黄昏町(柊)三十四日目

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@hiiragi_r_t_d

【三十四日目】 【残り二百圓】 【魂14/力10/探索6】 【異形】複口(力+2、探索+1)、長指(力+1、探索+2)、鬼腕(力+5)、竜尾(力+5)、半透明(探索+3、力-3) #hollytk

2015-08-29 23:15:36
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「なあ、おい!」 「なんですか、カスカ」 「もう一勝負しねえか?」 カスカの指差す先には、「いくす魚金」と書かれた出店。 「……名前では呼ばせませんよ?」 「それはもう諦めた。今回アタシが勝ったら…」 01 #hollytk

2015-08-29 23:15:52
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「勝ったら?」 「アイズミは三日間、解剖禁止だ!」 「どんな拷問ですか」 この町で唯一の娯楽なのに。 「勝てばいいんだぜ?自信ねえのか?」 目の前をカスカが跳ね回る。 断るのは簡単だ。しかしここまでおちょくられては、乗らない訳にもいかないだろう。 02 #hollytk

2015-08-29 23:17:01
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私は溜息をつく。 「いいでしょう…しかし私にそれだけの苦痛を強いるからには、カスカにもそれなりのリスクが必要ですよね?」 カスカがぎくりと振り向く。 「マジ?」 「先程はお詫びも兼ねていましたが、今回はそういうわけでもないですからね」 03 #hollytk

2015-08-29 23:19:05
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私は重々しい声で告げる。 「私が勝ったら、射的はナシです」 「マジかよ!これは負けられねえぜ!」 カスカが腕を伸ばして気合を入れる。 こうして私とカスカの、自身の娯楽を賭けた戦いの幕が開いた。 04 #hollytk

2015-08-29 23:21:10
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「店主、二人分」 「あいよっ!」 この店の店主は快活な女性だった。長い髪を後ろでまとめ、髪を変化させた棘をかんざしにしている。 「うちの金魚は活きが良いだろ?アンタらにすくえるかな?」 大きな水槽には、金魚……というより、緋鮒が泳いでいた。 05 #hollytk

2015-08-29 23:23:15
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「ちょっと待てよねーちゃん!流石にこれはすくえねえって!」 「え?前にすくった奴いたわよ?」 「ナニモンだよ!って、あー!」 店主にいちゃもんをつけていたカスカのポイを、水槽から跳ねた緋鮒が破っていった。 「ちくしょう……どうしてこうなった」 06 #hollytk

2015-08-29 23:25:55
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「あたしの家族だからね!そう簡単にはすくえやしねえよ!」 「別ゲーになってんじゃねえか!」 私は静かに、緋鮒の隙をうかがう。 カスカのポイが破れた以上、一匹でもすくえば私の勝ちだ。 しかし、緋鮒の動きに隙はない。 07 #hollytk

2015-08-29 23:27:14
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店主とカスカが静かに見守る。 私は緋鮒の動きを見ながら、すくいやすい姿勢を考える。 焦るな。好機を待て。 水面の一点に狙いを定め、左手を構える。 深呼吸して心を落ち着かせる。 いつの間にか、私の周りには遠巻きにギャラリーが集まっていた。 08 #hollytk

2015-08-29 23:30:58
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「なんだあのにーちゃん」「新参か」「また茜にぼったくられてんのか」「いや、今度はひょっとするかも」「まさか」「あのポイで鮒を?」「無理だろ」「茜に二百圓」「水晶のにーちゃんに二百圓」「同じく三百圓」「茜に百圓」 いつの間にか、賭けも始まっている。 09 #hollytk

2015-08-29 23:31:39
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「どうやら有名な店のようですね、ここは」 「あたしの親父がやってた頃からこの店はこんな感じだぜ」 「なるほど、名物というわけですか」 私は店主との会話を打ち切り、緋鮒とポイに集中する。 周囲の音が遠ざかり、鮒の泳ぐ水音がはっきりと聞こえる。 10 #hollytk

2015-08-29 23:33:14
@hiiragi_r_t_d

こうして丹念に観察すると、なるほど家族というだけあって店主に似て元気が良い。 じゃれあっているもの、一匹で泳ぎ回るもの、底の方でじっとしているもの、水面から私をじっと見つめているもの…… 中には目が三つあるものや、尾が二股に分かれているものもいる。 11 #hollytk

