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「ヒストリー・リピーツ・ヒムセルフ」#2

最終セクションな。
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ジュセー:サブ @Shiroboshi3

……死神は僅かばかりに顔を上げた。その片目は大きく見開いており、瞳はセンコの光めいて縮小している。「何だ……何だ、それは!」エスカリエは動揺した。何か得体の知れない恐怖が彼の背筋をなぞっている。彼の中に宿るソウルが身震いした。死神の瞳孔に。恐るべき瞳孔に。25 #S57Ninja

2015-07-29 17:59:11
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

死神の大きく見開かれた目に、エスカリエは恐怖を覚えた。一瞬、スリケンを投げる手が止まる。だが、「虚仮威し……虚仮威しだ!イヤーッ!」彼は己を鼓舞し、スリケンを投げた。投擲地点には何も無い。「な……」彼は投擲地点から糸引く赤の閃光を驚愕の目で見やった。 26 #S57Ninja

2015-07-29 18:00:01
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

赤の閃光は、死神のセンコめいた縮小の瞳から糸引いている。死神は、もうエスカリエの近くまで迫ってきている……!「無、無駄な足掻き!イヤーッ!」極薄スリケンを投擲、投擲、投擲!だが、死神に当たらぬ。軌道が読めぬ。ハヤイ過ぎる! 27 #S57Ninja

2015-07-29 18:00:28
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

「馬鹿な馬鹿な!」エスカリエは完全に動揺しきっている。(救援は……クソめ!この際、呼ぶしかない!今だけは誇りを捨て命)「イヤーッ!」「グワーッ!?」ニンジャスレイヤーの放ったスリケンがエスカリエのIRC端末を腕ごと破壊!「イ、イヤーッ!」エスカリエ跳躍! 28 #S57Ninja

2015-07-29 18:00:50
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

エスカリエはスゴイアガル・ジツによって薄く脆弱な足場を作り出し、それらを踏み壊しながら、より高く跳躍した。「ニンジャスレイヤー=サン!貴様は私の栄光の道への礎となるのだ!より高みへと至るための!グランドマスター!」極薄スリケン投擲。死神は僅かに被弾した。 29 #S57Ninja

2015-07-29 18:01:20
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

だが死神は怯まぬ。決断的な目で頭上のエスカリエを睨んだ。そして、「イヤーッ!」「ヌゥッ!?」何らかの腕のムーヴをエスカリエは見逃さない。彼は咄嗟に防御した。予測はできても回避は出来ぬ。それがこの死神の恐るべきワザマエ。「……なんだ?」だが何も起こらぬ。 30 #S57Ninja

2015-07-29 18:01:45
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

(フェイクか!)エスカリエはそう判断を下した。スゴイアガル・ジツによる脆弱な足場を近くに作ると、そちらに移動した。移動するはずだった。「ア?」出来ぬ。動けぬ。何かに足を引っ張られている……。「何……」彼は己の足を見た。その足には、フックロープ。「何!」 31 #S57Ninja

2015-07-29 18:02:06
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

「イヤーッ!」死神の恐るべきニンジャ膂力がフックロープを手繰り寄せる。だがエスカリエも油断ならぬカラテの持ち主。「イヤーッ!」彼はその場で小さく跳躍。足場を生成。踏み壊し小さく跳躍。足場を生成。「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!!」「イヤーッ!!」 32 #S57Ninja

2015-07-29 18:02:29
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

ニンジャ同士の激しい攻防。両者一歩も譲らぬ。カラテ。 33 #S57Ninja

2015-07-29 18:02:46
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

二人のニンジャの攻防は、永久に続くかと思われた。だが。「グワーッ!?」攻防が、揺らいだ。何が?エスカリエは大きく姿勢を崩されながら、状況判断を試みた。彼の目に映るは、凄まじい勢いと共に飛びくる死神の姿が。何が?「馬鹿なっ、馬鹿なっ!」彼は喚く他なかった。 34 #S57Ninja

2015-07-29 18:03:01
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

何が起こったのか?読者の中にニンジャ動体視力の持ち主がおれば捉えられたかもしれない。ニンジャスレイヤーはエスカリエとの攻防に、拉致があかぬと判断。そしてエスカリエがフックロープを引っ張る瞬間に合わせ、フックロープの巻き上げ機構を使用したのだ! 35 #S57Ninja

2015-07-29 18:03:25
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

急速接近するニンジャスレイヤー。エスカリエはフックロープの巻き上げ機構など知らぬ!ただただ喚くのみ!「馬鹿なっ、こんな……イヤーッ!」通常のスリケンをフックロープに投擲。だが傷一つ付かぬ!「ナンデ!?」このフックロープは只のフックロープではない。 36 #S57Ninja

