横山裕 ６

りえこ @eighter_rieko83

横山裕 1 『よこちょ～風邪もぉよぉなったぁ？』 ヤスが俺の顔を覗き込む。 「おん…熱下がったで…。」 『彼女に看病してもろたぁん？』 「おま…っ、」 心配気な顔から急に悪戯な顔になる。 こいつ…。 答えたらんけど、その答えはNOや。 彼女は熱出たことも知らん。

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2 なんとなく…なんとなくやけど…言いそびれた…。 彼女は仕事忙しいて、また無理しとるみたいやったし。 そんなんで、もし風邪うつりでもしたら、申し訳ないし…。 『ほんならよこちょ、お大事になぁ♪』 送りの車が家の前に到着したら、ヤスが笑顔で手を振った。

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3 鍵開けて部屋に入ると彼女の靴、そして部屋には電気がついとる。 なんや…来てたんか…。 治りかけの風邪…うつらんやろか…。 「ただい…『こら、候隆！！』」 え？ 見ると彼女は仁王立ちして、わかり易く怒っとる。 「え？なに？？」 ドンドンと床鳴らしながら近寄って来る。

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4 目の前まで来たら、勢いよく手を伸ばしてきて…殴られる…？！ …と思ったら、おでことか首ペタペタ触る。 「…なに…？」 『“なに？”じゃないでしょ！！…まだちょっと熱いんじゃないっ？！』 「熱い…？」 『熱！！出たんでしょ！！』 なんで知ってんねん…あぁっ！

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5 「もしかしてヤスか？！あいつに聞い…、」 『なんでヤスくんよ！ヤスくんがあたしの連絡先知ってるわけないでしょ！ばか！！』 そっか、そりゃそぉやな…。 なんや、さっきの車での会話が頭にあって…。 「え、じゃあ、なんで知っとるん？」 『………。』 黙って俺を睨む。

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6 『…寂しかったんでしょ…！なんであたしに言ってくれなかったのよ…！！』 ちょっと涙目になって、でも睨んだまま。 なんで寂しかったとかまで…えっ？！ 『ブログ！！書いたでしょ！！』 「…書いた…。」 こいつ、あれ読んだん？！ つか、いつも読んどるん？！

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7 「ブログ…読んでんの…？」 『なによ…っ！ダメなの？！』 「いや…あかんことないけど…そんなん…読んでへん思てたから…。仕事の話とか聞いたりしてこんし、テレビとかの話もしたことないやん…。てっきり…アイドルの俺ってゆーか…自分で言うのもなんやけど…そんなん興味ないかて…。」

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8 『そんなわけないでしょ…！！どっちもあたしの大好きなきみくんだよ！！そんな人に…大変な時に…頼られないなんて…情けないってゆーか…悲しいってゆーか…ばか…ぅっ…くっ…。』 「あぁぁ…すまんてぇ…。」 真っ赤な顔して泣き出した彼女を、ギュッと抱きしめた。

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9 そりゃいちばんに言って、そばにおって欲しかったけど…なんや…難しいなぁ…いや…難しく考えてたんは、俺か…。 「ほんまごめん…。今度から…もっと素直んなるわ…な…？」 『ほんと…？』 「おん…。」 『ほんとにほんと？』 「ほんまやって。」 『じゃあ…仲直りのちゅー！』

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10 俺の胸から顔を上げる。 「あほ、おま、それはあかんやろ。」 『なんでっ？！』 「なんでって、風邪うつったらどないすんねん！」 『なによ！やっぱり反省してない！』 「いやいや、そんなん言うても、まだ治りかけやし！ちゅーはさすがにあかんやろー！」 『あかんくなーいー！！』

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11 「あかんってぇ。」 『きみくんはあたしとちゅーしたくないのぉ？！』 「いや、そーゆーことちゃうやん。」 『じゃ、したいって思ってる？』 「いや、おまっ…なんやねんもー…。」 『思ってないんだ？』 「思ってます！思ってますよ！///」 『素直になるんでしょ？』

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12 「…はぁ…もぉー…。ほんまに…うつっても知らんからな…？///」 『は、や、く！！』 俺の腕の中で、かわえー顔して目ぇつぶる彼女。 惚れた弱みってやつか…？ こんなん…断れんに決まっとるやんけ…。 なんならもー、ちゅー以上のこと…したろかな………………………。