- whitesoda69
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(日曜日) 土曜日は、サトウさんと楽しくお部屋で過ごした。 スーパーに行って、少し猫缶を手に立ち止まったりもしたけれど。黄色いあの子を思い出して、少しだけ憎らしげに棚に置いたりした。彼には不思議そうな顔をされたけどね。
2016-02-25 00:03:32今日はお昼まで寝て、夕方までだらだらして、それから一緒にお風呂に入って、いつもと同じTVアニメを見た。内容はずっと同じ。くるくるパーマのお母さんらしき人(確かマキガイさんとかだっけ)の家族が織りなすドタバタコメディ。先週も、先々週も、そのもっと前も、ずっと同じ話。
2016-02-25 00:03:47彼女の弟(確かマグロくん)が何かミスをして、お姉さんに怒られる。隣で見ているサトウさんは、分かっているのかいないのかいつも同じ所で驚いたり、笑ったり。
2016-02-25 00:03:56TVが終わって、そろそろ寝るかなあという時、彼はいつも僕にネクタイの色を聞く。 どの色が課長に褒められるかなあ、なんて。いつも赤と、黄。 「青色が、良いと思うよ」
2016-02-25 00:04:31ええ、青色?そんな色持ってたかなあ、と彼は不思議そうな顔をするけれど。あの後、彼がまた明日から会社でひとりぼっちなのを考えたら―――これは、神様へのささやかな反逆。僕なりの世界を変えうるかもしれない選択肢だ。赤は止まれ、黄色は注意、青は進め。
2016-02-25 00:04:37君のこの歪んだ世界を知っているのは僕だけで良いけれど、知っている。何でも良い、この止まった世界が進みますように。 何かあれば君をただの子供にしちゃう、なんて事は僕には出来ないけど。
2016-02-25 00:05:12「りんせい」 ちゃぷん、と竿を下ろした水面が揺れる。僕は静かに、息を止めて釣りをする。 まるで幽霊のように、ふわり、ふわふわと蜉蝣が竿の先に吊り下げた、水中の水晶に吸い込まれていく。
2016-02-25 21:52:16釣れた。 ざば、と今まで静かで耳が痛くなるほどだった静寂を引き裂いて、竿を引き上げた。中には、釣れたての蜉蝣の魂がゆらり、とゆらめいている。
2016-02-25 21:52:47「ここは寒い、早く君のあるべき所に帰ろう」 そう呟いて帰り支度を始めると、ぱきん、と乾いた音。耳鳴りがする。 振り返ると、神様が片手で水晶を割り砕いていた。
2016-02-25 21:52:57「何をするの、せっかく釣れたのに」 「俺は確かにお前にポップンワールドに新しい魂を連れて来てくれと頼んだが、なんでもかんでも連れて来られちゃたまったもんじゃないぜ」 「僕の友達になってくれるかと思ったんだけど、な。」 「友達ならいくらでも俺様が作ってやろうか?」
2016-02-25 21:53:23「・・・君だって、分かってるくせに」 君が作った物は全て、友達はおろか人間にすら―――と言いかけた言葉は、急に肌寒くなる洞窟内の温度に凍らされた。 黒い、まるで漆黒の渦のような板の奥で、冷たい眼に睨まれる。笑顔を浮かべたままなのに。
2016-02-25 21:53:28「・・・分かったよ。君の世界の為に、魂をまた釣ってあげる」 「さっすがー!俺様の見込んだだけあるぜー!」 「ところで、外の世界に出る方法なんだけれど」 「じゃあ俺様忙しいからさ、またなー!」 元気な声で完全に無視された。
2016-02-25 21:53:41―洞窟の外、凍てつく世界。 少年は、手の平に乗せた細かく割れたレコードを神妙な面持ちで見つめ、ふっと息を吹きかけた。きらきらと飛ぶ破片は、いつのまにか蜉蝣へと孵り、羽ばたいて。洞窟の中へと、消えた。
2016-02-25 21:54:06