もう一つの「フォードシステム」

フォードは分業と流れ作業により大量生産大量消費を実現した企業として知られる。しかしもう一つ重要な側面がある。社員全員に十分な収入を保障し、「お客さん」を増やすという非常にユニークな発想で社会に提案し、普及させたという功績である。
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shinshinohara @ShinShinohara

人工知能とロボットが多くの仕事を担うようになり、人間は働かなくてよい時代が来るかもしれない。その場合、懸念されるのはロボットや人工知能に仕事を奪われて「働いてないんだから収入なし」となり、極端に貧しい人が極端に多い社会、になるかもしれないことだ。

2015-08-10 21:35:42
shinshinohara @ShinShinohara

アマゾンはネット販売を広げることで小売業を不必要にしようとしている。グーグルは自動運転システムを普及させることで運転手の仕事を不必要にしようとしている。パソコンはそろばんを叩くOLの仕事を不要にし、ロボットは製造業の多くの雇用を不要にした。人間の仕事がどんどんなくなっている。

2015-08-10 22:23:43
shinshinohara @ShinShinohara

「自動化社会」では、労働者が不要になる。お金を手にできるのは、そうした自動化企業に投資する資本家だけ。こうした資本家は「なんで働きもしない一般庶民に金を配る必要がある?」と考えるかもしれない。一般庶民は仕事を奪われ、収入の道が絶たれ、生活が急速に逼迫するかもしれない。

2015-08-10 22:26:15
shinshinohara @ShinShinohara

しかしもう一つ方法がある。「フォードシステム」だ。自動車製造業の雄、フォードは、自動車という高度な製造技術を要する製品を、徹底した分業で作業を単純化し、ベルトコンベアによる流れ作業で大量生産を実現した企業として知られる。しかしもう一つ、画期的な社会変革を成し遂げた企業の顔を持つ。

2015-08-10 22:30:25
shinshinohara @ShinShinohara

それは「社員全員を高給取りにした」ことである。それまでの企業は、労働者の給料をできる限り低くして、経営者や資本家の手元に残るお金を大きくしようとしていた。しかしフォード社長は極めてユニークなアイディアを実践した。「高い給料をもらえば、社員がお客さんになるじゃないか」

2015-08-10 22:32:31
shinshinohara @ShinShinohara

事実、フォードに勤める労働者は高い給料をもらうことで自社の自動車を購入した。自社の社員さえお客さんにする、という発想で始まった、このもう一つの「フォードシステム」は、やがてアメリカ社会全体に広がり、ヨーロッパ、日本といった資本主義陣営に広がった。

2015-08-10 22:35:24
shinshinohara @ShinShinohara

それは当時、資本主義社会が恐れていたソ連などの社会主義、共産主義に対する一定の答えとなった。フォードシステムは末端の社員に至るまで高給を保障し、全員が豊かになり、しかも労働意欲を刺激するシステムとして機能した。共産主義が「怠け者に有利」なシステムになったのと好対象だった。

2015-08-10 22:38:50
shinshinohara @ShinShinohara

共産主義が失敗したのに対して資本主義社会が生き残ったのは、資本主義が優れていたからではない。「フォードシステム」が経済システムを活性化しながら、同時にできる限り多くの人々の生活を向上させるモデルとして提案され、それが普及したからにほかならない。

2015-08-10 22:42:55
shinshinohara @ShinShinohara

「フォードシステム」がアメリカ社会をはじめとする資本主義社会に普及していったのは、「共産主義への恐怖」が手伝った、ということも忘れてはならない。共産主義社会になって全財産を失うくらいなら、利益を社員全員に配った方がマシだ、と資本家が我慢できたためである。

2015-08-10 22:45:31
shinshinohara @ShinShinohara

しかしソ連崩壊から始まる共産主義の退潮で、またぞろ資本家は「労働者に給料を渡すのが惜しい」と思い始めた。イノベーションがもてはやされ、ITが普及し、ロボットが発達し、人工知能がチェス名人や棋士に勝つようになって、「労働者に金を与えずに済むんじゃないか?」という考えがもたげてきた。

