First Love(前編)

横村楽器店 シリーズ5
5
前へ 1 2 ・・ 11 次へ
りえぷぅ @riem124blue

26 それから私は光子さんと並んで、食事の後片付けをするのが日課となった。 ―――――― 大倉「今日もお兄ちゃん待ってるん?」 窓の外を見つめる放課後、1人のはずの教室にまたあの声がした。 振り返ると、やっぱり。 なんなの? 当たり前のようにまた、私の前の席に座る。

2015-07-02 21:30:50
りえぷぅ @riem124blue

27 **「…暇なん…?」 大倉「まぁーなー…。」 **「部活とかもしてへんの?」 大倉「んー…これ以上モテても困るやろ?」 **「そんなん、よう自分で言えるね?」 大倉「だぁって、ほんまやもーん。」 **「でも彼女おるんやろ?こんなとこ見られたら、誤解されるよ?」

2015-07-03 19:53:17
りえぷぅ @riem124blue

28 大倉「彼女おるって、どこ情報なーん?」 **「告白されまくってるんやろ?誰に聞かんでも、みんな知っとるよ。」 大倉「告白はされるけど、彼女はいてへんよ。俺誰とも付き合ったことないもん。」 **「…うっそやね!私は騙されへんもん。」 大倉「あはは!嘘やないってぇ!」

2015-07-03 19:53:26
りえぷぅ @riem124blue

29 大倉が豪快に笑う。 あー…悔しいけど、確かにかっこいいなぁ…モテるのは…分かる。 ちょっと人見知りな私でも、あんまり抵抗を感じないし…。 大倉「告白されてもOK出さんへんの**も一緒やろ?」 **「ちょっ!呼び捨てヤメてぇや!」 大倉「えー?えぇやん♡」

2015-07-03 19:53:53
りえぷぅ @riem124blue

30 **「いいわけない!」 大倉「もぉー、そんな怒らんといてやぁ。」 変わらずニコニコしてる。 なんか怒る気力が吸い取られる感じ。 **「…家帰らへんの?」 大倉「まぁー…帰ってもやることないしなぁ…。」 **「ふーん…。」 大倉「あっ、バス来たで?」

2015-07-03 19:54:04
りえぷぅ @riem124blue

31 **「あっ!ホントだ!…お兄ちゃん!」 バスを降りたお兄ちゃんに手を振る。 遠慮がちに手を上げて答えてくれる。 鞄を掴んで教室を出る。 **「じゃあね、大倉!」 大倉「おまえも呼び捨てやーん!あはは!」 また背中で聞き流して、急いでお兄ちゃんのところへ。

2015-07-03 19:54:16
りえぷぅ @riem124blue

32 横山「…また…アイツ?」 お兄ちゃんの目線を辿ると、やっぱりまたこちらを見てる大倉。 この前みたいに手を振ってる。 **「…そう…、なんか…変なヤツ。」 横山「…………帰ろか。」 お兄ちゃんの後に続いて歩き出しながら、もう一度チラッと大倉を見る。

2015-07-03 19:54:30
りえぷぅ @riem124blue

33 まだ…手振ってる…。 思わず上げかけた手をギュッと握って、少し離れたお兄ちゃんの背中を追いかけて小走りに近付いた…。 ―――――― それから、放課後になったら大倉は私の教室に来るようになって。 別に特別な話をするわけではなくて、先生の悪口とか、テレビ番組の話とか。

2015-07-03 19:54:41
りえぷぅ @riem124blue

34 私がしたくない友達とか家族の話は一切しなかった。 自覚してるけど、この性格のせいか、友達といえる友達はいない。 家族の話になったら、なんかお金持ちはどうとか、家が大きくてどうだとか…なんか、私自身に興味があると感じたことがなくて…だからそれ以上仲良くしたいと思えなかった。

2015-07-03 19:54:48
りえぷぅ @riem124blue

35 告白なんてしてくる男子も…一体私の何を見て好きなんだろって思う。 容姿? 私の後ろに見える、お父さんのお金? そんなヤツと付き合うわけないじゃん。 もしかして、お兄ちゃんはそんなことも全部わかってるから、わざわざ私を迎えに来るような、面倒くさいことをしてくれてるのかな?

2015-07-03 19:54:52
りえぷぅ @riem124blue

36 大倉は…なんで私なんかと話をしたりするんだろう…。 しかも話をするのは放課後だけ。 昼間、廊下ですれ違っても、チラッと見るだけで、絶対に話しかけて来ない。 まぁ…話しかけられても困るんだけど…。 大倉信者の女子と面倒くさいことになるの、目に見えてるし。

2015-07-03 19:54:59
りえぷぅ @riem124blue

37 別に口説いてくるわけでもない。 様子を窺ってるだけなのかな? ホントは…みんなと同じ…?? でも…大倉、今日は来ないな…。 いつものように窓の外を見つめる放課後。 もうすぐお兄ちゃんが来る頃だけど…大倉は来ない…。 どうしたんだろう…何かあったのかな…?

