黄昏町(柊)四十九日目

柊 @hiiragi_r_t_d

【四十九日目】 【魂17/力10/探索6】 【異形】複口(力+2、探索+1)、長指(力+1、探索+2)、鬼腕(力+5)、竜尾(力+5)、半透明(探索+3、力-3) #hollytk

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「ああ……渇く」 私は飢えていた。知らない事実。見たことのない異形。そういうものが、今の私には圧倒的に足りない。 昨日までは寝る事で誤魔化していたが、あまりに眠りすぎたのか今日は欠片も眠気が無い。 01 #hollytk

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「こんな時にカスカがいれば…」 話しても良し、バラしても良し。本当に彼女は、良い暇つぶしだった。 「っと、そんな事を言っても仕方がないですね」 カスカを独り立ちさせようとしたのは私だ。知識を教え、心得を教え、考え方を教えた。 02 #hollytk

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結果的に外的な要因(具体的に言うならば2tトラック)によって離れ離れになってしまったが、カスカもきっとこの町のどこかで元気にやっているだろう。 「自分の楽しみは自分で見つけないといけませんよね」 幸せは歩いてこない。こちらから探しに行って、見つけなければ。 03 #hollytk

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「おや、あれは……？」 ぼんやりと思考を巡らせながら歩いていると、高い壁が見えてきた。ブロック塀などよりずっと頑丈に見えるコンクリート壁が、向こうの角まで伸びている。 高い壁の先に何があるのか、うかがい知ることは出来ない。幾筋もの高い煙突が天を突いていた。 04 #hollytk

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私は左手で拳を作り、軽く壁を叩いて感触を探る。 「流石にこの壁は破壊出来ないでしょうね……」 逆に私の拳が砕けそうだ。 私はとりあえず、この謎の施設の周りをぐるりと一周して様子を見ることにした。 05 #hollytk

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施設自体はさほど大きいものではなく、狭い敷地にぎっしりと設備が詰め込まれている印象がある。 出入口は一つだけ。重たい鉄の門扉はきつく閉ざされている。 「ううむ、この門も駄目ですか……」 門扉を撫でる左手の長い指先に、何かの凹凸が引っかかる。 「おや……？」 06 #hollytk

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一歩離れ、全体を見ると扉の一部にうっすらと凹凸が走っている。 その凹凸が描く長方形は、ちょうど人間一人分ほど。 「なるほど、通用門」 通用門は、門扉よりも簡単に開くはず。 私は表面の錆を払い落とす。 しかし通用門には、小さな鍵がかかっていた。 07 #hollytk

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「鍵、鍵、鍵………」 私は頭をガリガリとかく。結晶化した髪の毛が指とこすれて、硬質な音を響かせる。 「………もしかして」 私は髪を一本引き抜く。引き抜かれた髪は硬さを失わず、針のように鋭く尖っている。 08 #hollytk

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曲げるとあっさり折れてしまうので戦闘には使えそうもないが………ピッキングくらいになら、使えるかもしれない。 私は髪をもう一本引き抜くと、両手で慎重に操り始めた。 左手の長い指は器用に動き、古びたサムターン錠のロックを少しずつ解いていく。 09 #hollytk

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カチリ……………カチリ……カチリ………ガシャン。 完全に錠前破りに成功した私は、肩をバキバキと鳴らす。 「ああ、やっと終わりました」 ピッキングは始めてだったが、何でもやってみるものだ。 私は錆び付いた通用門を苦労して開けると、中に足を踏み入れた。 10 #hollytk

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内部は思ったよりも荒廃が進んでいない。路面のあちこちからは雑草が生えているが、ガラス窓にも壁面にも破壊の痕跡はない。 「まるで安全地帯ですね」 私は工場の大きなドアをくぐる。 エントランスからは直線の通路が作業区画へ伸び、事務室と食堂が設置されている。 11 #hollytk

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「眠れる場所……というと、仮眠室でしょうか」 私は今晩の寝床を求め、事務室の更に奥へと進む。 そこだけ埃の積もっていないドアを開け、覗き込んだ部屋には高級そうなソファと机。そして部屋の中央に置かれた、部屋の調度から明らかに外れたキングサイズのベッド。 12 #hollytk

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ベッドはこの町がこうなってから運び込まれた物なのだろう………しかし私の関心は、そんなところには欠片も、微塵も向けられてなどいなかった。 もしここが堅牢な壁の内側でなければ、二度死んでなおお釣りがつくほどの不注意、無防備、放心状態。 13 #hollytk

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「おお……神よ………感謝します……」 ベッドの上には、ここに来た同類たちが捨てていったのであろう異形の抜け殻が、大量に積み上がっていた。 14 #hollytk

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それからの私の行動は言うまでもない。 捨てられた蛇髪を一本一本観察し、毛皮の毛並みや手触りを堪能し、角の内部を観察した。 「ああ…幸せだ…」 スケッチブックを持っていた事も幸いした。私は落ちていた爪で鉛筆を削り、無我夢中でスケッチブックに書きなぐった。 15 #hollytk

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結局私の観察は、日が沈んで意識を失うまで続いた。 16 #hollytk

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──────── 【四十九日目】 【生存】 【魂+2】 【魂19/力10/探索6】 【異形】複口(力+2、探索+1)、長指(力+1、探索+2)、鬼腕(力+5)、竜尾(力+5)、半透明(探索+3、力-3) 17 #hollytk

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[町]高い壁の向こうに廃工場が見えている。どうにかして入れれば、安全な寝床になりそうだ。《探索2以上で発見【魂+2、不要な異形を1つ捨てることができる】、探索1以下で失敗【魂-1】》 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541547 #hollytk