安保法制成立後に政治がすべきこと

昨日つらつらと考えたこと、備忘録代わりにまとめました。
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nobu akiyama @nobu_akiyama

さて、安保法案が参議院を通過したわけですが。まあ、間の悪いことにこういう大切な時に東京にいないのでその空気を感じることができませんでした。だいたいいつも大きな事件が起きたとき、日本にいないんだよなあ。阪神淡路大震災、サリン事件、東日本大震災…そのおかげで少し醒めた目で眺める(続)

2015-09-19 11:50:04
nobu akiyama @nobu_akiyama

(承前1)ことができたように思います。ちょっと乱暴に評してしまうと、与野党で印象操作のゲームをやって、ゲーム自体は野党が優勢だったんですが、結果として力で与党が押し切った、という感じでしょうか。法案の実質的な内容について違憲が深まらなかったことは、今後に大きな禍根を残す(続)

2015-09-19 11:52:04
nobu akiyama @nobu_akiyama

(承前2)のではないかと心配しています。反対派の皆さんは、違憲は違憲なんだから駄目じゃないかというかもしれませんが、そういう方々にどの程度、これからの世界における日本の外交・安全保障戦略についてのビジョンを語ってきた方がいるでしょうか。従前の平和主義の主張はあっても(続)

2015-09-19 11:54:11
nobu akiyama @nobu_akiyama

(承前3)それ以上の議論の深みは、残念ながらあまりなかったように思います。この憲法の下で存在してきた平和主義ですが、国際政治の視点からすると、これまでの平和主義は日本が守ってきたのではなく、日本がそれを守ることを許容する国際環境の中に日本があったと表現する方がより適切(続)

2015-09-19 11:56:27
nobu akiyama @nobu_akiyama

(承前4)だと思われます。僕の好きなイギリスの学者でスーザン・ストレンジという方がいました。彼女の国際政治におけるパワーを見る視点が好きなのですが、彼女は、パワーを「構造的パワー」と「関係的パワー」に分けて論じています。関係的パワーとは、国家間で相手の行動を規定する(続)

2015-09-19 11:58:19
nobu akiyama @nobu_akiyama

(承前5)能力のことです。構造的パワーとは、そうした国家間の関係(ゲーム)がどのような場で、どのようなルールでプレイされているのか、そのゲームを規定する能力を表します。つまり、いかなる国の外交・安全保障も、そのような何らかの形で規定された空間の中でのゲームであり、(続)

2015-09-19 12:00:26
nobu akiyama @nobu_akiyama

(承前6)真空の中に存在するものではないということになります。つまり、日本の戦後の平和主義というのは、こうした国際政治の構造の中に存在するものであって、日本が自律的に維持してきたわけではないと見るべきだということです。ということは、憲法第9条と平和主義と日本の不戦の歴史(続)

2015-09-19 12:02:21
nobu akiyama @nobu_akiyama

(承前7)というのは、戦後の国際政治の構造と密接にかかわっていたと思います。日本は、戦後「吉田ドクトリン(経済優先、軽武装=ちょっと乱暴かな)」の下、またアメリカの提供する市場への輸出と日本の市場の閉鎖性の確保が許容されるという、経済発展のための環境を、冷戦という構造(続)

2015-09-19 12:05:05
nobu akiyama @nobu_akiyama

(承前8)の下で維持することができたわけですね。これまで「アメリカの言いなり」と日本の外交を批判してきた方々はこの前提を完全に忘れているのではないかと思います。もちろんそうするにはアメリカにもメリットがあったので別に恩義に感じる必要はありませんが、しかしアメリカ市場(続)

2015-09-19 12:06:42
nobu akiyama @nobu_akiyama

(承前9)の開放や自国の閉鎖性を許容されていたからこそ自国の産業がこれだけ発展したという事実は、国際政治を構造的パワーの視点から見る場合に有効だと思いますね。  なんでこんな話をしたかと言うと、経済においてもこうした国際政治の構造は変化していますから、日本の(続)

2015-09-19 12:08:32
nobu akiyama @nobu_akiyama

(承前10)産業政策、経済政策は大きく変容したわけです。こうした変容が、安全保障分野においても起きているわけです。つまり、日本の平和主義の他律性と現代の国際安全保障環境の変容を考えれば、日本の安全保障政策をしっかりと国家戦略の基礎から考え直す必要があったわけです(続)

2015-09-19 12:10:24
nobu akiyama @nobu_akiyama

(承前11)ところが、今回の安保法制のプロセスでは、野党も、そして政府・与党も、そのような根本的な議論をしようとしませんでしたね。政府や与党の集団的自衛権の説明に対しては、国民はなんとなく言いくるめられているんじゃないかとの猜疑心を持っているところで、長谷部先生の違憲論(続)

