ライアン・ゴズリング『ロスト・リバー』について

正当に評価されて欲しい傑作
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ロラン @malgre_nuit

ライアン・ゴズリング『ロスト・リバー』鑑賞。2015年ベスト確定の大傑作。徹底的に意味性を切断したイメージの洪水。あるいは、一瞬の表情を切り取るカットの美しさ。自然光や極彩色の照明を施した画面の端々に才能が迸る。勧善懲悪の結末にも関わらず、えも言われぬ感動が炎となって立ち上がる。

2015-06-02 21:23:59
ロラン @malgre_nuit

『ロスト・リバー』廃墟が立ち並ぶゴーストタウンが舞台なので当然ではあるが、本作のショットは、母親が働く怪しげな店内を除いて、人の気配を一切感じさせない。その殺風景に風に揺らめく木々やカーテン、立ち上る炎や光を浴びる川が対置される。終盤の夜の川に反射する真っ赤な照明の素晴らしさ。

2015-06-02 21:26:05
ロラン @malgre_nuit

『ロスト・リバー』人の気配の消えた街と対比するかのような、母親が働く店のアングラな空間も秀逸(多少グロテスクな描写もあるが)。その地下世界は、川底に沈んだ恐竜のミュージアムや、主人公が親しくする少女の家の暗さと無言の老婆といったイメージでも形成される。

2015-06-02 21:27:15
ロラン @malgre_nuit

『ロスト・リバー』一瞬の表情、とりわけ横顔を切り取ったカットがかくも美しい。窓越しに息子たちを見つめる母親に感極まる。また、主人公とギャングが初めて対峙する切り返しでは、横向きのギャングのカットの遠景にそびえるビルの存在感が見事。 pic.twitter.com/lNrqwKll9N

2015-06-02 21:31:05
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ロラン @malgre_nuit

『ロスト・リバー』ギャングの声を聞いた青年が廃墟から出て来る序盤のショットで、画面右から無人で走って来る炎に包まれた自転車が印象的だが、同じように彼の弟が玄関から出て来るファーストショットでも、ドアが開く直前に、画面右から車が猛スピードで走って来る。この幕開けの爽快感が堪らない。

2015-06-10 01:25:45
ロラン @malgre_nuit

『ロスト・リバー』序盤の燃えながら走り去る無人の自転車が印象的だが、その後、ナイトショットに一瞬だけ登場する自転車の集団には、アンゲロプロスの映画の黄色いレインコートの集団を想起した。ゴズリングの映画では、自転車は炎やネオンを帯びる。 pic.twitter.com/hTFCd50UIX

2015-06-02 23:09:11
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ロラン @malgre_nuit

『ロスト・リバー』自転車以外にもギャングが乗るオープンカー、母親を送迎する車、主人公の青年が川を渡る小舟、終幕のタクシーなど、乗物が多数登場する映画でもある。

2015-06-02 23:13:22
ロラン @malgre_nuit

『ロスト・リバー』横移動が幾度か使われるが、その中でも序盤の色鮮やかな外壁を背景化したショットでのそれには興奮した。被写体の顔を陰影化する夕空での横移動も素晴らしかった。 pic.twitter.com/lollkBFyDq

2015-06-02 23:17:13
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ロラン @malgre_nuit

『ロスト・リバー』終盤、少女の家に侵入したギャングの子分が家に火を放つ場面で、そこにいる話せない祖母を代弁するかのように、TV画面から「What are you doing here?(ここで何しているの)」と聞こえてくる演出がさりげない。

2015-06-10 12:34:13
ロラン @malgre_nuit

『ロスト・リバー』家を解体するショベルカーを接写したカットの強度も凄まじい。主人公と少女がコンビニで買い物をする場面の会話の意味不明さも。3つの命運が異なる空間で同時進行するラストのクロスカッティング。カーアクションのスリルと燃える家の刹那の落差。反復される音楽に訳もなく泣いた。