2015-07-29 18:03:41
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

「イ、イヤーッ!イヤーッ!」何度も投擲するが、やはり傷一つ付かぬ。そう、このフックロープはドウグ社製のフックロープ。ニンジャのイクサに耐えうる頑強なるフックロープ!「ナンデ!?フックロープ!?理解不能!」エスカリエが喚く間に、死神は直ぐそこへ! 37 #S57Ninja

2015-07-29 18:04:07
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

「く、来るな来るな!この高みは私だけのものだ!私の栄光の道を、階段を顕す崇高なる高」「Wasshoi !」ニンジャスレイヤーはフックロープから手を離し、エスカリエに弾丸めいて突撃!「イヤーッ!」「み……グワーッ!」死神の拳! 38 #S57Ninja

2015-07-29 18:04:24
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

直撃。その衝撃を殺さず、ニンジャスレイヤーはエスカリエの背後へと回り込んだ。そして彼をガッチリと羽交い締め!「何を……何をする!私に触れるな!高みを征く存在ぞ!」「オヌシのその高みとやらを今の内に目に焼き付けておくがよい、エスカリエ=サン」 39 #S57Ninja

2015-07-29 18:04:47
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

「直ぐにその高みは消え失せ、オヌシは地に堕ちる。それだけでは済まぬ。地より下へ、ジゴクへオヌシは逝くのだ」「何……」「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはエスカリエを羽交い締めにしたまま勢い良く降下。その中で降下態勢を変えた。頭を下に。天地逆転! 40 #S57Ninja

2015-07-29 18:05:12
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

「何をするーっ!!ヤメロー!ヤメロー!」頭部を下に勢い良く降下。エスカリエは必死でもがくが、ニンジャスレイヤーの羽交い締めは解けぬ。地が迫る。彼自身が昇った高みが、そのまま彼を襲う事になる。高度が高ければ高いほど、この恐るべきジュー・ジツの威力は増す! 41 #S57Ninja

2015-07-29 18:05:30
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

賢明なる読者諸氏にはお分かりだろう。この恐るべきジュー・ジツの正体を。テキサス独立戦争で暗躍したニンジャが編み出したとされる暗殺技を。アラバマの大地に敵兵の脳天を次々に打ち付け皆殺しにしたと言われる暗殺技を。ジュー・ジツの禁じ手を! 42 #S57Ninja

2015-07-29 18:06:17
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

「イヤーッ!」「グワッ……」……静寂。 ニンジャスレイヤーは飛び離れ。ザンシン。エスカリエは地に頭部を埋め。静止。 ……「グワーッ!!」堰き止められていたダムが決壊するかの如く、静寂は切り裂かれた。地に蜘蛛の巣状の亀裂が走り、直後陥没! アラバマオトシ!43 #S57Ninja

2015-07-29 18:06:36
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

「グワーッ!」エスカリエは落下時の態勢のまま穿たれた大穴に落下!もがき態勢を整えようと思考したが不可能!なんたるジュー・ジツの極め手の繰り出す高高度からのアラバマオトシが生み出した強烈なる降下速度による垂直落下か!「グワーッ!」下の階層の地も突き破る! 44 #S57Ninja

2015-07-29 18:07:03
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

「グワーッ!」その下の階層も!「グワーッ!!」その下の下の階層も!「グワーッ!!!」その下の下の下「グワーッ!!!!」その下「グワーッ!!!!!!」凄まじい降下速度共に、エスカリエはアンダーガイオンの下層へと、最下層へと堕ちてゆく……! 45 #S57Ninja

2015-07-29 18:07:26
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

「グワーッ!馬鹿な!っ!このような……わ、私は!エスカリエなのだぞ!グランドマスターになるべき男なのだぞぉーっ!グワーッ!!」声が枯れ果てるかと思える程に彼は叫んだ。叫びは落下の勢いが生み出す風圧に虚しく掻き消されていく。 46 #S57Ninja

2015-07-29 18:07:47
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

堕ちていく。地が割れ、割れ。垂直落下する彼の身体はとうとう最下層部へと到達しかかっていた。既に彼のニンジャ耐久力は限界を迎えようとしている……。 47 #S57Ninja

2015-07-29 18:08:05
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

……これは。「これは、夢なのではないのか」朧げになってゆく意識下で、エスカリエはそう思った。悪夢だ。何故なら、自分が正当に評価されていないからだ。いつまでもザイバツに認められず、マスターにすらなれないからだ。つまり夢。このような夢などは。悪夢とは。もう。 48 #S57Ninja

2015-07-29 18:08:21
ジュセー:サブ @Shiroboshi3

「サヨナラ!」最下層部へ至る地を貫いたその時、エスカリエは爆発四散した。家柄と性分から来る絶対的な自信と向上心を持ち、誰も寄り付けない程の高みを目指した一人の男の生は、暗く冷たい最下層部でひっそりと幕を閉じた。誰一人、その死を見届ける者はいなかった。 49 #S57Ninja

2015-07-29 18:08:38