『ア・レッド・メモリア・オブ・バーサーク・ブルズ』

ニンジャの…都市伝説!
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不幸鳥 @hukurou_nayuta

『ア・レッド・メモリア・オブ・バーサーク・ブルズ』 #1 #HkruNj

2015-08-23 16:01:51
不幸鳥 @hukurou_nayuta

月の無い深夜だった。こんな夜に好き好んでこのような治安の悪い通りを歩くものなど、余程頭のおかしい者でなければいないだろう。…彼らは頭がおかしかったのだ。人気の無いのを良いことに。 「実際アブナイんじゃねぇの~ハハハ」「人がいないからダイジョブダッテ!」1 #HkruNj

2015-08-23 16:04:30
不幸鳥 @hukurou_nayuta

ヨタモノめいた3人組だ。彼らはこうした危険地帯にスリルを求め敢えて踏み込み、悪いことをしている気になったりしている。そこに住むホームレスを囲んで棒で叩いたりもする。彼らを咎めるものはいない。だから余計に調子に乗る。「しっかし何ンにもねえな」2 #HkruNj

2015-08-23 16:06:44
不幸鳥 @hukurou_nayuta

三人組の一人、ヒトウ・タカゴはぼやく。「つまんねェの。ホームレスすらいねェ」「今日はハズレか」「引き返そうぜ」すっかり興の冷めた彼らは踵を返し、来た道を戻ろうとした。「済みません、お時間よろしいでしょうか」三人は弾かれるように振り返る。誰もいなかったはずの背後。3 #HkruNj

2015-08-23 16:09:08
不幸鳥 @hukurou_nayuta

「ア?」言いながらタカゴは凄んでみせた。そこにいたのは清潔な白いスーツを着た男だった。その髪の色も真っ白だ。「私、ユマシ・ハマというものですが…人を尋ねておりまして」三人はまるで聞いていなかった。カモが来たことを喜んでいるだけだった。「その必要はねェかもなァ!」4 #HkruNj

2015-08-23 16:13:39
不幸鳥 @hukurou_nayuta

三人組のうち二人が、ハマと名乗った男へと襲い掛かる。「…何と」…おお、見よ!間違いなく二人の蹴りとパンチはユマシ・ハマを捉えている…が、どう見ても効いている様子はないのだ!「何だこいつ…」「全然効いてねェぞ!?」そのことにタカゴも不気味に思った。その時だ。5 #HkruNj

2015-08-23 16:19:09
不幸鳥 @hukurou_nayuta

「人が下手に出りゃあ…」「ハ?」瞬きのうちに、二人は後方へ吹き飛ばされていた。「アバーッ!」「アババーッ!」白スーツの男は更に二人へ追い討ちを掛ける!「貴様らは私のスーツを汚した。汚したのなら責任を取れ。取れぬのならば」あっという間に二人はネギトロと化す。6 #HkruNj

2015-08-23 16:26:39
不幸鳥 @hukurou_nayuta

「取れぬのならば…死ね!」…ナムサン!彼らとてここまでされる謂れはない!そうしてその場には…ヒトウ・タカゴと、白…否!返り血により染め上げられた赤スーツの男だけが残った。「ア…アア…アイエ……」タカゴは顔を覆い蹲った。二人は死んだ。惨たらしくネギトロにされて。7 #HkruNj

2015-08-23 16:31:16
不幸鳥 @hukurou_nayuta

逃げなくては。逃げなければ殺される。二人のように惨めったらしく無惨に殺される。嫌だ。逃げよう。逃げる?逃げられるのだろうか。あれはニンジャだ。直ぐに追い付かれて殺される。結局死ぬ。為す術なく。だったらどうする。死ぬか。殺すか。そうだ殺せ。殺せ。嫌なら殺せ。8 #HkruNj

2015-08-23 16:36:47
不幸鳥 @hukurou_nayuta

もはやヒトウ・タカゴに、赤スーツの声は聞こえていない。赤スーツがこちらに近付いてきていることにも気が付かない。赤スーツどころではない。「恐怖に飲まれましたか。所詮はモータルですね」赤スーツがタカゴに手を伸ばす。9 #HkruNj

