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本作りの情熱を伝える-宮本和英さんの実例

新潮社を退職した編集者・宮本和英さんが伝える、本の作りかた、売り方についての実体験。
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宮本和英 @kazmiyamoto

実体験16 こうしたルールを決めてもそれを実行してくれる営業担当者がいなければ画に描いた餅です。雑誌営業のベテラン達は素人の僕のこのルール提案に乗り気ではありませんでした。「君がそんなことをしなくても、取次だって効率配本を心がけているんだから」と。

2011-01-07 03:40:16
宮本和英 @kazmiyamoto

実体験17 僕が提案した配本ルールは、出版社からの指定配本という事でどの出版社でも出来るわけではありません。でもS社は営業がその煩雑な作業をやってくれれば可能だったのです。つまり面倒な事をやりたくなかったのでしょう。確かに彼らの言うように雑誌に力があれば売れるはずなのですから。

2011-01-07 03:45:17
宮本和英 @kazmiyamoto

実体験18 その時僕に幸運が訪れました。週刊誌編集部から若手のU君が雑誌営業に異動してきたのです。編集と営業の人事交流が始まり彼はその第一号。U君は営業プロパーの思想に染まっていなかったので、僕の提案を素直に理にかなっていると賛同してくれ、煩雑な作業を厭わずやってくれたのです。

2011-01-07 03:51:10
宮本和英 @kazmiyamoto

実体験19 僕がU君にもう一つ頼んだのは、調査店販売データに、調査店のうち実売率100%の書店が〇%あり、実売率99~80%の書店が〇%とい79~50%の書店が〇%という表を付けてもらったのです。

2011-01-07 03:57:07
宮本和英 @kazmiyamoto

実体験20 そうやって号を重ねていくと、はっきり数字が良くなってきました。完売店が増えていくのです。勿論、編集サイドの努力も色々あったのですが、それはここでは置いておきます。とにかく完売店の占める割合が確実に増えていき、全体の実売率も着実に上がって行きました。

2011-01-07 04:03:59
宮本和英 @kazmiyamoto

実体験21 つまり雑誌に力がある(「いい芽」がある)ということを、配本ルールを厳格に適用することで目に見える形(数字)にして見せた訳です。雑誌に力があっても、その「いい芽」を見ようともしない連中は、簡単に「雑誌に力がなかったんだ」と決めつけてしまうのです。

2011-01-07 04:10:32
宮本和英 @kazmiyamoto

実体験22 最初は僕だけが気付いた「いい芽」を、多くの人達が認め始め、売れていきそうな雑誌に、書店も取次も営業も広告部も乗ってくれるようになりました。良い方向へ雑誌が回転し始めたのです。この一連の成功は、U君が煩雑な作業を厭わずにやってくれたことに尽きます。彼に感謝でした。…続く

2011-01-07 04:20:04
宮本和英 @kazmiyamoto

実体験B アントニオ猪木さんが引退した時、僕は「猪木寛至自伝」(文庫版「アントニオ猪木自伝」に改題)を出しました。その初版部数を決める際に、営業は〇千部と言います。僕は〇万部と考えていたので、その開きの大きさに吃驚し、〇千部の理由を聞くと、過去の猪木関連本の実売数を調査してみて…

2011-01-08 01:32:51
宮本和英 @kazmiyamoto

実体験B 過去の関連本の実売数を調査してみて一番売れていなかった本の数が〇千部だからだという。「営業的に分析してみた結果だ」と言われた。その言葉にカチンときた。それは分析ではない。猪木さんが遂に引退し初めての自伝という要素は考慮されず、誰が書いたか知らない売れなかった本が基準?

2011-01-08 02:20:37
宮本和英 @kazmiyamoto

実体験B 勿論、今まで経験のない本の部数をどうするか、類書を基準にするのは当然ですが、それで済ませてしまうのではなく、そこからその本の企画のプラス要因、マイナス要因を挙げて検討すべきことだと思います。 類書の実売数の最低数を基準にするのがルールならもう自動的に決めればいい…

2011-01-08 02:25:09
宮本和英 @kazmiyamoto

実体験B 営業としての判断はないのと同じことになります。ただ自動的に「類書の最低部数を、わが社の初版部数とします」と宣言して終わりでしょう。その時は最終的に私の要望に近い部数で決まりましたが、必死でとってきた企画を凄く貶められた気持ちンになったものです。そういうっことを重ねて…

2011-01-08 02:28:36
宮本和英 @kazmiyamoto

実体験B そいうことを重ねていくと、だんだんやる気がなくなっていくのが人の常ですね。しかし本の初版部数を決めること一つとっても、仕組みとしていい形になっていない、一か八かになってしまった出版事業の仕組みがダメになっているのだと思います。

2011-01-08 02:31:22