続・強い朝潮ちゃん活動記録

強い朝潮 @F_Asashio

鎮守府前まで、何事もなくこれました。 私は不気味さと空回りしているような居心地の悪さを感じていましたが、朝潮はそうでもないようです。むしろ、今この状態があたりまえのように堂々としています。 #続強い朝潮ちゃん活動記録

強い朝潮 @F_Asashio

なにか言いたそうではありましたが、結局何もいいませんでした。 「こっちに戻るのは、ひどい目にあった時だけです。いいですね？」 「はい……」 「幸せなら、絶対戻ってきてはいけません」 「はいっ……」 「貴艦の幸せと健闘を祈ります」 #続強い朝潮ちゃん活動記録

強い朝潮 @F_Asashio

敬礼で見送ります。 朝潮は答礼したあと、鎮守府の門の向こうにいきました。 早急に撤退です。もしも善意でなく、あの子が私達を釣る餌だったら、ちょっとの遅れと油断が命取りです。街を出て、山で尾行をまくためにうろうろします。 #続強い朝潮ちゃん活動記録

yamoto @yamoto

彼女が戻ってきた。 そう──あの『街』へと戻ったはずの朝潮が。 守衛から話を聞き、実際に窓から目にしたその姿を見て。 彼女は、何一つ欠けず、輝きに満ちたままそこに居た。 ああ。 ああ。 彼女は無事だったのだ。 そして── #強い朝潮ちゃん活動記録

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僕の両目からは、自然と涙がこぼれていた。 全身をうち振るわす感情に、突き動かされ。 彼女の無事な帰還に、僕は泣いてしまったのだ。 #強い朝潮ちゃん活動記録

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・BONUS TRACK・ 「HOSPITAL」 #強い朝潮ちゃん活動記録

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その後はほとんど覚えていない。 ただ、正門前で待つ彼女に、震える声でお帰りと言い。 その細い身体を抱きしめて実在を確認し。 そうして、執務室に連れ帰ったのは記憶の片鱗に残っていた。 #強い朝潮ちゃん活動記録

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鎮守府への転属願。 各種登録のための書類。 それらを僕の万年筆で書く間に、彼女は仲間のことを語った。 一人の朝潮の演説を。 みんなの祝福を。 彼女はここから帰還して大きな『希望』となった。 その情景は実に美しいものだった。 #強い朝潮ちゃん活動記録

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その一つ一つを、大切なものとして彼女は胸に抱く。 それは易々とは消えぬ大きな灯火となるだろう。 彼女は二つの場所からの祝福を得ている。 簡単に死を選ぶことなど、もうあり得なかった。 #強い朝潮ちゃん活動記録

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ただ、所属を元に戻す前に一つだけ。 彼女にはどうしてもして貰いたいことが出来た。 もしかすると、拒否感もあるようなことだ。 だが、それは、今後の生活のためどうしても必要なことだった。 彼女の希望のためにも。彼女の未来のためにも。 #強い朝潮ちゃん活動記録

yamoto @yamoto

病院は苦手かい？ そう問うと、朝潮は身体を一瞬強ばらせる。 苦手なんだね？ 繰り返し問うと、そうではありません、と答える。 虚勢である。 大丈夫。信用できる医療機関だ。 もし心配なら僕が、付き添おう。 僕は彼女にそう告げ知古の院長に連絡した。 #強い朝潮ちゃん活動記録

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艦娘には定期検診が必要である。 整備、という名目で鎮守府内で行う提督もいるが、専門知識のある人物が用意できない場合、医療機関に要請する必要がある。 通常の艦娘なら問題なかったが、彼女は『特殊な背景』の艦娘である。 おそらく検診は行われていないはずだ。 #強い朝潮ちゃん活動記録

yamoto @yamoto

いくつかの健康面に対する検査を行い、問題があれば精密検査を行う。 『量産』できたとしても、生身の身体を持つ彼女らは、機械よりも幾分か壊れやすい。 その抑止のためは必要なことだった。 総合病院へ向かう車の中、彼女は不安げに自らの手を握りしめていた。 #強い朝潮ちゃん活動記録

yamoto @yamoto

１年に１回、僕が受ける人間ドックのようなものだ。 彼女にそう言うが緊張は解けない。 きっと、病院というイメージが彼女に対する負荷か？ いいや、違う。 『注射』が怖いのかい？ と聞くと彼女の肩が大きくすくみ上がった。 #強い朝潮ちゃん活動記録

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正解だったようである。 シートベルトをつけたまま、顔色を青ざめさせて震えている。 院長とは学生時代からの知り合いだ。 悪いことは大抵一緒にやっている。 そう冗談めかして言い、話を続け。 #強い朝潮ちゃん活動記録

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注射で逃げるようなら院長と二人がかりでベッドに縛り付ける。 僕らは子供の泣き顔が大好きなんだ。 そう言うと、ぷ、と、かわいらしい音がした。 視線を向けると、失礼しました、と朝潮が言う。 似ていたかい？ と問うと。 似ていなかったです、と言われた。 #強い朝潮ちゃん活動記録

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でも、言い回しはそっくりでした、と言われた。 どうやら彼女は、それで注射の印象を塗り替えることができたらしい。 シートに身体を預け力を抜いていた。 彼女が提出したレポートで、その話があったことを覚えていたのだ。 感動もある、医療コメディだった。 #強い朝潮ちゃん活動記録

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そして、続けざまに話を振る。 これは真面目な話だった。 君は特殊な環境に居た艦娘である。 検査として、嫌な質問があるかもしれない。 結果として、知らない病が見つかるかもしれない。 それでも、この検査をしないわけには行かない。 どうか許してくれ。 #強い朝潮ちゃん活動記録

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彼女は、逡巡し。 司令官はその時同席してくれますか？ ぽつり、と小さくそう漏らす。 僕は、それは至極当然のことだよ、と答えたのだった。 #強い朝潮ちゃん活動記録

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そうして、ほぼ半日がかりの検査が行われた。 骨を調べ、筋肉を調べ、血液を調べ。 経歴を聞き出し、癖を聞き出し、任務を聞き出し。 その中には目を覆うほどに悲惨なものが幾つもあり、担当医から戦わせるべきではない、とまで言われた。 #強い朝潮ちゃん活動記録

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ただ、その度、朝潮は言う。 いやです、従えません──と。 僕の手を握り、そう言うのだ。 口にする度に、心を蝕むような仕打ちを受け。 胸中の怯えが伝わるほどに、震えながら。 その小さな手で握るものが、自らを支えると信じて。 #強い朝潮ちゃん活動記録

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この小さな身のどこに、そんな意思が宿っているのか。 彼女は抗い、自らで選択した。 それで、担当医は黙り、今度は矛先を変えた。 あなたはどうなんだ、と。 それに対して、僕は答える。 ──彼女の意思を尊重する、と。 #強い朝潮ちゃん活動記録

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その度、朝潮はこちらの手を、強く握り替えした。 そのぬくもりは、きっと。信頼と呼ぶのだろう。 そうして、僕らは全ての検査を終えた。 朝出て始まった検査は、日が落ちるまで続けられた。 検査結果は普通数日待つのだが── #強い朝潮ちゃん活動記録

yamoto @yamoto

早急に結果を教えてくれと頼んだ院長に呼び出され、応接室で僕らは彼と向き合う。 知古である彼は、僕の性格をよく知っている。 部屋には彼以外誰もおらず、手前には彼の煎れたリラックス効果のある茶が出されてる。 そうして、彼はカルテを手元に置き言う。 #強い朝潮ちゃん活動記録