【ミイラレ!第十七話:赤マント、そして決着のこと】(原文のみ)

怪異に好かれる少年と退魔師の少女がなんやかんやするお話。学校の魔女との一件、そろそろ決着。 こちらは原文のみです。実況付きはこちら→ http://togetter.com/li/879038
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鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

絶句していた外藤が、不意に表情を改める。「ケンカを止める、か。できるならやってみるといい。それができなきゃ、そもそもあの二人は君の話なんか聞かないだろ」「そうします」あっさりと返され、赤マントは再び絶句。四季はまっすぐに彼女と対峙した。「止めてみせます」24 #4215tk

2015-09-27 18:54:35
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

一瞬、図書室が沈黙に包まれた。「お、おい日条!お前」「申し訳ないんですが静かにしていてください。木野先輩」諌めようとした零冶は、それ以上言葉を続けることができない。有無を言わせぬ静かな迫力。今の四季にはそれがあった。「要は外藤先輩に納得させればいいんですよね」25 #4215tk

2015-09-28 19:27:05
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「納得……?」「俺があの屋上に行っても大丈夫ってことをです。時間がないので、手っ取り早くいきます」彼は真っ直ぐに赤マントを見据えた。「勝負してください、外藤先輩。そして勝てば、もう文句はないでしょう」赤マントが目を丸くした。やがてその肩が震え始める。26 #4215tk

2015-09-28 19:30:06
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「やれるもんなら……」彼女の周囲を漂っていた赤い紙が円錐形に変形!その切っ先がすべて四季へと向けられる!「やってみろよ!人間風情がァァァッ!」赤い穂先たちが放たれる。零冶が息を飲む。四季は避ける様子もなく迫り来る脅威を見やっている。いけない。あのままでは。27 #4215tk

2015-09-28 19:33:14
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

赤い紙は見た目によらぬ恐ろしい武器だ。生物に触れれば傷口へと変わり、金属に触れれば赤錆へ変化し武器を朽ちさせる。あれだけの量を被弾すれば、間違いなく命はない!「バカ野郎、早く」退がれ。零冶はそう言おうとした。それより早く、四季は床を軽く足で叩く。28 #4215tk

2015-09-28 19:36:09
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

その瞬間、真下から音を立てて風が吹き上がった。赤い穂先がすべて吹き散らされる。「な」その呻きは誰のものだったか。零冶がその不可思議な現象を認識したときには、すでに四季は赤マントの懐に潜り込んでいた。その手には小槌。赤マントが信じられぬと言いたげに目を見開く。29 #4215tk

2015-09-28 19:39:06
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

赤マントが辛うじて腕を差し上げ、四季の一撃を防がんとする。その防御の上を小槌が打ち据えた。空気が震える。「……うああっ!?」耐えきれず吹き飛ばされたのは赤マント!真横に飛ばされたその体が本棚に衝突……しない。その寸前で赤マントは不自然に停止した。30 #4215tk

2015-09-28 19:42:28
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「これは」赤マントは呻く。動かない。彼女はマントに貼りつく小さな糸を知覚していた。蜘蛛の糸!「おかしい。なんで……あの鬼女は気配すらないぞ!」「いますよ」四季は言う。赤マントを見据え。「ただもう表に出て戦う気力がないらしいので。力だけ貸してもらってます」31 #4215tk

2015-09-28 19:45:25
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「日条くん、あなたは……!」良子が声を上げる。彼女は悟ったのだろう。四季が何をしているかを。「ああ、はい。ちょっとズルい手段だとは思いますよ」彼はいくらかバツが悪そうに答える。「けど、今はこうするしかなくて」「そこは問題じゃありませんっ!」32 #4215tk

2015-09-28 19:48:08
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

良子が一喝する。「何体ですか?今、何体の怪異を同時に憑かせてるんですか!」「え、と」四季は一瞬考え込む。「巡さんにながれ、小雨。春……もそうか。四人ですね」あっさりと答える四季に、退魔師たちの顔色が変わった。「なんて無茶を」名雲が呆然と呟く。33 #4215tk

2015-09-28 19:51:29
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

怪異の憑依による強化は珍しいことではない。同時に複数の憑依も、まあ使いこなせる退魔師はいる。しかし精霊級の怪異二体を含む三体以上の同時憑依など前代未聞だ。普通の人間なら間違いなく霊気を吸われ尽くして死ぬ。良子は口を開こうとした。それより先に校舎が揺れた。34 #4215tk

2015-09-28 19:54:21
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

一同はハッとして天井を見上げる。先ほどよりも揺れが強い。「お説教は後で聞きます!俺はこれで!」「あ、ちょっと!」良子が止めるより早く、四季は図書室の窓から身を躍らせた。その背から黒い翼が生える。良子が窓から空を見上げたときには、四季の姿は見えなくなっていた。35 #4215tk

