【鬼の章：第1幕「暗夜異変〜Kingdom at night】#2

東方鬼翔天血 @ki_syo_ten_ketu

ディウムはメトラを介して溜め息をついた。『俺達、魔界虫は必要な魔力分の獲物しか喰わない。しかし奴は無作為に食い荒らしている』「魔界で駆除されるのが恐ろしくて此処に逃げ込んだ。ハン……卑怯で小物な蜘蛛だ」「そういうわけだねェ」いつの間にか二人と一匹の後ろに、男がいた。47

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『貴様は……ジェイダー……！』「おおっと待ちな。今日の俺の獲物はお前じゃないぜディウム」『……どういうことだ』「その顔からして、アンタ重要な任務でも請け負ったのかよ」ジェイダーは深刻な顔で言った。「……神綺様から直々に駆除命令が出たさ」『なん……だと？』48

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「あのヘルズに？いよいよ奴も終りかよ、ファッキン蜘蛛野郎」『まさかあの方が……』「そういう訳だ。アンタ等もヘルズを狙ってるんだろう。今回の異変、奴も間違いなく絡んでいる筈だ。共闘戦線といこうぜ？」『……信用に値できん』「……私は別にいいけどぉ？」「……切り替え早」49

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ジェイダーは苦笑いをした。「手厳しい。じゃあ、条件を設けよう。此の異変の後、俺はお前を付けねらわない、いいか？」『……本当か？』「何せこっちも首がかかってる。しょうがないね」『……いいだろう。共闘戦線を張ってやる』「OK!交渉成立だ。さて、どうするかい？」50

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『顔見知りだ。誰か一人が奇襲を仕掛けるのが良さそうだな』「ならぁ、私とディウムちゃんで言って攻撃すりゃぁいいんじゃないのぉ〜？」「……その隙にジェイダーさんが奇襲を仕掛ける」「OK、いい作戦だ。こっちもテンションがネバーギブアップしてきたね！」「……使い方違う」51

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「んっふっふっふ……あぁ、最高だ。特に女子供は悲鳴を上げて死んでゆくから、より味わいが深くなる……」ヘルズは子供の首を掴み、一気にねじ切ると吹き出た血を浴びて飲む。しぶきに塗れても人形のような人、宿主の兵士の目は死んだままである。「くふふふ……これは最高のディナーだ」52

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『……デビルシザーッ！』「！」突如上から降り注いだ鋏の攻撃にヘルズは飛び退いた。降ってきたのはサソリと、小さな少女。「死に晒せゲス蜘蛛！血符「レイブラッディシャワー」ァァッ！」間髪入れずヘルズの両側面から迫る赤い弾丸。『ヘルズ！貴様……またしてもこのようなことを』53

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「ん……？あぁなんだ、今でも魔界虫の規則に従っている哀れな蠍じゃないかね？」『……言ってくれる。魔界虫の種の尊厳に傷をつけた貴様が……』「尊厳？喰えるものを喰わず、喰わなければならない時に喰うなんていう、小的な考えをしている君が何を言っているのかね……？」54

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『……御託は抜きだ。俺個人の感情も含め、そして魔界虫全体……そして魔界全体の総意は、お前を殺す事だ』「そういうことだ。観念しろッ、クソゲス蜘蛛が！」「……そうだ！」メトラが叫び、エリンナが叫び、ディウムは再びデビルシザーを放った。「……フン、下等種め」ヘルズは嘲笑した。55

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「うるせェッ！あんたの所為で魔界が死にかけてるんだよ！」「知らんなぁ。私の所為で魔界が滅ぶ？ククク、何を根拠にそう言っているのかねぇ？もっと嘘をつくならマシな嘘をつくとよいだろう」ヘルズは嘲笑したあと、メトラと同じような、宿主を動かし、持たせた銃を発砲させた。56

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『メトラ！』「……！」メトラは両腕から作り出したエネルギーボールを銃弾に直撃させ、その衝撃で後続の銃弾を落した。「……ほう？エコ蠍くんの人形は良い働きをするねぇ」『……メトラは貴様の使う人形とは違う。そして、人形でもない』「おいおい困るなぁ、私のも人形ではないのだがね？」57

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『黙れ、貴様のは只の人形だ』「やれやれ、頑固な蠍め。ならば証拠を持ってみせてやろうじゃないか」「……ス......ケテ……」兵士が、喋った。『！ま、まさか貴様』「……惨い事するわね」「ククク、何を驚いているのかね？同じ、人間じゃあないか」『……貴様ァァ！』58

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ディウムがデビルシザーを乱射する。合わせてメトラもまた、エネルギーボールを作り出し送り込む。「……ユルさねぇ、ゴキブリ以下のゲロカス蜘蛛が！血符「ジ・ブラッディ・エンパイア」ァァァっ！」叫ぶ。カードを切り、エリンナは赤い光線を乱発した。ヘルズは、動かない。59

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「……オフ・シュート」ヘルズがそう呟くと同時に、ヘルズの姿が消える。いや厳密には、ディウム達の後ろに移動したと考えた方が良い。『なんだと』「ディウム！」「後ろががら空きだぞエコ蠍！」ヘルズの放ったエネルギーボール、それをメトラがディウムを庇って攻撃を受けたのだ。60

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『め、メトラ！貴様ァっ……！』「んん？何を怒っているのか私にはわからないのだが。そこの君の人形が、もう無い人情を働かせただけだろうよ、何を怒る？」「で……ディウム……私は……大丈夫……だからッ！」『メトラ……あぁ、分かった』ディウムは、心を決めた。61

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ディウムは叫んだ。ジェイダーもまた、木の上でそれを聞いていた。『ヘルズ、改めて言おう。貴様をこの世から消滅させる。ただ殺すだけでは物足りない、魔界の総意はそんなものを望んでいない。——ヘルズ！貴様の悪運もここまでだ、この楽園の地で滅べ！』「……フン！」62

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