2015-06-02 21:32:59
ロラン @malgre_nuit

『ロスト・リバー』それぞれ異なる場所にいた息子と母、親しい少女が燃え盛る家を前に再会するラスト。その炎が彼らの表情を照らす光となる。その美しさ。幼い弟の存在のさりげなさが画面を微笑ましく飾る。

2015-06-02 21:38:57
ロラン @malgre_nuit

『ロスト・リバー』初見では木々の揺らめきが印象的だったが、注視すると、青年が貯水地を見つける場面の左右、少女が彼に危険を伝える場面の彼の背後、玄関先での少女とギャングの切り返しでの二人の間、ギャングに殺されたネズミを少女が埋葬する前景と、決定的な瞬間に木が揺れていることが分かる。

2015-06-10 00:44:39
ロラン @malgre_nuit

『ロスト・リバー』母が銀行で支店長と話す場面。帰りのエレベーターは映されるが、彼女が店に入る/出るカットは省略される。また、彼女が店で行うグロテスクなショーも、彼女と観客が終始内側から切り返されることによって分断される。男が彼女に迫る終盤だけは、ガラス越しの分断が彼女に味方する。

2015-06-10 01:01:37
ロラン @malgre_nuit

『ロスト・リバー』草木の緑が印象的な画面が夜や母が働く店のアングラな空間に変遷する構成から、リンチの『ブルーベルベット』を想起させるが、その変遷の境目と言える銀行のシークエンスで、クリスティーナ・ヘンドリックスが後に働く店の照明と同じ紫色の服を着ていることが彼女の運命を暗示する。

2015-06-10 01:13:51
ロラン @malgre_nuit

『ロスト・リバー』は、世評ほどデヴィッド・リンチの匂いを画面からは感じなかったが、このカットの赤いランプは、紛れもなくリンチ的な小道具。 pic.twitter.com/3xVOdKvSzo

2015-06-10 12:27:50
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ロラン @malgre_nuit

『ロスト・リバー』2回目。やはり大傑作。今回は主人公の青年と母親の関係性を中心に。本作では母子が同時に映るカットがほとんどなく、二人はそれぞれ異なる空間へと徹底的に分断される。加えて、母が車中で男といる瞬間を息子が目撃したことによって(誤解だが)二人の関係性には溝が生じてしまう。

2015-06-10 00:15:47
ロラン @malgre_nuit

『ロスト・リバー』同一空間下でも分断される息子と母。例えば、息子がボンネットの書き置きを見る冒頭、それを書いた母は2階から息子を見ており、二人は上階と外で分断される。終盤、息子が母を勤務先へ送り届けた後、彼女が忘れたバッグを持って店内に入るも、二人はやはりガラス越しに分断される。

2015-06-10 00:26:23
ロラン @malgre_nuit

『ロスト・リバー』ラストの車中でも、息子は少女と後部座席に、母親は助手席に座っており、ここでも二人は同一空間で分断されている。しかし、そのシークエンスでのサイドミラーに映る母の表情のカットと、その直後に息子の表情に切り替わる二つのカットで、映画は分断された母子の視線を交差させる。

2015-06-10 00:37:12
ロラン @malgre_nuit

『ロスト・リバー』息子が「呪い」を解いたと同時に、異なる空間にいる母がそこから脱出する運命的なラスト。遅れて帰宅した母は、息子ではなく隣にいる少女を真っ先に抱き締める。彼は横で気まずそうに佇んでいる。しかし、母子の手が繋がれた一瞬のカットには、確かな愛の復権を見た。

2015-06-10 00:17:13
ロラン @malgre_nuit

『ロスト・リバー』は、感覚的かつ断片的な印象が強い映画ではあるが、クリスティーナ・ヘンドリックスの一瞬の表情を映したこれらのショットには、ゴズリングの優しい眼差しが確かに見えた。 pic.twitter.com/vlCtQoDdhT

2015-06-14 03:08:16
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