黄昏町(柊)十六日目

柊 @hiiragi_r_t_d

【十六日目】 【魂9/力10/探索3】 【異形】複口(力+2、探索+1)、長指(力+1、探索+2)、鱗(水耐性、力+1)、石肌(火耐性、力+1)、鬼腕(力+5) #hollytk

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私はアーケードの屋根の上に登っていた。 清掃用と思しき階段を見つけたのだ。 「今日も綺麗な夕焼けだ」 「ええ、その通りですな。」 そこには、先客がいた。 フォーマルなジャケットを着込んだ初老の男性が、優しげに微笑んでいる。 01 #hollytk

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「あ、どうも。」 「どうも。貴方も此処に座ってご覧なさい。良く見えますよ」 普通に人と出会って、普通に挨拶をして、それが普通に返ってくる。 そんな幸せを噛み締めながら、私は老人の隣に座った。 「ああ、本当に良く見えますね」 02 #hollytk

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しばらくの間、私と老人はそうやって夕焼けを眺めていた。 沈黙を破ったのは、老人だった。 「本当に、この町の夕焼けはきれいだね」 「ええ、そうですね」 「まるで、消え行く魂の色のようだ」 そう言うと老人は、私を見た。 03 #hollytk

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老人の二つの目は、長い年月で視力が失われたのだろう。ぴったりと閉じられている。 額には大きな眼が開き、私と夕焼け空を瞬きせずに見つめていた。 04 #hollytk

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「その眼、魂の色が見えるのですか？」 私は閉じられた目には触れずに聞いた。 「ええ。人の目に見えるものも、視えないものも、見るべきでないものも。この眼には見えます」 彼もまた、閉じた目には触れずに答えた。 「人の心も、でしょうか？」 05 #hollytk

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老人は静かに頷いた。 「人の心は魂の色で出来た器のようなもの。そうとしか言いようがないのですな」 見た事のある者にしかわからない、という事だろう。 「ご老人、私の心は如何なる器か」 06 #hollytk

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「貴方の器には、数多の異形が食い込んでおられる。それは心に穿たれた楔。楔を増やせば、長くは保ちませぬぞ」 なるほど。確かに異形は、私に語りかけている。それが心にもたらす影響は無視出来ない。 「その楔が無くとも、元より貴方の器には大きな穴が空いている」 07 #hollytk

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「その穴は更に大きく、強い感情で覆われておる。その感情、思いがあればこそ、その数の楔にも耐えてきたのであろう」 「なるほど。参考にさせてもらいます」 大きく、強い感情…思い。 それが私を人間たらしめている、か。 08 #hollytk

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私は最後に、老人に問いを投げる。 「この町で見た中で一番綺麗なものはなんですか？」 老人は迷わず言い切った。 「死を受け容れた者の魂。これに勝るものはない」 「私で試してみますか？」 老人はかぶりを振る。 09 #hollytk

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「そのつもりだったのだがね。貴方の心を覗いてすぐに諦めたよ」 心を見れば、宿った異形の力が分かるという事か。 「そうですか。それでは」 「貴方とはもう少し話したかったな。」 「ええ、私もです。」 名残惜しい別れは、久しぶりだ。 10 #hollytk

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私は階段を降りながらゆっくりと物思いにふける。 左腕に鬼の力が宿った時、私は棘を失った。あれはきっと、魂の自衛機能なのだろう。 そして、夕焼けと似た消えゆく魂の色。 この町の夕焼け空は、人の死によって輝いているのかもしれない。 11 #hollytk

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そして私の心に空いた穴。 それはきっと、ユキを失った空虚だろう。 「乗り越えたつもり、だったんですけどね………」 私は頭を掻きながら、アーケードを出ていった。 12 #hollytk

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──────── 【十六日目】 【生存】 【魂+1】 【魂10/力10/探索3】 【異形】複口(力+2、探索+1)、長指(力+1、探索+2)、鱗(水耐性、力+1)、石肌(火耐性、力+1)、鬼腕(力+5) 13 #hollytk

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[町]初老の男は穏やかな表情で黄昏を見ている。「きれいだね」額の目だけが君を見つめる。「消え行く魂の色のようだ」《力4以上で勝利【魂+1】、3以下で死亡【魂-1/『三ツ目(力+1、探索+2)』入手】》 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541547 #hollytk