2015-08-23 16:41:36
不幸鳥 @hukurou_nayuta

何も考えるな。ただ殺せ。殺サないト。殺死テ殺ラナイト俺ガ死ヌ。ナラバソウダ殺セ!殺シテシマエ!「…ア」これまで微動だにしなかったタカゴが身動ぎする。「ム…?」「…A…AAAAARGH!」もうその声はヒトウ・タカゴのものではなかった。「成程…ニンジャになったか」10 #HkruNj

2015-08-23 16:46:45
不幸鳥 @hukurou_nayuta

「ドーモ。ピンパーネルです。…いや、無意味か。アイサツを返せる状態ではあるまい…」先手を打ってアイサツした赤スーツはカラテを構えた。「…a…Ar…」「アワレな獣よ、もうお前は人間ではない。何者でもない」タカゴであったものはただ呻き声をあげるだけだ。11 #HkruNj

2015-08-23 16:51:07
不幸鳥 @hukurou_nayuta

「…引導を渡しましょう…!イヤーッ!」 ピンパーネルの鋭い跳び蹴りが、呻き声をあげ続けるそれへと放たれる!「aAAAAAAAAAARGH!!」おお…見よ!その化け物めいたものはピンパーネルの跳び蹴りを易々といなした!「…少しはやるようで」12 #HkruNj

2015-08-23 16:56:42
不幸鳥 @hukurou_nayuta

感心するピンパーネル。そこへ怪物と成り果てたそれが突進してくる。「アアアアアア!!!」爆発的な速さ!「おやおや…まるで闘牛…」ピンパーネルはひらりとかわす。だが、そいつは止まらない!勢いのまま壁へと突っ込んだのだ!「ほう…理性は完全に消えてしまっているか…?」13 #HkruNj

2015-08-23 17:02:06
不幸鳥 @hukurou_nayuta

「わかった…もう情報は充分だ。だが今は少し分が悪い…いずれまた、相見えましょう」壁を貫通し、その瓦礫に埋まったままの化け物にピンパーネルは告げ、背を向けた。「ァア…ア…」赤い闘牛はそのあとを追おうとした。だが、遅かった。悲運の怪物の咆哮が、月の無い夜に響いた。14 #HkruNj

2015-08-23 17:06:38
不幸鳥 @hukurou_nayuta

とある深夜…ウシミツ・アワーのことだ。消えていた月は姿を現し、墓標めいて立ち並ぶ廃ビルの群れを淡く照らしている。地面に目を向ければ、黒ずんだ血が点々と続いている。その先には…「ハァーッ…ハァーッ…!まさか本当に…あんなバケモンが…」赤い装束のニンジャだ。16 #HkruNj

2015-08-23 17:16:52
不幸鳥 @hukurou_nayuta

「しかし、何だって俺だけを狙う…あの場には実際俺以外のニンジャも、何人か…」そのニンジャはビルに背を預け、肩で息をする。「だがここまで来りゃ…問題は無…」その先の言葉は紡がれることはなかった。「フシュゥウーッ…」狂った怪物は瞬時にそのニンジャを圧殺したからだ。17 #HkruNj

2015-08-23 17:27:28
不幸鳥 @hukurou_nayuta

恐ろしい闘牛はゆっくりと立ち上がり、辺りを見回した。「ア、アイエエエ!」ナムアミダブツ!そこに偶然通りかかった通行人!「ひ、人殺し…」「ァ…」虚ろだったその瞳に激しい殺意の炎が灯る!何故自分は殺されようとしているのか…その不運なモータルはふと思い当たる。18 #HkruNj

2015-08-23 17:32:01
不幸鳥 @hukurou_nayuta

この付近に囁かれる噂話を。誰もが笑い飛ばし、信じようとしない都市伝説を。つい最近頻繁に語られる、怪談を。「アイエ、あ、赤い闘牛…化け物!アイーエエエ!」男はこれほどにも己が赤い服を着ていることを恨めしく思ったことはないだろう。周囲には悲鳴が響き渡り…途絶えた。19 #HkruNj

2015-08-23 17:36:29
不幸鳥 @hukurou_nayuta

──『赤い服を着て夜道を歩いていると、赤い闘牛に惨殺される』…この周辺で、密かに囁かれる噂話である。20 #HkruNj

2015-08-23 17:43:19