- Panzerslayer
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「さんま、さんま、苦いかしょっぱいか……」 季節外れの秋刀魚の身をむしりつつ、そう言う金剛の方を向いて、顔をしかめながら比叡は口を開いた。 「それは不倫の歌ですよ、お姉さま」 手を止めて、金剛は笑った。 「知ってマス」 苦い、笑顔だった。 「知ってマス……」
2014-06-15 15:55:53みじ、と秋刀魚の身を箸で骨からはがす手を金剛は止めた。それを見て、比叡は続ける。 「いいことじゃあありませんし……」 比叡の言いたいことは、わかる。同じことを彼女がしたうえで、こんな詩を吟じていれば、金剛とて口に出していっただろう。
2014-06-19 04:30:46「知ってマス」 秋刀魚から身をはがす。脂がしみだし、皿を汚した。 「……知ってマス」 自分が何をやっているかはわかっている。既婚者の提督と何をしているかもわかっている。ただ、それでも。止められれば苦労はないのだ。
2014-06-19 04:31:27「……こういうのは……」 「昼間にやることじゃない、って言うんデスよね、テートクは」 金剛は、提督の首筋に左の薬指を這わせ、笑う。 「ココに指輪があったら、良かったのニ」
2014-06-19 04:31:57そう言った金剛を見て、提督は苦い笑みを浮かべた。 「……殺されてしまうよ」 「……オクサンが見たら殺されてしまうヨウなコトを喜んでワタシにしてる人がよく言いマスネ」 その苦い笑みを見て、金剛はとん、と提督の胸を指でついた。
2014-06-19 04:32:26「そうだな」 そういって、提督が金剛を抱き寄せ、耳元でささやく。 「……夜に」 「……ハイ」 す、と離れる。人の気配がしたのだ。
2014-06-19 04:33:09蹴飛ばすように扉を開いたのは、比叡だった。その瞬間、電話が鳴る。どうして姉様が、と物問いたげな視線を向けてくるが、それに構わず提督は電話を取り、わかった、とだけ返した。 「……呼集をかけろ。大規模な深海棲艦の集団が接近している」 提督は、仕事だ。と言った。
2014-06-19 04:34:02一般に、ユトランド沖海戦の戦訓を得て以降の海戦の距離は、おおよそ15kmだとされている。砲がそのように設計されているというのも大きい。だが、今はそれどころではない。 「何隻沈めましたカ?!」 「もう数えていません!」
2014-06-19 04:34:21周囲数キロの範囲にありとあらゆる深海棲艦が殺到している。駆逐艦を一隻沈めれば、その残骸を乗り越えて軽巡が接近し、砲を乱射する。その軽巡を吹き飛ばしながら重巡が迫り、その重巡をひき潰しながら戦艦が迫る。秩序も何もない殺到という形容がふさわしい、理性無き集団。
2014-06-19 04:34:57深海棲艦の黒なのか、血で海がドス黒く染まったのか、それとも両方なのか。もはや峻別もできない。砲をひたすらにぶっ放している。艤装は砲撃の煤で黒く染まり、そこかしこに血の染みを作っている。 敵の血ならどれだけよかったことか。と金剛は考えながら、破片を引き抜く。
2014-06-19 04:35:21「あ……」 金剛は、動きを止めた。爆炎とともに、砲弾が吐き出される。その先には、提督の座上している艦娘の指揮統制艦たる『おおすみ』があった。 砲弾が、命中する。その瞬間、おおすみとのデータリンクが、切れた。量子データリンクは切れることはない。そういう性質のものだ。
2014-06-19 04:36:12量子不分離コアが破損するような状況は、と言えば、答えは一つである。CICが全滅した、ということだ。つまり。
2014-06-19 04:37:08こんごうちゃんがうわきしてるよ!ていとく! とかそんな話を書くつもりが、いつの間にかこのありさまだよ!!!111!!11!
2014-06-19 04:38:28@Stormbricht 実は浮気要素は案としてそぐわねえ、ってんで廃棄した余計者艦隊のプロットの流用やね。
2014-06-19 04:41:27いや、秋刀魚のあれをなんでネタにしたかって言うとさ、弁当も飯も作ってくれない嫁さんから金剛ちゃんに転ぶ、って話にするつもりだったのさ。 まあやっぱり血を見たよね。
2014-06-19 07:06:24そういえば、早朝に書いたブツがあるのだが、ハッシュタグを付け忘れたので昼にでも直すかもしれない。 これだけどな。 twitter.com/MIBkai/status/…
2014-06-19 08:02:59「さんま、さんま、苦いか、しょっぱいか……」 季節外れの秋刀魚に酢橘を絞りながら、金剛はそう言った、それを聞いて、比叡は眉をひそめる。 「……それは不倫の詩ですよ。姉様」
2014-06-19 04:30:34