信玄の遺言

shinshinohara @ShinShinohara

安保法案賛成の人は、反対派に「大局観がない」と批判する傾向がある。アメリカの弱体化や中国の台頭など、世界情勢が変わり、アメリカに頼った安全保障体制はもはや崩れようとしているのに、その大局観を持てないでいる、と決めつけている。果たしてそうだろうか。

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たとえば紛争解決人と呼ばれる伊勢崎氏も、今回の安保法案は反対の立場を採っている。伊勢崎氏から言えば、安保法案賛成派の方が視野が狭い、ということになる。日本が良くも悪くも諸外国を攻めていないという特異な立場を形成してきたメリットを生かそうという視点が欠落している、と。

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安保法案賛成派からすれば、非軍事的手法は対案になりえぬ、と反対派を批判する。しかし少子高齢化で十分な兵員を用意することも困難、最先端の兵器を整備することも経済弱体化の中では困難、ということを考えれば、軍事力増強というのも果たして対案たりえているだろうか。

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少子高齢化で若者が減り、経済弱体化でいかに諸経費を縮減するかが求められている日本の現状では、「信玄の遺言」が適当ではないかと考える。甲斐の武田信玄が、嫡男の勝頼に対して残した遺言である。

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武田信玄は軍事拡張路線を採り、もう少しで天下取りに手が届きそうだった。そこまで富国強兵に成功した甲斐であったのに、嫡男の勝頼には拡張主義を捨て去り、3年は内政に専念せよ、と遺言した。拡張主義を続ける器量が若い勝頼にはない、と見抜いたためだろう。

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勝頼は遺言を破り、拡張主義を続けた。しかし家臣たちの離反が甚だしく、拡張主義は破たんした。内政が収まっていないのに、拡張主義を採れるはずもなかった。

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日本が退潮の中にある、という冷徹な分析がなければ、適切な手は打てないだろう。春秋戦国時代、国が弱体化しているというのに好戦主義を捨てることができず、弱体化に拍車をかけて滅んだ国はたくさんある。国のサイズに合わない軍事力は、むしろ国を弱める原因となる。その大局観が必要だ。