水槽赤葦くん

独狗🐕疲れた🥓 @_h4i_t1o_k5u_

side赤葦 初めて彼を見たとき、初めて会ったとは思わなかった。 今まで体操座りで、じっと分厚い硝子と水に閉じ込められてて、出たいとすら思えなかった。 けれど彼を見た瞬間、体が勝手に彼の元へと動いた。硝子に手を当てて俺を眺める彼。その手に自分の手を重ねてみた。 しかし分厚い硝子

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越しじゃ彼の体温など届くわけもなくて。 俺を纏う水が煩わしくなった。水をとどめる分厚い硝子が忌々しかった。 「木兎さん」 口が勝手に動いた。今日は変な日だ。 水の中でそう叫んでも、彼の耳には届かなかったようで、彼は眉を寄せた。 少し寂しげな顔をした彼は

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「＊＊＊＊」 と何かを言って微笑み、俺に手を振った。

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side木兎 俺が生まれる前からある水族館。その日は暑くて、調度体育館も修理で部活がなくなってしまったから、バレーのチームメイトとそこに訪れた。 閑散とした水族館に大男が数人。久々の水族館に少しテンションが上がる。 深海コーナーと題されたスペースへ入る。深海ってだけあってやはり

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暗い。その薄気味悪さに知らず知らずに歩調が早くなる。 出口が近づいて「よし。」と思ったのも束の間、俺は１つの水槽に引き寄せられた。 「アカアシ…？」 俺は何故か彼をそう呼んだ。 水槽の隅に体操座りで座る魚…。いや、あれは間違いなく"ヒト"である。しかし、そのことに何の疑問も

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持てなくて、ただ"ヒトが水槽にいる"という事実が美しかった。 思わず硝子に手をつけた。 俺に気がついた彼は硝子越しに俺の手に手を合わせた。 「＊＊＊＊＊」 彼の口が動いた。その唇には確かに「ぼくとさん」と音を乗せていて、なぜ俺の名前を知っているかと不思議に思った。

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「ぼくとー、次行くぞー」 仲間が呼ぶ。 もう少し彼を見ていたい。けれど仲間に置いていかれてしまう。葛藤の末に 「また来る」 と告げて彼に手を振った。 彼の寂しげな視線が、酷く背中に突き刺さる。

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@hitoku_415 原案：青るい 様 水槽赤葦くん素敵だったので書かせていただきました。 不愉快でしたらいってください、全力で消します(>_<;)