ギガベース日誌ほのぼの閑話「13インチの包丁」

すふん @suhn_Akvavit

ほのぼの閑話 #ギガベース日誌

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「試験運用？俺に？」 「はい！どうせお暇でしょう？今から甲板でテストするんで、付き合ってくださいよ」 目の前の艦娘は一応の上司に対する失礼な物言いを一切気にしていないようで、目をキラキラさせながら俺の返答を待っている。 #ギガベース日誌

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「新兵器の試験運用なんざ艦娘にやらせればよかろうに」 「ダメです！何て言ったって今回の新兵器は、提督の護身用として開発したんですから！」 「ほう」 一気に興味が沸いた。普段持ち歩いているナルカミじゃ、心許ない場面が今までに何度かあった。 #ギガベース日誌

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「興味沸きました？」 「まぁ、な」 「じゃあ話は早いですね！提督の寿命も幾ばくもな事所ですし、時間がもったいないので今すぐ甲板に」 明石の顔面にグーパンを叩き込む。こいつ、人が気にしてる事を。 #ギガベース日誌

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ギガベース、甲板。 「おっせーよ！待ちくたびれたぞ！」 「レの字、何でお前がいるんだ」 「は？アンタが呼びつけたんじゃねーの？おい明石！お前……」 「カンダダストリングッ！」 「アバーッ！」 #ギガベース日誌

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明石が放った捕縛用ネットランチャーは見事にレの字に命中。ソーメンのような粘着性の糸に絡まれ、奴は身動き一つ取れなくなる。 「ギガベース所属艦で最も通常兵器耐性が高いレ級さんには高性能サンドバッグになってもらいます」 #ギガベース日誌

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「レベル1の駆逐艦とかでよかったんじゃねえの……」 「ダメです！威力試験なので拳銃で死ぬ的が相手でも意味無いんです！じゃあ、まずはこれ！」 明石はニコニコ笑いながら、見慣れない形状の兵器を手渡してきた。 #ギガベース日誌

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「これは？」 「スティングレイMFですね。高弾速のロケットランチャーみたいなものだと思ってください」 「そうか。では早速」 レの字から50mほど離れ、構える。引き金を引くと同時に、後方からの衝撃と爆音に身を揺らされた。 #ギガベース日誌

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振り替えると、艦橋の一部が焦げていた。簡単な話、ロケットランチャーの前後を間違えたのだ。 「どうやったらロケランの前後を間違えるんですか！」 「説明書が無かったからだ！これはもういいや……次！」 #ギガベース日誌

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「これは？」 「サイクロン・レーザーですね！提督を中心とした全八方向にレーザーを照射し」 「産廃臭すげぇな……これもいいや」 「えぇー……」 味方への誤射が大前提である武装は兵器としてどうなんだ。 #ギガベース日誌

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「もうちょっとまともな武器ねぇのか。どいつもこいつも癖が強い」 「スティングレイについては完全に提督の扱いが悪いと思うんですが……これとかどうです？」 次に明石が手渡してきたのは、刃渡り13インチ程度の包丁だった。 #ギガベース日誌

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「……新手のレザブレか何か？」 「いやぁ、そんなつまんない物じゃないですよ！この包丁はですね！試験的に広範囲人工認識災害を付与させた包丁なんですよ！」 何を言っているんだこのピンク頭は。そんな気持ちが顔に出ていたのか、明石は丁寧な解説を始める。 #ギガベース日誌

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「この包丁を知的存在が所有するとですね、精神抵抗指数が一定以下の知的存在は所有者に対しての精神的、肉体的抵抗及び所有者からのこの包丁を用いた殺傷行動に対しての自己防御手段がとれなくなります」 「へー」 #ギガベース日誌

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「更には所有者に対しての敵対行動、殺傷行動すら抑制します。この効果は広範囲に渡り、例えばこの包丁を持った提督を私が遠距離から狙撃しようとしても引き金が引けなくなります」 「バリーに太もも売った事まだ根に持ってんの？」 「持ってません」 #ギガベース日誌

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「ただ、自発的な、自然災害的な知的存在の意思が絡んでいないものには対処できません。提督が今この包丁を持って甲板から飛び降りたら普通に死にます」 「やっぱ根に持ってんだろ」 「持ってません」 #ギガベース日誌

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話だけ聞けば恐ろしい代物だ。しかし、どうやってこの包丁が作られたのか、そもそも何故にその認識災害とやらをACや銃器でなく包丁に付与させたのかという疑問が沸いてきた。 「……その認識災害、って言うの？なんで包丁に付与させたの。銃やACじゃだめなの」 #ギガベース日誌

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「え？あ、いや、それはですねー」 急に明石の態度が変わった。つくづく分かりやすい奴だ。 「な、ん、で？」 「えーと、うーんと、多分、提督に説明しても理解するのが難しいと思うので、今日はこの辺で」 #ギガベース日誌

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逃げようとする明石の後ろ髪を掴んではっ倒す。手から包丁を奪い、首元に突きつけた。 「嘘？！何で？？！何で？奪えたんですか？！？」 「精神抵抗指数がなんちゃらとか言ってたし、それじゃねーの。それより、さっさと吐け」 #ギガベース日誌

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「ごめんなさい、あのですね、作ったってのは嘘です。横須賀第三軍港襲撃時の略奪物品整理手伝ってたら偶然見つけちゃいましてですね！頑張って解析したんですけど、説明した以上の事や、特性の原因まではわかりませんでした！」 #ギガベース日誌

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「つまり、見栄張ったんだな」 「はい」 「許した」 明石の首元から包丁を放し、顔を近づけてよく観察してみる。外見からは、この包丁が持つ特性は一切わからない。こんな不思議アイテムを知らぬ間に回収していたとは。 #ギガベース日誌

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「おいクソ司令官」 気がつけば、拘束されていた筈のレの字が後ろに立っていた。パーカーを来てない所を見ると、衣服だけ脱いで脱出したのであろう。 「えいやっ」 特に理由も無く、奴の頭に包丁を振り下ろした。わかってはいたが、傷一つつけられない。 #ギガベース日誌

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「……いーらねっ。こんなもん」 包丁を甲板の上に放り投げる。俺にはこんなもの必要無い。 「ええっ？！？なんでっ？！」 「こんなちんけな包丁で無抵抗な奴殺したってつまんねぇよ。ACで戦争するに限る」 #ギガベース日誌

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「無抵抗な民間人10億人殺した奴がなんか言ってるぞ」 「あれは、ほら、あれよ。殺したくて殺したんじゃなくてもっと激しい殺し合いしたくて殺しただけだから」 「日本語の限界を感じるぜ。それより、明石てめぇ！」 #ギガベース日誌

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レの字が明石に掴みかかる。 丸腰だった奴は、自然な動きで包丁を拾い上げ、明石に向かって振り下ろす。 「てめえ！ナメてんじゃねぇぞクソが！なぁーにが的じゃ！三週間は人前に出れねえツラにしてやるぜーッ！！」 #ギガベース日誌

すふん @suhn_Akvavit

明石が拾った不思議アイテムの効力は、明石自身が最大の結果を以て思い知る事となった。 #ギガベース日誌