フォロウ・ザ・コールド・ヒート・シマーズ #2
周辺の追い剥ぎをクリアしたのち、シスターズは横倒し車両を力を合わせて復帰させようと苦闘し始めた。車両を横転させた当の本人は、ヘルメット越し、ミラー越しにそのさまを一瞥したのみ。唇がバカにしたように歪んだ。ホット・チックだ。ナビの中年女性が窓から身を乗り出し、親指を下向けた。23
2015-08-29 01:16:20「二億は無理だ。諦めな」彼女、すなわちホット・チックのナビであるサンダリイ・ライラはつまようじで歯をせせり、ホット・チックに助言した。「条件が厳しすぎるからね。とにかくアタシらは、野郎が地雷を片っ端から爆発させて走った後を安全に行く。わかるね」「ええ、わかる」「いい子だ!」 24
2015-08-29 01:21:01「荒れ模様だな。オヌシの言う通り」ニンジャスレイヤーはデッドムーンに言った。「オヌシの目指す物はこの先にあるか?」「さあね」とデッドムーン。「しかし、なにがしかの真実は手に入れる。必ずな」彼はカセットテープを差し替えた。ギュウイー、ブッダコスモス……ユーアーインザスペース。25
2015-08-29 01:27:56「荒れ模様だな。オヌシの言う通り」ニンジャスレイヤーはデッドムーンに言った。「オヌシの目指す物はこの先にあるか?」「さあね」とデッドムーン。「しかし、なにがしかの真実は手に入れる。必ずな」彼はカセットテープを差し替えた。ギュウイー、ブッダコスモス……ユーアーインザスペース。25
2015-08-30 22:50:03「さあ、なかなかに壮絶なぶつかり合いが発生した事だ!」ビッグユージがリタイアした車両リストのパンチシートを確認し、満足げに溜息をついた。「フラストミチ・マレナ=サンのいい仕事。残念ながら1000万ポイント獲得直後にニンブル999も死んじまったンでアレだが」 26
2015-08-30 22:54:40モニタには旧産業道路をスタンピードじみた熱狂砂塵レースカー群が走る様が映し出される。壮観……そして早速ファストウインドがトマホーク型バンパーでスターセンチピーダーのドライバーをドアごと切断して殺しリタイアせしめた。「宙に浮いたポイントは観客の皆さんに抽選で配布だ。安心して!」27
2015-08-30 23:00:30「ワオオーッ!」「コロセー!」観客が湧いた。ナムアミダブツ!観客にとっては多くのレーサーが死んでもそれはそれでおこぼれのポイントに預かれる確率が上がるのだ!「旧産業道路を選んだ連中は地雷の危険が無い!だけど、ひとたびネオサイタマを離れれば、安全な土地なんてないぜ!見てくれ!」28
2015-08-30 23:05:38ギュアアアア!デッドムーンは驚くべきハンドルさばきでロットンストリーマーの毒液バンパー体当たりをドリフト走行で躱し、グリップを戻しながら車体後部で殴りつけた。「グワーッ!」……スピンするロットンストリーマーのボンネットと燃料タンクに銛が突き刺さった。引火爆発!KABOOM! 29
2015-08-30 23:08:24「アバーッ!」火を噴いたのは燃料タンクのみならず、毒液もまた可燃性であったため、ロットンストリーマーはアワレ火の車と化した。「ヒーハハー!」「イーピピー!」ナムサン!傾斜を駆け下りて道路に向かってくるサイボーグ馬の集団を見よ!「来たぞ!レーサーレイダーズだ!」とビッグユージ。30
2015-08-30 23:10:11「奴らは野盗の集団だ。ロットンストリーマーの毒液バンパーは、敵の車に突き刺して車内に毒液を注入するヒデエ武装だったが、奴らのハープーン攻撃を防ぐ役には立たんわな。ナムアミダブツ!」「野蛮人の掃討にボーナスをあげるわ」フラストミチ・マレナが言った。「一匹150万ポイントよ」31
2015-08-30 23:14:38デッドムーンはアクセルを踏み込み、ギアを切り替える。「……だそうだ。どうする、旦那」助手席のニンジャスレイヤーを見る。腕組みをしたまま、動かない。「……だよな。安いニンジン……」ネズミハヤイは一気に加速し、レイダーズも、レイダーズと銃撃戦を開始した後続車両も、引き離す。 32
