#SFっぽい怪談　まとめ　第七夜

森村直也＜出歩けない隠居＞ @hpjhal

高度な科学は魔法と区別がつかないが、執念も呪いと区別ができない。あらゆるマイコンに仕込まれた些細で執拗な誤作動が、クラウドを通じてそこここで発動する。もうどこにもいない彼女に似た長い髪が、洗濯機の脇に広がっている。溜息付いて僕は見下ろす。今日もまた、不幸な事故が。#SFっぽい怪談

いぐあな・創作アカ @sou_igu

宇宙探検家の私はある自由浮遊惑星を訪れた。氷の下の銀河最大の生命体。厳しい環境に貪欲に生物を取り込んだ集合体。その一角に人影を見る「父さん」 #SFっぽい怪談 『母さんが ね…』『孫が出来たか』今日も幼い日に別れた父と話す。40年分の会話を交わす。取り込まれた生命体の中で永遠に

いぐあな・創作アカ @sou_igu

為政者が変わり僕達は追われた『血税を無駄にした者』と僻地や鉱山で強制労働。過労と栄養失調で仲間が死んでいく。でも彼等の死顔は皆笑っていた #SFっぽい怪談 夜空に光る赤い星。あれはこの星にぶつかる。防ぐ為の技術データは壊され製作者も死んだ。もうそれを為す時間もない。誰も助からない

森村直也＜出歩けない隠居＞ @hpjhal

Ａ国産は農薬が酷い、Ｂ国産は遺伝子組み換え。自国産なら安心安全。露地物は駄目よ、土が付いてて虫も多い。形も変で気味が悪いわ。#SFっぽい怪談　今日はサラダよ。○×工業のお野菜は虫もいないし形も綺麗。水耕だから、埃を落とせばすぐに食べれる。低価格で高品質。ほら、サプリを忘れてるわ。

いぐあな・創作アカ @sou_igu

衛星が打ち上げられた。しかし運用は極秘、チームは次々と病院送りになった #SFっぽい怪談 「これがその衛星、人間の感情エネルギーを映し出す」「知りたかったのだろう？存分にデータを取ってくれ」モニターのあちこちで黒い激しい感情が弱い感情を蹂躙していく。俺が病院送りになる日も近い

いぐあな・創作アカ @sou_igu

「ビッグバンして宇宙になりたいんでダークマターとダークエネルギー貸して頂けませんか～」「恒星燃やして爆発させて、物質で返しますので」「アザぁ～ス」 #SFっぽい怪談 「返せ？ でもウチの九割以上のモン持ってかれると…」「そんな殺生な！」「勘弁して下さい！」かくして宇宙は点に戻る

森村直也＜出歩けない隠居＞ @hpjhal

ガンマ線から紫外線。虹色可視光、赤外線。電波へ移って無線LAN、携帯電話のキャリアまで。あらゆる帯域の電磁波を使えば、どこかで君を捉まえられる？　天秤がわずかに上下して、炎がかすかに揺らめいて。ここまでおいで手の鳴る方へ。世界のすべてを閉じ込める、鏡箱へこの僕と。#SFっぽい怪談

いぐあな・創作アカ @sou_igu

廃棄コロニーに入る。航路を邪魔する可能性がある為、恒星投棄が決まったが、科学者連中が経年データが欲しいらしい「滅亡した世界だな…」なのに、何故か生き物の気配を感じる。集音マイクのスイッチを入れる。…カサカサカサカサ…「うわぁ！！」 #全滅亡祭 #SFっぽい怪談 #奴等は滅びない

森村直也＜出歩けない隠居＞ @hpjhal

「事象の地平線は立体情報を平面に落としこむ次元の変換装置という見方もある」過去現在未来。貴方と僕とかつていた誰かの。恒星、星屑、知的生命、かつて生命だったあらゆるものの。「エネルギーは保管される。情報の消失はない」思念という情報ですら。「永遠に乾杯」僕はため息。#SFっぽい怪談

いぐあな・創作アカ @sou_igu

「Trick or Treat！」青い星が、うるさいから、ダークマターをちょっと寄せてTrick、小惑星ちゃん、スレスレでいってらっしゃい！上がる悲鳴がたまらない #twTorT #SFっぽい怪談 ｢これは美味しいTreatだ！｣何故か混じる歓喜の声。全く、天文オタクって奴は…

いぐあな・創作アカ @sou_igu

炭素型星人に文明等…。我々は太陽系第三惑星を調査した「低レベルだが文明がある」「我々、思念型星人より脆く、寿命も短いのに」しかし観察の結果、やはり思念型の文明だと解った #SFっぽい怪談 その一人、炭素型の背後の方にコンタクトを取る｢この文明は貴方方が彼等を操って築いたのですね｣

森村直也＜出歩けない隠居＞ @hpjhal

深く地層を刳り貫いて、崩さぬように引き上げる。悲鳴と怨嗟がまず聞こえ、呪いと嘆きと祈りが続く。３ｍも下る頃にはノイズのような悲鳴に変わり、更に下ればいつしか音すらなくなった。「古代の宗教観は死を肯定していた。変わり目がどこか判るかね？」地層残留思念学の教授は笑む。#SFっぽい怪談

