お題シリーズ:刀剣乱舞(女審神者)
下心のない純粋な好意……、最初はそれに戸惑ったものだ。軽く二十は歳の離れた男、ましてこのご面相とくれば、なぜそうも熱を上げるのかと思うのは俺だけではないだろう。 当然とも思える問いを投げかければ、暫く考えた後に、ぽつりと返ってきた。 「温かかったんだ……とっても……」
2017-02-20 00:52:54「今のこの、「俺」は「あんた」にとって何者でもないよな」 気付かれてしまったと思うと同時に、純朴そうな見た目の彼が浮かべるものに、気付いてしまった。 そこにあるのは、常の温もりではなく――恋情の熱。 「俺は、あんたと、家族になりたい」
2017-02-20 00:53:00寒上は「美」と「根」と「笑」を全部使って文章を作りましょう。 shindanmaker.com/128889 ※20170206分
2017-02-20 00:57:48また突拍子もない事言い出しやがったこの嫁は!――眉根を寄せて怖い顔して、そんなこときっと思ってる。 でもちゃんと、話は聞いてくれるんだ。 顔の美醜を気にしていられないような状況で、このひとと出逢えて良かった。 ――そっと思い出し、笑った。
2017-02-20 00:58:20「槍なの?」 「槍だ」 こういう時、男士のひとりというより、根っからの槍――槍の化身だと感じる。 あんたが槍だったなら……、美術品じゃないけど、一箇所だけきれいな飾りがある短槍なのかなって思うんだよな。 そう言って、「彼」は笑った。
2017-02-20 00:58:51寒上は「人」と「恥」と「湿」を全部使って文章を作りましょう。 shindanmaker.com/128889 ※20170207分
2017-02-27 01:24:39「何か、照れるっていうか、恥ずかしいっていうか」 湿った髪を手に取ると口早に言い出した。 「人に乾かしてもらうって、ほら、髪切りに行った時とかくらいだし」 うにゃうにゃ何か言っているが、構わず乾かしにかかる。 「まぁ、細かい事は良いじゃねぇか」
2017-02-27 01:24:47「なに湿気た顔してんの」 どこに――人界に出しても、恥ずかしくないくらいなんだから胸張りな! 元気よくかかる声、その言葉の違和感の源流に槍の化身は気付いてしまった。 元々の居場所こそが異界でもあるかのような言い回しに――口にした当人は気づいてもいないだろうが。
2017-02-27 01:24:54寒上は「憂」と「頭」と「陰」を全部使って文章を作りましょう。 shindanmaker.com/128889 ※20170208分
2017-02-27 01:25:26憂鬱な顔をしているのを見られたくなくて、ぎゅっと抱きついた。 こうすれば陰になって見えないよね、そう思っていたのに、なだめるように頭をなでられた。 「何か心配事があるなら言えよ」 腰にクる声で囁かれて……黙ってなんか、いられなかった。
2017-02-27 01:25:51憂い顔で考え込んで、どうしたのかと心配して訊いてみれば。 「あ、いや……さ。今日の晩飯、カレーと唐揚げどっちなんだろうな?」 真剣な顔でのあまりにもしょうがない返事に、脱力する。 そして――頭が回らなかった。そう答えた陰で、本当は何を思っていたか、なんて……。
2017-02-27 01:26:04寒上は「香」と「唇」と「泣」を全部使って文章を作りましょう。 shindanmaker.com/128889 ※20170209分
2017-02-27 01:26:39脂粉の香とは縁遠い、健康的な色の肌に唇をつける。ひとしきり愛でた後にふと見ると、濡れた琥珀に出逢う。 「おう、どうした」 泣いているのか、問うと、頬を撫でる指が小さな手に捉まった。 「あのね……幸せすぎて、夢だったらどうしようって、思ったんだ……」
2017-02-27 01:26:52食欲を刺激する香りが食卓にただよい、付喪の青年は感涙にむせぶ。 泣いて喜ぶ御手杵の様子に、まおは唇をほころばせる。その様子がどこかの聖騎士みたいだと、ふと思った。 (何だっけ……昔読んだ本に、こんな感じのシーンがあったよね……)
2017-02-27 01:27:09寒上は「入」と「爆」と「息」を全部使って文章を作りましょう。 shindanmaker.com/128889 ※20170210分
2017-02-27 02:27:03ゆっくりと育ち鮮やかに色付いた愛おしさが、吐息に触れて熟れ落ちる。 とろり“爆ぜ”た果肉は、蜜入りの林檎のように甘く瑞々しく、“食べ頃”を迎えていたのだと、今更のように思い知った。 「思い直すなら今のうちだ」 「必要ないね」 「泣いて嫌だと言っても放さんからな」
2017-02-27 02:27:22「爆薬とかあれば、あの侵入者も一気に片付くんだけど」 ――史流の“慣性”が、「未来」の存在の威力を削ぐのは知っていても、つい思う。 ふ 息を吐いた。今は頭を冷やして打開策を考えなくてはね? 「さて……ねぇぎねさん、これ、どうしよっか」
2017-02-27 02:27:28寒上は「獣」と「傷」と「子」を全部使って文章を作りましょう。 shindanmaker.com/128889 ※20170211分
2017-02-27 02:28:00幾つもある傷跡に口付け、唇を滑らせる妻は既に子供ではない。 「なんだ、誘ってるつもりか?」 「うん!」 意図を察して声をかけると、すりすりとすり寄ってくるが、名から連想する優美な獣のようになるには……、まだ、もうしばらくかかるようだ。
2017-02-27 02:28:11たぬきの傷によく似た模様を持つ子猫が、ころころぽてぽて跳ね回っている。 一見なんという事もない猫だが、母猫共々、野の獣とは違った気配を時折放つ事がある。そう、大将に告げるとあっさり流された。 「良いよ別に」 ――〈里〉が弾いてないなら、害のないモノなんだろうし。
2017-02-27 02:28:17寒上は「濁」と「肌」と「無」を全部使って文章を作りましょう。 shindanmaker.com/128889 ※20170212分
2017-02-27 02:28:46「ここは、違うよな」 念を押すと。 「にぅ……」 言葉を濁しながら、渋々と上を着る。透けているので肌は見えるが、見え放題よりはまだましだ。本当は、露出の全く無い服を着てもらいたいところではあるのだ。 娘時代とは違うのだから――今は、もう。
2017-02-27 02:29:14背後からは追ってくるモノ。 眼前には言葉を無くすほどの急傾斜。 どちらにしても鳥肌ものの光景だが、生き延びる目は進む先にこそあり。 「行くぞ」 かけた声こそ格好良いものの、上がるのは、濁点混じりの悲鳴めいた雄叫びだった。
2017-02-27 02:29:22寒上は「飲」と「放」と「子」を全部使って文章を作りましょう。 shindanmaker.com/128889 ※20170213分
2017-02-27 03:15:57「おっそろしく頑丈な肝臓を子孫にくれた、ご先祖様に乾杯!」 結構な量を飲んだはずだが、微塵も面には出ていない妻が言う。 何かにつけては飲み放題同然の場に出て行きたがるのは、そういうことかと――今更ながらに、納得した。
2017-02-27 03:16:17