Precious(前編)

横村楽器店 シリーズ7
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りえぷぅ @riem124blue

1 妹が生まれた時、幼い俺がまず思ったのは、“おかんが殴られとるのを、妹には見せたらあかん”。 なるべくしてなったんやな、シスコンに。 まぁ、しゃあないやん、妹、ほんまにかわえぇもん。 俺、このまま恋愛とかできんのかな、ってくらいやった。 でも彼女に出会った。

2016-04-24 00:40:25
りえぷぅ @riem124blue

2 彼女は学校の…いわゆるマドンナやったし、喋ったこともない俺んこと、どう思っとるんか分からんやったけど…恥ずかしいくらい顔真っ赤にしてとにかく必死に告白したら、付き合ってくれるって。 夢か思った。 金持ちの親のおかげなんかな、とか思たけど、もうそれでもえぇて思った。

2016-04-24 00:40:30
りえぷぅ @riem124blue

3 でも、せっかく付き合うたのに、すぐに心配事が。 俺はあの親父の血をひいとる…てことは、俺もこんな大事な彼女のこと傷つけるんちゃうかなって。 そう思うたら、ただただ優しくするだけで…情けないほど何もできんかった。 そんでもやっぱ俺も男やってんな…酔うた勢いで押し倒したりして。

2016-04-24 00:40:36
りえぷぅ @riem124blue

4 酔わな何もできん自分が、また情けなくて、童貞捨てた喜びよりも、自己嫌悪の方が勝ってたな…。 そんでも順調やと思っとった。 相性は自分で言うのもなんやけど、めっちゃ良かったし、お互いを思いやれる最高のパートナーやと思っとった。 でも気付いてもぉた。

2016-04-24 00:40:40
りえぷぅ @riem124blue

5 親友のヒナも彼女のこと好きやって。 もちろん渡すつもりはなかったし、こっちはもぉ付き合うてるんやから、初めは何の心配もしてへんかった。 でも、さらに気付いた……彼女もヒナが好きやって……。 そんなら、こっちから別れ切り出した方がカッコよかったんやろうけど、それもできんくて。

2016-04-24 00:40:45
りえぷぅ @riem124blue

6 結局、彼女に言わせてもぉて…。 情けないような、彼女の身体傷つけんで良かったって安心したってゆーか…あぁ、やっぱり情けない、か…。 そんでも俺らの友情は壊れん程、絆は強くて、今じゃ同僚……いや、俺の右腕・左腕って感じやな。 2人がおらんと、俺はこの会社をやってけへん。

2016-04-24 00:40:49
りえぷぅ @riem124blue

7 俺と別れてからも、何故か2人は長らく友達関係のままやったけど、ちょっとつついたったら、やっとくっついたらしい。 ま、なかなかそうならんかったんは、俺のせいやろうしな…なんやねん、俺ただの“えぇ人”やん。 俺にやって、恋愛のチャンスが全くなかったわけでもなく。

2016-04-24 00:40:54
りえぷぅ @riem124blue

8 それなりにえぇ感じの子もおった。 いわゆる男女の関係?なって…実は結構好きやったけど、別に男見つけたらしくって。 結局、あれから彼女らしい彼女できてへん……なんや、そう思ったら俺、めっちゃ可哀想やん。 村上「そんでやな、話っちゅーのは…まぁ…頼みごとなんやけど…、」

2016-04-24 00:40:57
りえぷぅ @riem124blue

9 横山「えぇで。」 村上「は?」 横山「オッケーや言うてんねん。」 村上「おい、まだ何も言うてへんやろがぃ。」 言われんでもだいたい分かるわ。 何年の付き合いや思てんねん。 ☆☆と2人、そんな真面目な顔して並んで座られたら…だいたい想像つくわ。

2016-04-24 00:41:04
りえぷぅ @riem124blue

10 横山「ほんなら早よ言え。」 村上「…あんな、けっ」 丸山「お待たせしましたー!!!」 まるが料理持ってやって来る。 この男の間は、もはや天才的やと思う。 丸山「まるちゃんサラダに、レバニラ炒め、あと軟骨唐揚げー!!」 ニコニコしながら並べると、何故かそこに座る。

2016-04-24 00:41:08
りえぷぅ @riem124blue

11 丸山「そういえば、ウチの子なんすけどぉ、」 横山「まる…。」 丸山「この前ね、“ママ”より先に“パパ”って、」 横山「まる!」 丸山「言うたんすよ!!ママは気のせいやって言うんすけどねぇ?それは単に悔し…」 横山「まるっ!!」 丸山「はっ、はいっ?!」

2016-04-24 00:41:13
りえぷぅ @riem124blue

12 横山「空気読んで!」 丸山「へっ?!」 俺らの顔をゆっくり見回す。 そして静かに立ち上がって真顔で「失礼します」言うて、やっと去ってった。 横山「はぁ……えぇで?話して。」 村上「お、おん……。」 ヒナが軽く咳払いして、口を開きかけた…ら、俺の携帯が鳴る。

