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

「ドーモ、エスカリエ=サン。ニンジャスレイヤーです」赤黒のニンジャはアイサツをした。「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン。エスカリエです」エスカリエもまた、アイサツをした。「私の名はノール=サンから聞いたか」「その通りだ」ニンジャスレイヤーがカラテを構える。 8 #S57Ninja

2015-07-29 17:51:12
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

「ふん。ニンジャスレイヤー=サン。貴様の罪は重いぞ。高潔たるザイバツに卑しき刃を向け、下劣な行為を繰り返す!」エスカリエも油断ならぬカラテを構える。ニンジャスレイヤーはジゴクめいた声で言った。「その卑しき刃にオヌシ等は切り刻まれるのだ。ニンジャ殺すべし」 9 #S57Ninja

2015-07-29 17:51:32
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

「口だけは達者だな!その口を縫い合わせ、ロードに献上してくれる!このグランドマスターたるエスカリエが!イヤーッ!」エスカリエがスリケンを一度に四枚投擲!ニンジャスレイヤーはそれらを最小限の動きで回避、そして間髪入れずにスリケン投擲。「イヤーッ!」八枚! 10 #S57Ninja

2015-07-29 17:52:34
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

エスカリエは最小限の動きで回避。そこにニンジャスレイヤーが驚くべきスプリントで迫る。「イヤーッ!」カラテの一撃!「イヤーッ!」エスカリエも己の拳を突き出す!互いの拳が衝突!空気が振動する!「「ヌゥーッ!」」両者は唸り、より力を込める。敵を叩き潰さんが為! 11 #S57Ninja

2015-07-29 17:52:55
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

「その身に受けよ胡乱者!グランドマスターのカラテを!イヤーッ!」「オヌシがグランドマスターと?面白い冗談だなエスカリエ=サン。イヤーッ!」互いのカラテが高まる、高まる、高まる!「ヌッ……!」エスカリエが押され始めた。「馬鹿な」「イヤーッ!」「グワーッ!」 12 #S57Ninja

2015-07-29 17:53:15
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

エスカリエの拳が砕け、血が吹き出す。だが彼は決断的にニンジャスレイヤーへとケリ・ キックを繰り出した。「イヤーッ!」「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはエスカリエのケリ・キックを後方へ跳躍することで回避した。エスカリエもまた、後方へと飛び退いていく。13 #S57Ninja

2015-07-29 17:54:38
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

後方へ飛び退いたエスカリエは、その場で高く跳躍した。ニンジャ脚力のなせる尋常ならざる跳躍!「新グランドマスターに相応しきワザマエを貴様に見せてやろう!」高く跳躍したエスカリエは……再び跳躍した!踏ん張る場のない空中で、である!フシギ! 14 #S57Ninja

2015-07-29 17:54:56
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

賢明な読者諸君は疑問に思われたことであろう。如何なニンジャとはいえ、空中での跳躍など不可能なのでは?と。然り。そのような芸当は到底できるはずも無い。だが……読者諸君の中にニンジャ視力を持つ方がおられれば、見えたかもしれない。エスカリエの二段跳躍の秘密を。 15 #S57Ninja

2015-07-29 17:55:23
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

支えの無い空中での跳躍の瞬間、エスカリエの足元に極端に薄く透明な、カバープレートめいた板が出現していたことを。これこそはエスカリエの持ちしジツ。タカイアガル・ジツだ!極薄スリケン生成の要領で薄く脆弱な足場を築き、それを踏み台として高く高く上昇していく! 16 #S57Ninja

2015-07-29 17:55:49
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

「高みへ、より高みへ!貴様のようなシツレイの極みたる胡乱者はブザマに地を這い、見上げ、崇めよ!絶対的な階級社会の上位者を!イヤーッ!」彼は一定の高度まで到達すると、空中を走るようにしながら極薄スリケンを何枚も投擲!薄い分威力は小さいが生成時間は短い! 17 #S57Ninja

2015-07-29 17:56:09
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

「ヌゥーッ」ニンジャスレイヤーは飛来する数多の極薄スリケンを回避。だが、「グワーッ!」回避先にも極薄スリケンが飛来する。個々の威力は微々たる物だが、数十枚も直撃すれば通常のスリケン程の威力である。ニンジャスレイヤーは回避を捨て、防御に出た。「ヌゥーッ!」 18 #S57Ninja

2015-07-29 17:56:39
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」エスカリエは砕けた拳をも使って極薄スリケンを連続生成、続けて連続投擲。絶対的な自信と傲りが生み出す疲れ知らずのカラテである。今やニンジャスレイヤーは傘を差さずに豪雨で立ち往生するサラリマンの如し! 19 #S57Ninja

2015-07-29 17:56:59
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

「いいザマだ!いつまでその防御が保つのか見ておいてやろう!イヤーッ!」極薄スリケンの豪雨が、防御の上からでもニンジャスレイヤーを苛む。「ヌゥーッ」極薄スリケンは直撃の瞬間、その薄さ故に割れ散る。その破片も彼を苛むのだ。彼を守るブレーサーは傷だらけである。 20 #S57Ninja

2015-07-29 17:57:17
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

その様を見ながらエスカリエは思考を働かせていた。(思ったよりも防御が硬い。救援要請をすべきか?)当然、思考の間にもスリケン生成と投擲の手は休めない。(いや……救援要請など屈辱の極みだ。私は実質グランドマスターなのだぞ!アデプトやマスターに救援要請など!) 21 #S57Ninja

2015-07-29 17:57:41
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

「下劣!イヤーッ!胡乱!イヤーッ!下等!イヤーッ!」投擲、投擲、投擲!極薄スリケンの雨霰!「ヌゥーッ、グワーッ!」ニンジャスレイヤーのブレーサーが限界の悲鳴をあげながら砕けた。死神の腕を守る物は無し。装束を極薄スリケンが貫き、切り、彼の肌を傷つけていく。 22 #S57Ninja

2015-07-29 17:57:57
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

「これが!グランドマスターになるべきニンジャのイクサよ!」エスカリエは豪語し、更にスリケン生成時間と投擲速度を早めた。彼の目に写るニンジャスレイヤーは、腕をクロス字に組んだ防御姿勢のまま、動かない。その顔はエスカリエからは見えぬ。23 #S57Ninja

2015-07-29 17:58:27
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

防御姿勢の下で苦悶するニンジャスレイヤーの顔を思い浮かべながら、エスカリエはスリケン投擲を続けていた。(……何だ?何かおかしい。唸り声が、聞こえぬ)然り。ニンジャスレイヤーは無言だ。スリケンによるダメージを訴える声も無し。無言。エスカリエは奇妙に思った。 24 #S57Ninja

2015-07-29 17:58:50