2015-07-03 19:55:03
りえぷぅ @riem124blue

38 あれ…? 私…なんか…大倉のこと気にしたりして…。 …寂しい…? 学校の前にバスが止まって、お兄ちゃんの姿が見えた。 よくわかんないけど、いつにも増して慌てて教室を出た。 横山「…今日は暑いなぁ…ジュース飲むか…?」 返事もしてないのに、近くの自販機の前に立つ。

2015-07-04 22:27:38
りえぷぅ @riem124blue

39 横山「ほれ。これ好きやろ?」 **「…うん…。」 私の弾んだ息も落ち着く。 ジュースを受け取って、それを1口飲んだら、お兄ちゃんはいつものように「帰るで」って言って、歩き出す。 家の玄関には、いつも出迎えてくれる光子さんの姿はなく、代わりに見慣れない靴が何足か。

2015-07-04 22:27:44
りえぷぅ @riem124blue

40 母親「おかえりなさい。」 **「えっ!お母さん!」 横山「…ただいま…。」 **「あっ、ただいま!お母さんがこの時間に帰ってるって、珍しいねっ!あ、そうか!お母さんいるから光子さ…、」 母親「お父さんから大事な話があるのよ。リビングに行きましょ。」

2015-07-04 22:27:50
りえぷぅ @riem124blue

41 思わず上がったテンションだけど、お母さんは何だかいつもと様子が違うくて…。 言われた通り、まっすぐリビングへ向かった。 途中、お兄ちゃんと顔を見合わせた。 不安そうな…戸惑ってるような顔…きっと私も同じ。 お母さんの後に続いてリビングへ入る。

2015-07-04 22:27:55
りえぷぅ @riem124blue

42 そこには…大きなソファーの真ん中にドカッと座った、なんだか久しぶりに見るお父さん。 そのお父さんの後ろには、確かお父さんの会社で長く働いてる女の人…と、初めて見る子供が2人…。 そして、お父さんの向かいのソファーには…光子さん…と、大倉?!

2015-07-04 22:27:59
りえぷぅ @riem124blue

43 なんで…なんで大倉がここにいるの…? 父親「おい、おまえたちはこっち座りや。」 そう言って、自分の両隣をチラリチラリと見た。 お母さんは黙ってそれに従う。 戸惑いつつも、お母さんに続こうとしたら、お兄ちゃんに手首を掴まえて、止められた。 父親「…まぁ、えぇわ…。」

2015-07-04 22:28:04
りえぷぅ @riem124blue

44 お父さんがフンッと息を吐いて、話し出した。 父親「おまえたちもそろそろ知っとくべきや、思うてな。候隆はもう進路を決めなあかん時期やしな。俺の跡継ぎとしては、色々知っとかなあかん。」 お父さんは私の隣にいる、お兄ちゃんの顔を見た。

2015-07-04 22:28:10
りえぷぅ @riem124blue

45 父親「ここにおる子供はみんな、俺の子供や。法律上、名字は全員同じになることはないけどな。」 …何言ってんの…? 父親「…候隆!俺の名字を引き継ぐ、法律上の跡取りはおまえや。おまえたちには仲良う、俺の会社を手伝ってってもらわなあかんと思うてる。」

2015-07-04 22:28:17
りえぷぅ @riem124blue

46 父親「まぁ、今すぐやない。大学もしっかり出てもらってからや。せやけど、今日から、光子と忠義には、ここの離れに住んでもらうことになったで、このタイミングで話した。」 私は…大倉とキョウダイってこと………? 光子さんは…お父さんの…アイジン…てやつ…? なに…それ…。

2015-07-04 22:28:24
りえぷぅ @riem124blue

47 父親「ま、そうゆーことやから、仲良うやってもらわな困る。…候隆、進路について話し合わなあかんから、おまえだけ残れ。後は出て行ってえぇで。」 お兄ちゃんを見ると、見たこともない怖い顔でお父さんを睨んでる。 思わずお兄ちゃんの腕に擦り寄ったけど、お母さんに体を引っ張られる。

2015-07-04 22:28:31
りえぷぅ @riem124blue

48 そのまま、お兄ちゃんと引き離されて、部屋の外へ。 なんだか…わからないことだらけ…。 少しの時間の出来事なのに、たくさんの知らない知識を頭に詰め込まれた感じ…。 お母さんが「先に食事いただきましよう…」とか言って、同年代の女性2人に声をかける。

2015-07-05 21:42:33
りえぷぅ @riem124blue

49 大倉と私は…その場を動けないでいるけど…キョウダイらしい…まだ小学生らしき2人の子供は、お母さんたちとその場を離れていく。 途中、お母さんが振り返って私を見たけど、ついて行く意志がないと伝わったようで、諦めたようにその場からいなくなった。

2015-07-05 21:42:45
りえぷぅ @riem124blue

50 大倉「…なぁ…外出ーへん?」 明らかにいつもとは違う笑顔で私を見た。 返事もせずに、黙って少し大倉に近寄った。 それを確認すると、大倉はまたニコッと笑って玄関へ向かって歩き出した。 大倉「…庭広いなー…!」 何も言えず、黙って大倉の背中を追う。

2015-07-05 21:42:50
前へ 1 2 ・・ 11 次へ