2015-09-28 19:57:14
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「アーハハハ!」哄笑をあげながら、宙に浮いた魔女が鉄杖を振るう。彼女の周囲を旋回していた火球が、赤い軌跡を残してTに殺到!「破ァッ!」Tは足に霊気を漲らせ跳躍。火球をくぐり抜け、撃墜しながら魔女へ迫る。そして「破ァァァーッ!」両腕の光を至近距離から解き放つ!37 #4215tk

2015-09-29 19:30:04
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

夜空を閃光が染める。しかしTは顔を歪め、空を蹴って飛び離れた。その鼻先を鋭い鉤爪が切り裂いていく。「アッハハハ、楽しい!」光の中から現れた魔女の顔を覆っていた赤い鱗が沈み込むように消えた。その右腕は肥大化し、鱗に覆われたままの異形となっている。38 #4215tk

2015-09-29 19:33:11
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「さっすがトリル!『寺生まれのTさん』とも互角にやり合える!すごーい!」屋上に降り立ったTは、無邪気にはしゃぐ魔女を見て苦い顔をする。「あー、参ったなこりゃあ。あんな抜け道があるのかよ……!」「抜け道?」カバーのために彼の元に駆け寄ったきた怜が眉をひそめた。39 #4215tk

2015-09-29 19:36:10
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「悪魔は人を手にかけることができない。さっき念話で説明したな?」「ええ、はい。でも今は」「普通にこっちを攻撃してきてる。……たぶん、あいつらの自分ルールすげえ緩いぞ」「どういう意味ですか?」困惑する怜に、Tは言った。「文字通り、人の手を借りれば問題ないんだ」40 #4215tk

2015-09-29 19:39:02
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

首を傾げかけた怜は、ややあってその言葉の意味するところを理解する。「……つまり、誰かに憑依すれば普通に実力行使が可能?」「ほぼ間違いねえな。普通はあんな格の悪魔、憑依させたら霊気を食い尽くされて死にそうなもんだが」ここで彼らは揃って頭上を見上げる。目が合った。41 #4215tk

2015-09-29 19:42:11
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「っと、ヤベェ!」Tが右手を横薙ぎに振るう。その後に残った光がカーテン状に二人を覆った。直後、魔女の目が蛇のごとく変化し光を放つ。魔眼!「くっ!?」怜は呻く。Tの張った結界を通しても、まだなおその力が影響を及ぼすのだ!「ちょっとシャレにならねえな、これ!」42 #4215tk

2015-09-29 19:45:26
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

Tが眉間にしわを寄せる。「まさか憑依に耐えるどころか、普通に力使いこなせる奴がいるとは!」「ハハハ!どうだ塵芥。ボクの力は?」魔女が嘲る。悪魔の声で。「薫はこんなときのためにボクが選んだ人間だ。憑依に耐えられるよう、相性のいい人間を見つけるには多少苦労したよ」43 #4215tk

2015-09-29 19:48:30
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

彼女は愛おしげに自分の体を抱きしめる。「だけどおかげで少しは気が晴れるというもの。可愛い薫!炎と毒と破壊で、君の貢献へ報酬を支払おう!」「おい、聞き捨てならねえ単語が増えてんじゃねえか!毒だと!?」叫ぶTを、『それ』は煩しげに見下ろした。44 #4215tk

2015-09-29 19:51:10
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「喧しいぞ、塵芥め。騒がなくともすぐにお前には味あわせてやる」言葉が終わると同時、右手の鉤爪にぬらりとした輝き。「お前始め、退魔師には散々こけにされてきた。舐めやがって!ボクをバカにした奴がどうなるか、すぐに思い知らせてやる!」ごう、とその背に炎が渦巻いた。45 #4215tk

2015-09-29 19:54:07
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

炎がすぐに蝙蝠の羽の形へと変化。大きく羽ばたくと同時に、『それ』は退魔師たちの元へと到達していた。「なッ」「死ね」静かな宣告。二人の退魔師を切り裂かんと、鉤爪が迫る。怜は思わず目を瞑った。……風が吹く。沈黙。あまりの静けさに、彼女はおそるおそる目を開いた。46 #4215tk

2015-09-29 19:57:18
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

目の前に見慣れた背中。彼の首筋に悪魔の鉤爪が突きつけられている。いや、寸止めか。驚愕に目を見開く『それ』の様子から、怜はそう判断した。「ぎりぎり間に合った。遅れてごめん、怜」振り返った幼馴染が笑みを浮かべる。そして彼は悪魔の腕を掴んだ。「さあ、話をしようか」47 #4215tk

2015-09-29 20:00:13
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

屋上が静まり返る。先ほどまでの激しい戦いが嘘であったかのように。まじまじと四季を見つめていた『それ』の輪郭がぶれ、二つに分かれた。後方によろめき尻餅をついた魔女と、四季に腕を掴まれたままの悪魔とに。「おい、日条」「すいません、先生。少しだけ時間をください」48 #4215tk

2015-09-30 20:30:13
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