2015-08-30 23:17:55「ワーオ!高貴な走りだね!」ビッグユージが言った。「ポイントおかまいなし!ちょっとナメてるかもな?」「鼻っ柱の強い男は好きよ」フラストミチはサイバーボーイのわき腹をまさぐった。「さあ、一方レイダーズをガンガン殺ってるのはアーミーセヴンだ!見てくれ!あの重武装!何しに来た?」 33
2015-08-30 23:20:23「ホーッ!ホーッ!」BRRRT!アーミーセヴンのクルーは装甲タイル補強車両の後部座席からアサルトライフルを突き出し、レイダーズを撃ちまくる。「アバーッ!」「アバーッ!」「アバーッ!」「ハッハー。他のレーサーを殺傷兵器で攻撃するのは反則!奴らフラストレーション解消してるな!」34
2015-08-30 23:23:46「彼らは、いわば市場の潤滑油!」キンキー・コウイチがパンプアップした。「細かい殺戮があればこそレースの大目的も輝く。プランクトンの豊潤な海にこそマグロあり。少額取引の海からビッグディール一本釣りを掴みとれ!」「流石の意見だ。おっと、アーミーセヴンはついにコースアウトか!」35
2015-08-30 23:29:23「ヒーハー!」BRRRT!装甲車両は斜め後ろに道路を逸れ、悲鳴を上げて総崩れのレイダーズを殺戮してゆく。「ポイントに目がくらんでるな!でも気をつけて。あまり調子に乗ると……」KRA-TOOOOM!装甲車両が突如爆発した。キュルキュル……高台で戦車が後退した。「あれが<主>だ」36
2015-08-30 23:34:51インガオホー!ハシリ・モノはあくまで自動車レースなのだ。それを忘れてはならない。「<主>に乗っている奴は気の狂った100歳の爺さん、熱狂的なレースファンらしいぜ。特にこのレースで奥ゆかしくない奴を見ると砲撃する事で有名!皆も気をつけな!」「楽しいわ」フラストミチが笑う。 37
2015-08-30 23:38:15「さあ、そして旧産業道路エリアも佳境。先頭争いは……オーッ?武装霊柩車ネズミハヤイDIIIとサイサムライのサイバギーの一騎打ちか?」「ワオオーッ!」「勝者に1億ポイント。破壊し殺害した場合2億5千」キリング・マキが低く言った。「なんとデカくお出しになる!」ビッグユージが歓喜!38
2015-08-30 23:43:12SLAM!ネズミハヤイDIIIとサイバギーは衝突を繰り返す。ルーフが展開し、サイサムライがゆっくりと上へスライドして姿を現す。そしてネズミハヤイに向かってオジギをした。「ドーモ。ニンジャスレイヤー=サン。サイサムライです」「ドーモ。ニンジャスレイヤーです」既に彼は瓦屋根の上。39
2015-08-30 23:49:41ギュアアアア!道路上の廃車をネズミハヤイとサイバギーはハンドル操作で回避。しかし車上でオジギする二人は振り落とされはしない。何たるニンジャバランス感覚のなせるワザか!「ネズミハヤイの上に、イチロー・モリタが上がってる!もう一方はサイサムライだ!ハハア、アクロバティックな!」40
2015-08-30 23:53:34「ここで会ったが百年目」サイサムライは睨んだ。ニンジャスレイヤーのハンチング帽の下で、「忍」「殺」のメンポがギラリと陽光のかけらを受けた。「奇遇だな、と、まずは言っておこう」「フン……」サイサムライはサイサムライケンをイアイめいて構えた。ニンジャスレイヤーはカラテを。41
2015-08-31 00:00:30再び廃車だ!ギュアアアア!二つの車両は一端離れ、再び近づいた。両者にカラテが漲り、眼光がぶつかり合って物理火花を散らさんばかりだ。「このレースは……」ギュアアアアア!再び廃車だ!二つの車両は離れ、再び近づいた。「オヌシは……」ギュアアアア!亀裂を回避!二者は車内に戻った。42
2015-08-31 00:02:40「フー……用事は済んだかね」デッドムーンはコブチャをすすり、助手席窓から車内に滑り込んだニンジャスレイヤーを見た。「うむ」ニンジャスレイヤーは頷いた。デッドムーンはサイバギーの体当たりを躱しながら呟く。「アイサツは大事かい……やりあわなかったな」「これはオヌシのイクサだ」43
2015-08-31 00:05:25