黄昏町(柊)三十五日目

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@hiiragi_r_t_d

【三十五日目】 【残り百圓】 【魂15/力10/探索6】 【異形】複口(力+2、探索+1)、長指(力+1、探索+2)、鬼腕(力+5)、竜尾(力+5)、半透明(探索+3、力-3) #hollytk

2015-08-30 18:23:28
@hiiragi_r_t_d

私はカスカに、ユキについて話していた。 「…という事がありました」 「ふむふむ」 「あとは………二人で花火大会を見に行った事もありましたね。VIP席は混むのでホテルの屋上に桟敷を作らせたんですよ」 「馬鹿みたいだな」 「その後はツアー客に人気らしいですよ」 01 #hollytk

2015-08-30 18:24:16
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「花見にも行きましたね。奈良に山桜の綺麗な山をいくつか買って」 「もうツッコまねえぞアタシは」 「ユキの病棟からは桜が見えなかったので、とても喜んでくれました」 「へーへー、さいですか。で、アイズミは?」 「はい?」 「アイズミはその時、何してたんだよ」 02 #hollytk

2015-08-30 18:26:01
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思わぬ質問に、私は言葉に詰まる。 「アイズミ、さっきからユキさんの事しか話してないぜ?」 「言われてみればそうですね」 「アタシはアイズミの話も聞きてえな」 「はあ……つまらないですよ?どこそこでいくら稼いだとか、そういう話ばかりになりますし」 03 #hollytk

2015-08-30 18:28:05
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「別にいいだろ?」 「まあ、いいですよ。ですが企業秘密の絡む話もありますから、他言無用に願います」 「マジかよ………」 「ところでカスカさん、カササギ社って分かりますか?」 「いや、知らねえ」 04 #hollytk

2015-08-30 18:30:15
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私は溜息をつく。カササギ社は業界では有名なベンチャー企業で、人工知能の開発が主事業だ。 「まあいいです。そのカササギ社ができたばかりの頃、私が少しお金を出したんですよ」 「少し?どうせアタッシュケースで運ぶような額なんだろ?」 05 #hollytk

2015-08-30 18:32:12
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「いえいえ、この時は本当に少し。封筒で済む程度ですよ。そのお金を社長が何に使ったと思いますか?」 「えー……やっぱパソコン買ったりするんじゃねえの?」 「社員全員を焼肉に招待したんですよ」 「ふざけてるだろ」 「でもそんな会社が結果を出してるんですよね」 06 #hollytk

2015-08-30 18:34:10
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「わけわかんねえな」 「人の上に立つ、というのは大変なことなのです」 「アイズミは部下とかいなかったのかよ」 「うーん、部下、と呼べる人はいませんでしたね………そのカササギ社から引き抜いた有能な執事がいますけれど」 07 #hollytk

2015-08-30 18:36:10
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「執事かー。やっぱ金持ちだな!」 「私がこの町でゆっくり羽根を伸ばせるのも、留守を任せられる彼女がいてこそです」 彼女は元気にしているでしょうか。……まあ風邪を引く姿なんて想像も出来ませんが。 「そいつ、アイズミの事心配してるんじゃねえの?」 08 #hollytk

2015-08-30 18:38:13
@hiiragi_r_t_d

「うーん、どうでしょうか?彼女は私に対してドライな所がありますから…」 同族にしか心を開かない、少し臆病な奴なのだ。 「もしこの町を出てから機会があれば、私の屋敷に来てみますか?」 「いや、アタシみたいな小娘が行っていい場所じゃねえだろ」 09 #hollytk

2015-08-30 18:40:08
@hiiragi_r_t_d

「いえいえ、むしろ大歓迎ですよ。来客がほとんどない上に私もいつも出掛けてばかりで厨房も暇そうですし、たまには働かせないと」 「厨房もあるのかよ……ま、気が向いたらな」 「ええ、お待ちしています」 10 #hollytk

2015-08-30 18:42:20
@hiiragi_r_t_d

話しながら歩いていると、いつの間にか縁日の外れまで来てしまっていたようだ。 提灯もまばらで、得体の知れない石碑や小さな社が並んでいる。 その奥に、小さな出店があった。 橙色のぼんやりとした灯りが、木製の屋台を優しく包んでいる。 11 #hollytk

2015-08-30 18:44:17
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「ここは………」 「ようこソ。久しぶりのお客さまだヨ。」 独特の抑揚を付けて話す小男が、私とカスカを出迎えてくれた。 周囲の竹垣や小鳥居にも一面に鬼灯が吊るされ、それらが淡い明かりを灯している。 12 #hollytk

2015-08-30 18:46:17
@hiiragi_r_t_d

とても綺麗で、幻想的な風景だ。 鬼灯の灯りに照らされたカスカが、一つを手に取って尋ねる。 「なあ、これって…」 「提灯だヨ。暗がりは危ないから買ってきなヨ。」 「へえ……提灯、か…」 私は懐の硬貨を握る。あと一枚。 13 #hollytk

2015-08-30 18:48:56
@hiiragi_r_t_d

「とても綺麗な提灯ですね」 「自慢の逸品だヨ。買っていきなヨ。」 「そうしたいのはやまやまなのですが…残念ながら持ち合わせがもうこれっぽっちでして」 私の手の中にある一枚の硬貨を見た後、小男は少し考えてから一つ助言をくれた。 14 #hollytk

2015-08-30 18:50:16
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「最後の一枚、大切にしナ。そいつを使えば、こことはお別れダ。」 「お別れ………?」 「……使えば分かるサ。」 「よく分かりませんが、覚えておきます」 「そうするといいサ。また金がある時に来ナ。」 15 #hollytk

2015-08-30 18:52:28
@hiiragi_r_t_d

不思議な小男に背中を押され、私とカスカは縁日の喧騒の中へと帰る。 「ありがとうございました……って、あれ?」 振り返ると、小男も鬼灯の屋台も消えていた。 「カスカ、鬼灯の屋台が」 「えっ……あれ…?」 少し涼しい風が吹く中、私とカスカは顔を見合わせる。 16 #hollytk

2015-08-30 18:54:15
@hiiragi_r_t_d

「まあ、この町の縁日ですからね。こういう事もありますよね」 「おっ、おう。そうだよな、うん。」 私達は頭に疑問符を浮かべながら、元来た道を歩いていった。 17 #hollytk

2015-08-30 18:56:24
@hiiragi_r_t_d

──────── 【三十五日目】 【残り百圓】 【提灯は買わず。特に無し】 【魂15/力10/探索6】 【異形】複口(力+2、探索+1)、長指(力+1、探索+2)、鬼腕(力+5)、竜尾(力+5)、半透明(探索+3、力-3) 18 #hollytk

2015-08-30 18:56:41
@hiiragi_r_t_d

[縁日]橙のほおずきが並ぶ店先。よく見ると実の中に何かの灯りがある。「提灯だヨ。暗がりは危ないから買ってきなヨ」《100圓でアイテム「提灯」を得る事ができる。今は役には立たない。》 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/553567 #hollytk

2015-08-30 18:56:56