2015-08-10 22:48:45
shinshinohara @ShinShinohara

しかし、産業革命時のように「労働者の給料をできる限り低く抑える」ことに資本家と経営者が熱心になれば、再び「共産主義の恐怖」が頭をもたげることだろう。いや、もっと恐ろしいことが起きるかもしれない。「一定以上の金を持つ資本家を殺せ」とプログラムを組む人物の登場だ。

2015-08-10 22:54:56
shinshinohara @ShinShinohara

資本家が極端に富を独占する社会が実現すれば、一般庶民は当然恨む。セキュリティをかいくぐり、ありとあらゆる人工知能、ITシステムが資本家を狙い撃ちにする自動攻撃システムに変える人間が現れないとは言い切れない。資本家が専門家を雇って身を守ろうとしても多勢に無勢、勝ち目がない。

2015-08-10 22:58:28
shinshinohara @ShinShinohara

そんな「ターミネーター」が描いたような社会が実現すれば、一般庶民はおろか資本家まで不幸になる。それよりも現代版「フォードシステム」の再構築を考えてみてはどうか。多くの人々に仕事と十分な収入を。働きによる収入の違いはあるが、極端な差はない社会。

2015-08-10 23:01:44
shinshinohara @ShinShinohara

ロボット化と人工知能の発達は、これまで存在した仕事の多くを消滅させるのは間違いない。しかしそこで考えるべきなのは、多くの人々の仕事を消すことで社会不安を増大させ、同時に「お客さん」の少ない社会にするか、「フォードシステム」のように仕事を創り、給料を払い、「お客さん」を増やすかだ。

2015-08-10 23:05:18
shinshinohara @ShinShinohara

雇用が不要だからといって人々を解雇すれば、社会不安を増すだけでなく、「アマゾンで買い物をする」お客さんも減る、ということを忘れてはならない。給料を貰っていないのだから何も買えない。アマゾンの普及で雇用が減ったとしたら、皮肉にも「お客さん」を減らすことになるのだ。

2015-08-10 23:07:45
shinshinohara @ShinShinohara

しかしもし、アマゾンが積極的に「フォードシステム」を導入したとしたらどうなるだろう?アマゾンに勤めることで高給がもらえ、そのお金でアマゾンの商品を買う「お客さん」になってもらえる。どんな仕事を用意するかはアマゾン次第、ということになる。 しかし、現状ではそうはなっていない。

2015-08-10 23:09:53
shinshinohara @ShinShinohara

アマゾンの倉庫やに勤める人は、そんなに給料を貰っていないことは容易に予想がつく。アマゾンは今のところ、「フォードシステム」とは逆の、自分の足を食うタコのような状態となっている。アマゾンが一人勝ちになった社会は、アマゾンも儲からない、お客さんがいない社会になっているだろう。

2015-08-10 23:13:05
shinshinohara @ShinShinohara

資本主義社会はもう一度「フォードシステム」を見直さないと大変なことになる。何も共産主義になれとは言わない。しかし、社員にそこそこの給料で報いる社会でなければ、企業自体が「お客さん」である一般庶民を窮乏化させ、自らの首を絞めることになる。

2015-08-10 23:15:06
shinshinohara @ShinShinohara

一方、単なる「フォードシステム」の墨守ではダメ。大量生産大量消費はもはや地球環境が耐えられない。ネットサービスなどの「省資源サービス、省資源商品」に軸足を移す必要がある。その上でできる限り雇用を増やし、収入を確保するのである。

2015-08-10 23:17:51
shinshinohara @ShinShinohara

新「フォードシステム」に向かい、社会全体が豊かさを維持するのか、産業革命時の「弱肉強食」社会に逆戻りし、庶民は窮乏し、資本家を恐怖に陥れる不安定化した社会になるのか。どちらを選ぶかは、私たちの選択であり、政治家がなすべき選択でもある。

2015-08-10 23:20:12