2016-04-24 00:41:18
りえぷぅ @riem124blue

13 横山「なんやねん、もー…あー……ちょ、ごめん……妹や……もしもし?」 **『 あ、おにいちゃあ~ん?!』 なんか…呂律回ってへんのやけど。 横山「なんやねん。」 **『なんやねんてなんやねん~!!』 あぁ……なんかめんどくさいやつや…。

2016-04-24 22:03:44
りえぷぅ @riem124blue

14 横山「どぉしてん…?」 ちょっと優しく、言葉も変えてみる。 **『今なー?大倉んとこおんねんけどなぁ、おにいちゃんも来てやぁ♡』 片思いなんか、両思いなんか、友達なんか、彼氏なんか知らんけど、おまえが大倉好きなんは明白や。 なんでそこに兄貴呼ぶねん。

2016-04-24 22:03:47
りえぷぅ @riem124blue

15 それも、めーっちゃ酔おてるやん。 横山「ごめんやけど、今、人と会うてんねん。また今度、な?」 **『おにいちゃんのアホぉっ!!大事な妹が呼んでんのに、他人とあたしとどっちが大事なんっ?!』 俺がシスコンなら、妹も相当なブラコン…そんなやつ…彼氏に聞く二択ちゃうの…。

2016-04-24 22:03:51
りえぷぅ @riem124blue

16 横山「あのなぁー……ちょ、大倉に代わってくれへん?」 **『えぇーっ?!なんでぇー?!』 横山「えぇからえぇから!な?ちょっとだけ!」 **『…………おーくらぁ……?』 電話の向こうの方で小さく会話が聞こえて、しばらくして大倉の声がはっきり聞こえた。

2016-04-24 22:03:55
りえぷぅ @riem124blue

17 大倉『もしもしぃ?』 横山「あー、横山。妹めっちゃ酔ぉてるやん?なんかあったん?」 大倉『仕事うまくいかへんかったみたいで、大荒れなんですわー……あ、痛った!叩くなってぇ!』 これはこれは大変そうやな…。 大倉『もうすぐ腕折れそうですわー…助けて下さい…!』

2016-04-24 22:03:59
りえぷぅ @riem124blue

18 そらな、“お兄ちゃん”も行ってあげたいけどさー…すまん、大倉! 横山「大倉ぁ……ごめんやけど、今日はひとりでなんとかしてくれへん?おまえやったら、なんとかできるやろ?な、頼むわ!ほじゃな!!」 向こうの返事も聞かんと、切った。 これでまた…あいつひと暴れするな…。

2016-04-24 22:04:03
りえぷぅ @riem124blue

19 村上「おい……えぇんか?」 横山「大丈夫や。俺行った方が余計ややこしなる。」 そうや、もぉ大人やねんから、“お兄ちゃん”頼るな。 大倉おるやんけ…って、ちょっと強がりやけど…。 携帯はサイレントモードにした。 そして、改めて2人に向き直す。

2016-04-24 22:04:07
りえぷぅ @riem124blue

20 村上「……ほんなら…。」 本日2回目の咳払いをするヒナ。 村上「式の日取りが決まってん。おまえに来てもらいたいんはもちろんやけど、挨拶も頼みたいねん。」 ほらな、やっぱり。 横山「おん、えぇよ。」 おまえらの頼み、聞かんわけにいかんやろ。 村上「ほんまか?」

2016-04-24 22:04:10
りえぷぅ @riem124blue

21 横山「こんなん、嘘ついてどないすんねん。最初からえぇって言うてたやろ。」 村上「おん……ありがとぉ。」 ☆☆「ありがとう、侯隆。」 横山「えーから、もぉー飲もーやー!///」 改めてそんなかしこまってお礼なんか…照れるやろ。 おまえらには幸せなってもらわんと…。

2016-04-24 22:04:14
りえぷぅ @riem124blue

22 まぁ、よぉ言わんけど。 XX「お待たせしました、麻婆豆腐です。」 村上「あれ?まるは?」 XX「なんか“ごめん、キミが持ってって”って…。」 横山「イジケてん。ほっとけほっとけ。」 ☆☆「どう?XXちゃん、お店は慣れた?」 XX「はい、だいぶ…へへ。」

2016-04-24 22:04:17
りえぷぅ @riem124blue

23 ☆☆「あ、侯隆に聞いたよ?バスケ部のマネージャーだったんだって?」 XX「あ、はい……そうなんです…!」 違う。 ☆☆「あたし、応援行ってたんだけどなぁ…ごめんね、覚えてなくて。」 XX「いえ、全然!マネージャー2人いたし…。」 違うで…。

2016-04-24 22:04:20
りえぷぅ @riem124blue

24 XX「マネージャーなんて、表に出るものではないし…知らなくて当然です…。」 この子はただのマネージャーやない…。 ―――――― XX「あのっ……あ、あたし……横山先輩のこと……好きです…あっ!彼女がいることは知ってます!だからその……っ、お伝えしたかっただけで…。」

2016-04-24 22:04:24
りえぷぅ @riem124blue

25 顔真っ赤にして、部活終わり、たまたま部室で2人になった時、告白された。 その時はまだ☆☆と付き合っとったし、まさかそんなん言われる思てなくて、ただただびっくりして…思わずなんも言えんでおったら、「すみません!」って部室出てった彼女。

2016-04-24 22:04:27
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