ソーマト・リコール・オブ・サブスティテュート
- EVO_Hitachi
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最初に野球で人を殺したのは、コウシエン球場でゴーエン・カミシモが通算100本目の場外ホームランを打った日だった。俺のグローブを外す手は、信じられないほど震えていた。 1
2015-09-15 21:50:57頭に167キロのストレートを食らった相手チームの四番打者は、病院でその日の夜中に死んだ。俺はその報せを聞いてロッカールームで首を括り、サブスティテュートが生まれた。2
2015-09-15 21:53:09それから俺はほどなくアマクダリに拾われた。リリーフとして、先発として、中継ぎとして、俺は沢山の選手の名前とキャリアを食い潰し、ニンジャ投球力であらゆる人間を殺した。サブスティテュートではなく、可哀想なボーク投手として。3
2015-09-15 21:55:53暗殺野球のプロになって、失った物は多かった。自慢のストレートをキャッチャーミットに叩き込んだ爽快感、バッターとの読み合いに勝った時の達成感、完封勝ちした俺に抱きつくチームメイト、ビール掛け。4
2015-09-15 21:58:52大好きな野球を血で染めても、俺はマウンドから下りる気はなかった。……フォートレスが、ハイスクール時代の相棒がいたから。まさかアイツもニンジャになっていたなんて。5
2015-09-15 22:01:58フォートレスが相棒になって、暗殺野球は孤独じゃなくなった。切り札以外はどんな球でも安心して投げ込める。上手く行った日には、ふたりして部屋で祝杯をあげて、笑う。6
2015-09-15 22:05:08中身までハイスクールに戻っちまったのか、俺たちは、ある計画を立て始めた。最強のバッテリーなら、きっと、ネオサイタマの死神すらノーヒットノーランでジゴクへ送れると。8
2015-09-15 22:11:11そして、今日がその試合、俺にとっては最後の試合。随分長かったようで、アイツが俺と向き合ってくれてからは、あっという間だったようで。9
2015-09-15 22:14:05ぼんやりしていた俺の背中を、フォートレスがどやす。もうすぐ約束の時間だ。ポケットにZBRを忍ばせた俺に、フォートレスが渋い顔をした。10
2015-09-15 22:16:29できれば使うな、だろ? 分かってるよ。でもな、これが俺の暗殺野球最後のマウンドだ。だから、必ず勝たなきゃならない。この試合で引退して、そのあとは貰った報酬で、お前と、野球に関わりながら…… 11
2015-09-15 22:20:48止めた。あんまり見てるとバレそうだ。もしかしたら、もう、俺の気持ちなんかとっくにこの手を離れて、アイツが受け止めてるかも、しれないけど。12
2015-09-15 22:23:20