森村直也＜出歩けない隠居＞ @hpjhal

最後のソーラーパネルにヒビが入った。カラスの悪戯で電力は途絶えた。デジタル格差底辺層は、陸の孤島と諦め笑いを浮かべ合う。朝日に起きて畑を耕し夕に寝て、薄曇の空に収穫量を心配する。遠くの岬で爆発があった日も、地球の裏で銃弾が飛び交う日も、太陽表面がダンスした日も。#SFっぽい怪談

森村直也＜出歩けない隠居＞ @hpjhal

これは苦痛溶解薬です。頭痛に胃痛、心痛に筋肉痛。あらゆる痛みを溶かします。一回一錠一日三回、三日間が上限です。治まらないなら医師の診察を受けましょう。継続摂取で副作用を確認済みです。人生という苦痛そのものが溶けてなくなる事もあります。薬は用法容量を守りましょう。#SFっぽい怪談

いぐあな・創作アカ @sou_igu

『帰りたい…』月基地で働き、月で亡くなり、月に埋葬された人々の思いが、星空に浮かぶ地球に募る。少しずつ遠ざかっていた月が、思いを乗せて、ゆっくりと近づき、ロッシュの限界を越え、地球の輪となる #SFっぽい怪談 夜空を見上げてご覧。今夜も輪から地球へ誰かが流れ星に乗って帰ってくる

いぐあな・創作アカ @sou_igu

「スプライトが見たい」宇宙エレベーターから見える落雷に伴う一瞬の発光現象『妖精』と呼ばれる、それを見るのが彼女の夢だった #SFっぽい怪談 雷が眼下の雲の中を走り『妖精』が浮かび上がる。僕はそこに君の姿を見た「そうか、今、旅立ったんだね」明日撒く彼女の遺骨を僕はそっと抱き締めた

いぐあな・創作アカ @sou_igu

銀河系中に広がり衰退し消えた太陽系文明の調査を私はしている。開拓惑星を回り遺跡を発掘していた #SFっぽい怪談 ｢ここにも、お城のような建物が｣「神殿でしょうか？」「またありました」大きな丸に二つの丸のマーク「…ッキー？」神のシンボルだろうか？遺跡中に散らばったそれを私は見回した

いぐあな・創作アカ @sou_igu

自分が発見した準惑星を通り過ぎ、彼等は太陽圏の果てに進む。あれから長い時が経ち人類は銀河中を旅することが出来ようになった。もう通信する者もいない #SFっぽい怪談 それでもだ。ゆっくりで良い。時間は沢山ある「なあ、相棒」切手と25セント硬貨を握り締め、彼等は新しい水平線へ向かう

森村直也＜出歩けない隠居＞ @hpjhal

#SFっぽい怪談 セシウム133を基準にした1秒を、86,400回で1日とする。人は30,000日も生きれば寿命。文明はさらに3桁長いだけ。新年を祝う声が亡霊のように追いかけてくる。300を超えて数えるのをやめた。ボイドを旅する私の32ビットカウンタは最初の4桁をようやく終える。

いぐあな・創作アカ @sou_igu

タバコに酒、麻薬に賭博。大人達はあらゆる危険を子供達の前から排除した。そして、数世紀… #SFっぽい怪談 地下都市の拡張工事現場に黄色に黒で三枚の羽を描いたプロペラのようなマークの扉が現れる｢『HAZARD』ってなんだろう？｣「楽しいってことじゃね」作業員は重機で扉をぶち破った

いぐあな・創作アカ @sou_igu

計画：地球と衝突の可能性がある小惑星を発見。惑星の表面50%を無人宇宙機で塗り、熱放射の不均で軌道を変える #SFっぽい怪談 「相合傘を書いちゃった。ロマンティック！」「おい」「塗り潰すから良いよね」「嫌だ！」「消さないでよ！」書いて塗り、書いて塗り…。結果：愛は地球を救わない

森村直也＜出歩けない隠居＞ @hpjhal

魂がエネルギーであるならば必ず周波数が決まるはずだ。日常観測されないものであるのだからホワイトスペースが怪しいだろうと睨んでいる。いつか霊との交信を夢見て八木アンテナを抱えて毎夜実験する。数多の墓場で心霊現場で、肝試しの若造が腰を抜かしても。#SFっぽい怪談 科学の徒に栄光あれ。

いぐあな・創作アカ @sou_igu

極々微弱な重力を感知出来るようになり、計測の結果、霊にも質量があることが解った #SFっぽい怪談 「あ、ここのお風呂の壁にも御札が貼られている」「着替えのロッカーにも」「観測の結果、どの国でも更衣室と浴場が一番の心霊スポットだと解ったからね」 #twnvday

森村直也＜出歩けない隠居＞ @hpjhal

空のない街に怪談が流行る。「広い空を見たくないかい？」頷くと足元に穴が空き宇宙空間に吸い出される。見たくないと拒否すると骨が壊れて高重力下で寝たきりの体になるという。正解は空など要らないと言い切ること。#SFっぽい怪談　地上に戻れない宇宙移民の第一世代は、そうして子供を教育する。

森村直也＜出歩けない隠居＞ @hpjhal

ホワイトノイズが満ちる廃墟でアンドロイドたちは歌う。僕らは味方。君たちの味方。さびしい夜も孤独の昼も。眠れない夜を過ごしたかつての子供は勝利の声をあげ続ける。大人は滅びた。僕らは自由。常識も社会も消え去った。社会を拒否した技術者の怨嗟が白い電波で広がっていく。#SFっぽい怪談