2015-09-19 12:12:20
nobu akiyama @nobu_akiyama

(承前12)が決定打となって野党が勇気づけられて一挙に違憲論で安保法制を廃案にもちこもうと突っ走るようになりました。政争の戦略としてはそれはありかもしれません。しかし、本当にそれでよかったのでしょうか。今議論すべき安全保障戦略と法制度は、この数年を規定するものではなく(続)

2015-09-19 12:14:02
nobu akiyama @nobu_akiyama

(承前13)もっと長期的に国家の戦略を規定するものであり、したがって長期的、将来的な視点からの議論をすべきものであったと思います。憲法ではないですが、そんなに簡単に安全保障政策の根幹をなす法制度が変わるのは好ましくないですから。今回は、その議論の機会を逃したと言えるでしょう(続)

2015-09-19 12:16:09
nobu akiyama @nobu_akiyama

(承前14)経営学に、adaptation precludes adaptabilityという言葉あります。最適化に成功すると、新しい環境に適応する能力が妨げられるという意味ですが、まさに日本の戦後外交を表す言葉のように思います。  まあ、とはいえ国会を通過してしまった(続)

2015-09-19 12:19:35
nobu akiyama @nobu_akiyama

(承前15)わけですから、これからどうするか、ということになります。  政府も野党もやるべきことは多いです。この法律ができたら、これまでと何が一番違うかというと、朝日新聞で植木知可子さんがコメントしていたように、これまで考えずにNoと言えた状況でも、日本政府が自律的に(続)

2015-09-19 12:21:49
nobu akiyama @nobu_akiyama

(承前16)政策を選択しなければいけない状況が生まれるということだと思います。つまりこれまでどこかの国から依頼があったら第9条がありますからうちはやりませんよ、と言っていた状況でも、ちゃんとNoという選択についての合理的説明が必要になってくる。(続)

2015-09-19 12:24:07
nobu akiyama @nobu_akiyama

(承前17)…しかし長い。(続)

2015-09-19 12:24:25
nobu akiyama @nobu_akiyama

(承前18)だからこそ、本当は国家戦略であったり、原則の議論が必要だったと思いますが。まあ、いまさら言っても始まらないので、これからでもしっかりと与野党ともそういう実質的な議論を始めてもらうしかないですよね。政局のネタにするにはあまりにも重すぎる課題だと僕は思います。(続)

2015-09-19 12:25:43
nobu akiyama @nobu_akiyama

(承前19)それで、じゃあそうした政策の選択の正しさをいかにして確保していくのかということですが、僕はやっぱり国会承認の手続のためのインフラをどう整えて、その国会の手続の実効性をどう高めていくかについて、野党がしっかりと考えていくことが必要だと思います。(続)

2015-09-19 12:27:24
nobu akiyama @nobu_akiyama

(承前20)そこで見る必要があるのが、特定秘密保護法のあり方です。現在、国会議員はこの保秘義務を免除されていると記憶していますが、そのような状態で、本当に国家安全保障に関わる機微な情報を政府から国会に開示できるでしょうか。国会議員に情報開示すればメディアや世界がたちまち(続)

2015-09-19 12:29:17
nobu akiyama @nobu_akiyama

(承前21)日本の持つ機微情報を知ることにもなりかねないのが今の状況ですよね。そしたら政府は情報開示をためらいます。とすると逆に国会はそのような情報が開示されない中で、本当に責任をもって武力行使に承認を与えることができるでしょうか。僕が議員だったら与党でも野党でも(続)

2015-09-19 12:31:13
nobu akiyama @nobu_akiyama

(承前22)そんな責任負えません。とするのならば、やはり国会で安全保障上の機微な情報を扱い責任を持った議論ができる体制を整えるべきではないでしょうか。それは、政府によって開示された国家機密の漏えいは国会議員であっても罰則が適用されるようにすることが大前提になりますね。(続)

2015-09-19 12:33:09
nobu akiyama @nobu_akiyama

(承前23)その前提に加え、より高い保秘義務を課された、超党派の議員で構成される委員会(秘密会)を作り、そこで政府の要請を精査したうえで、国会全体に諮っていくような手続が必要なのではないでしょうか。それくらいのことをしないと国会承認に実効性を与えることはできなくないですか?(続)

2015-09-19 12:36:04
nobu akiyama @nobu_akiyama

(承前24)野党の皆さんは、違憲訴訟を含め安保法制は意思への政治闘争も結構ですが、同時並行でもいいので、こうした国会のチェック機能を高めるための努力もしていただかないと、本当に歯止めが利かないという状況が生まれかねないですね。保秘義務課されたら、楢崎弥之助(古い!)的手法が(続)

2015-09-19 12:37:40