2015-08-29 23:35:17
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私は水面をふらふらと泳ぎ回る一匹の緋鮒に目をつける。 右へふらふら、左へふらふらと定まらない軌道が、狙い定めた一点と交差した瞬間……………左腕を差し込む。 12 #hollytk

2015-08-29 23:39:27
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ポイを斜めに鮒の下へ。ポイに張られた紙ですくうのではなく、枠全体で鮒の体を支える。異常に気付いた鮒が暴れ出すよりも前に、その紅い体は空中に跳ね上げられていた。 13 #hollytk

2015-08-29 23:41:15
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「よっ、と」 私が店主…茜さんに差し出した木桶の中では、緋鮒が憮然とした様子で泳いでいた。 「うおおおおおおお!」 周囲から歓声が上がるなか、私は緋鮒を水槽に返す。 「金魚を返したら半額、ですよね?」 14 #hollytk

2015-08-29 23:47:10
@hiiragi_r_t_d

「あっ、ああ、そうだ。よくうちの金魚をすくってみせたな!おたくで三人目だよ!」 よくもまあ、そんな難易度で金魚すくいを名乗っているものだ。 「さて、用は済みましたね」 コインはあと一枚。どの店に使うか、慎重に考える必要があるだろう。 15 #hollytk

2015-08-29 23:48:27
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「とりあえず射的はないとして……」 「うう……まじかよ……」 「言い出したのはカスカの方じゃないですか」 意気消沈するカスカを見て、私はふと気になった事を口に出す。 「カスカは、縁日にはよく来ていたのですか?」 16 #hollytk

2015-08-29 23:49:11
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「毎月どこかしらのお祭りに遊びに行ってたぜ」 「よっぽど暇だったのですね」 「うっせ。………いっつも家には誰もいねえからさ。ダチと一緒に行ってたんだ」 「そうですか。……友達、ですか。」 「アイズミは友達いなさそうだよな」 「まあ、否定はしません」 17 #hollytk

2015-08-29 23:50:11
@hiiragi_r_t_d

「ホントにいなかったんだな……」 「私がカスカくらいの頃は、毎日病院通いでしたから」 「病気だったのか?」 「唯一の友人が、ずっと入院していたのですよ。彼女を見舞いに行くのが、私の日課でした」 「それが………ユキさんか?」 18 #hollytk

2015-08-29 23:51:50
@hiiragi_r_t_d

「………ええ」 「ユキさんの話、もっと聞かせてくれよ」 「何故ですか?」 カスカの瞳には、決意の色が見て取れた。 「…知りてえんだ。アイズミのこと」 その言葉に潜むのは、好奇心よりも深い、ナニカ。 19 #hollytk

2015-08-29 23:52:35
@hiiragi_r_t_d

「………なるほど」 思えば、他人にユキの話をするのは初めてかもしれない。 「あまり上手く話せるとは思えませんが、少しづつ整理して、聞かせてあげましょう。 まず最初に断っておきますが、ユキというのは私が付けた渾名です。」 20 #hollytk

2015-08-29 23:53:07
@hiiragi_r_t_d

「ユキの本名は、ほづみ…八月一日 幸穂。 私の、この世で……いや、あの世も含めて一番大切な人です」 21 #hollytk

2015-08-29 23:54:04
@hiiragi_r_t_d

──────── 【三十四日目】 【残り百圓】 【魂+1】 【魂15/力10/探索6】 【異形】複口(力+2、探索+1)、長指(力+1、探索+2)、鬼腕(力+5)、竜尾(力+5)、半透明(探索+3、力-3) 22 #hollytk

2015-08-29 23:54:24
@hiiragi_r_t_d

[縁日]水槽では、赤や黒の金魚が忙しなく泳いでいる。「活きが良いだろ?君にすくえるかな」《異形『鱗/氷鱗』『長指』のどれかがあれば成功、なければ「賽子」を使い奇数が出れば成功【魂+1】/-100圓》 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/553567 #hollytk

2015-08-29 23:54:44