【矢矧と鎮守府の怪談】
- Sakawalove_YHG
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激しい砲撃。だけどその狙いはつかない。当然ね、どんなに優れた艤装も艦娘との接続が断絶すれば、ただの撃鉄引きっぱなしの銃と同じ。#矢矧と鎮守府の怪談
2015-08-09 12:53:41長門の装甲を一発、暴れる艤装を一発、それでカタが付いた。艤装は爆発し、長門本体は無力化されて、私の腕の中ではらはらと涙を流すばかりだった。#矢矧と鎮守府の怪談
2015-08-09 12:54:13「長門……貴方ではない長門が言っていたの。本当に勝ちたいのなら勝負をしてはいけない。確実に勝てる状況を作った時点で最早それは勝負にならない、とね」 まあ、そっちの長門もどこかの兵法の本読みあさってにわかに身につけた名言っぽいし、実践も出来てなかったけれど。#矢矧と鎮守府の怪談
2015-08-09 12:54:53「貴方は平和を望んでいただけって、よく知ってるわ」 「ああ……」 「だけど皆が平和を望むから、戦いは終わらないの……長門、いえ――戦艦水鬼」 「私は……長門だ……戦艦水鬼……? 違う……!」 #矢矧と鎮守府の怪談
2015-08-09 12:55:36「貴方の鎮守府、瓦礫の山よ。提督は、とっくに白骨化していたわ」 「……ちがう! 提督は……わたしと、もう一度やり直そう、と……沈むなら……ここを新たな鎮守府に、して……反撃の礎に……あ、あ、ああ……」 #矢矧と鎮守府の怪談
2015-08-09 12:56:02「陸奥……なぜ邪魔をする……私の夢を……」 「貴方はすでに夢を見ていたから」 「私の正義を……潰さないでくれ……」 「貴方の言う正義は、相手への無知を正当化する言葉よ。正しさなんてどこにもない」 #矢矧と鎮守府の怪談
2015-08-09 12:56:57「ならば陸奥……貴様は正しいの、か……!」 「正しくなんか無いわ」 私はそう言って戦艦水鬼の核を撃ちぬいたの。 「でも間違ってはいない」 #矢矧と鎮守府の怪談
2015-08-09 12:57:34最期、彼女は崩れる体で私の胸に顔をうずめて……。 「わかってた――わかってたんだ――わかりたく、なかった――……」 #矢矧と鎮守府の怪談
2015-08-09 12:58:09「…………」 「……………………」 「……」 「…………」 「……あ、これでお話はおしまいよ」 「えっ」 「えっちょっと、待って、いやいやいや、陸奥さん、貴方何者……」 「それじゃまた、来年のお盆にでも。バイバイ」 #矢矧と鎮守府の怪談
2015-08-09 12:59:46陸奥の話が終わったところでふっと部屋の明かりが消え、激しい爆発音が二度、窓の外からビリビリと響いてきた。砲撃かと思われたが鎮守府にはなんの被害もなく電灯もすぐ復帰した……ただ、その騒乱が終わったとき、陸奥の姿は忽然と消えていた。 #矢矧と鎮守府の怪談
2015-08-09 13:24:23程なく「ごめ~ん、寝過ごしちゃった。もう終わったの? というか今の音なに?」と陸奥がやってきて、一同話し手の陸奥が何者なのか悟ることになる。いや、はっきり言えば途中からうすうす分かっていたが、演技なのかと思っていた。そう思いたかった。 #矢矧と鎮守府の怪談
2015-08-09 13:25:24「本当に勝ちたいのなら勝負をしてはいけない……私が、沈んだ陸奥に言っていた言葉だ」 長門が若干青ざめた顔で語った。 「えっ……じゃあ」 「今話していた陸奥さんって……」 「まさか……深海の……」 「沈んだ……陸奥……さん……?」 #矢矧と鎮守府の怪談 おわり
2015-08-09 13:27:53本当に終わり?
「……というシナリオで見事にうまくいったわね! 乾杯!」 「やるな! お前ら! あんなにうまく行くとは思わなかったぞ!」 「あらあら、私は長門が途中で涙の再会じみたことしてこないか不安だったんだけど」 #矢矧と鎮守府の怪談
2015-08-09 14:27:19トリックは簡単である。私こと矢矧と木曾と陸奥(もちろん当司令部の)ではじめからグルになってこの演出を仕立てあげたのだ。怪談話を始めた当初から。#矢矧と鎮守府の怪談
2015-08-09 14:28:17木曾にシナリオを書いてもらい、それを陸奥が自分の話のように語る、私は頃合いを見て部屋の明かりをけし仕掛けた空砲をならす、陸奥は一旦外にでたあとまるでやっと今来たように振る舞う。#矢矧と鎮守府の怪談
2015-08-09 14:28:39「ちょっと不謹慎だったけど、お話が真に迫ってたから深海の陸奥さんも許してくれるわよね!」 「矢矧、お前酔ってるだろ、程々にしないと明日に響くぜ?」 「私はこの後長門に何を言われるやら……面白かったからいいけどね」#矢矧と鎮守府の怪談
2015-08-09 14:29:29「そういや聞きたいことがあるんだが、あの話って誰が考えたんだ?」 「貴方でしょ?」 「俺じゃないぞ、ていうかこういう話にこっちで勝手に決めたからそれに合わせてって手紙あったじゃないか」 「そんなの知らないわよ」 「えっ?」 「え?」 「……え?」 #矢矧と鎮守府の怪談
2015-08-09 14:30:16「長門が昔勝負がなんとか言ってたのって、同じ鎮守府だった木曾が知ってたからじゃないの?」 「だからなんでお前たちが知ってるのかと思って……」 「そういえば……私が仕掛けた空砲。一つだけだったのになんで二つ鳴ったんだろう……」 #矢矧と鎮守府の怪談
2015-08-09 14:31:01「あら、もうひとつ不思議なことがあるわよ……この手紙、私が一度あの会場から出たとき通りがかりの鈴谷から貰ったんだけど……まだ内容見てないんだけど」 「彼女会場にずっと居たわよ! 私の2つ隣で……」 「う、うわ、うわあああ! おい、これ、まさか……」 #矢矧と鎮守府の怪談
2015-08-09 14:31:34『ところで貴方たちの居るこの鎮守府……本当に地上にあるのかしら?』 #矢矧と鎮守府の怪談 本当に終わりの終わり
2015-08-09 14:32:39