【なろう作家】みかみてれんさん(14才)のクラスメイトのお話【短編小説】
@aioiion 「もう止めろ、戻ってこい。お前の指は刃を握り誰かを傷つけるためじゃなく、キーボードを叩きみんなを楽しませるためにあるはずだ」 かつて彼の才能を見出したテレンが、語りかける。 「大丈夫だ、檻の中だって創作はできる。お前を待ってる人だっている。いや、俺がその1人だ」
2015-09-29 18:35:13@aioiion それは嘘偽りのない本心だった。テレンは彼の才能に惚れていた。自分を追い抜き成功のステップを瞬く間に駆け上がって行く弟弟子の姿に、初めこそ嫉妬したものの、彼の描き出す物語はそれを補ってなおテレンを魅了した。 「思えば、お前の最初のファンは俺だったんだよ」
2015-09-29 18:41:08@aioiion ーーファン。 その言葉に彼のココロが止まる。今もなお荒れ狂う感情の嵐の中にぽっかりと凪が生まれる。どこまでも突き抜けるささやかな蒼天の下、郷愁めいた思いがココロのひだを優しくなでる。 ファン。それは、時に温かくて。時に誇らしくて。そしてかけがえのない、もの。
2015-09-29 18:52:33@aioiion 頬を、涙が滑り落ちた。手にした刃まで落とさなかったのは、彼の意地か。 言いたいことはたくさんあった。 --星がひとつしかないレビューを見たことはあるか。読んでもいない連中にイメージだけで悪罵されたことはあるか。資源の無駄と言われたことはあるか――
2015-09-29 19:05:12@aioiion あんたに何がわかるんだと叫びたかった。 今まで始末してきた作家たちと同じように消し去ってしまいたかった。……けれど、できない。 思い出してしまったのだ――あの日、拙い文章を人に見せたときのドキドキを。読みづらいだろうものを黙々と読みふけってくれた兄弟子の姿を。
2015-09-29 19:11:35@aioiion 初めてだらけで右も左もわからないなか懸命になって仕上げた処女作を。少ないながらも書店に並んだ自著の姿を。いくつも書店を回りパンパンになった足を。偶然見かけた本を手にとってくれた人の姿を。初めてもらったファンレターのかわいらしい文字を。――思い出してしまったのだ。
2015-09-29 19:16:30@aioiion 記憶の欠片が葛藤する。 刃が震える。それでも世界に悪意は絶えない。お前が省みられることはない、と。涙は訴える。それでも世界にファンはいる。お前が忘れられることはない、と。 温かい涙と冷たい刃がせめぎあう。 千々に砕け散りそうなココロの向こうで、テレンが言った。
2015-09-29 19:24:53@aioiion 「お前の次回作、楽しみにしてるぜ」 ――それは。 『お前の次回作、楽しみにしてるぜ』 ――自分が作家という道を選んだすべての始まり。 心が彩を取り戻す。 口が勝手に開いた。言うべきことはわかっている。 「僕の作品が最初に読めるのは、テレンさんだけ、ですよ……」
2015-09-29 19:32:55@aioiion 白い紙に墨をしるす。昼は頼りない西日、夜は裸電球一個の明るさの中、一心不乱に筆を振るう。贖罪と懺悔と、少しの誇りをのせて文字は記され文章はつむがれる。 それは名作かはたまた―― どこにいても彼は書き続ける。どこかに読んでくれる人がいる限り――Fin.
2015-09-29 19:45:53周囲の反応とか
相生さんなにやってんだってツッコミたいけど、私だってツイッターで誰が読んでるかもわからんモン娘論を不定期でやってるわけで、ツイッターなんだからそんくらいの遊び心があってもいいよねと思い直した。
2015-09-29 19:50:35