Precious(前編)

横村楽器店 シリーズ7
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りえぷぅ @riem124blue

26 それからなんとなく意識した。 もちろん☆☆のことが好きやったから、付き合うとか浮気とかは考えられんかったけど、好意ってものは、正直嬉しいもので……。 彼女は地味な方やったけど、ちっちゃくて気が利いて、短めの髪が似合うかわえぇ子。 部員には密かに人気あった。

2016-04-24 22:04:31
りえぷぅ @riem124blue

27 ちゃんと返事もしたらんと、どうしようか思ってたら、同じ部活内の島田って男が何かと俺に因縁つけてくるようになった。 言い訳かもやけど、そいつのせいで告白云々はうやむやに。 4年の引退でいっこ上の先輩がキャプテン、俺が副キャプテンに任命されて、それが島田のキレるキッカケに。

2016-04-25 21:20:25
りえぷぅ @riem124blue

28 どうやら運送会社をやってるらしい島田の父親が、ウチの親父から契約破棄を言い渡されたらしく、倒産ギリギリらしかった。 やからって……完全な逆恨みやろ。 俺知らんやんけ。 面倒はごめんやったし、副キャプテン降りる気はなかったから、俺はひたすら聞き流した。

2016-04-25 21:20:28
りえぷぅ @riem124blue

29 せやけど、そんなんがヒナの耳に入ったらしい。 正義感の強いアイツ。 俺のおらんとこで殴り合いになって……その辺りからやと思う。 ☆☆の気持ちがヒナに向いたのは。 別れるのに、そんなに時間はかからんかった。 でも不思議と悔しい気持ちみたいなんは、すぐに消えた。

2016-04-25 21:20:31
りえぷぅ @riem124blue

30 それよりも2人には幸せになって欲しいて、そう思えるようになって。 ほんまに…めっちゃ好きやったけど…。 XX「あっ…先輩……もう、みんな帰られたかと……、洗濯するタオル取りに来ただけですから……!失礼します!」 横山「待って!」 みんなが帰って静かな部室に2人きり。

2016-04-25 21:20:36
りえぷぅ @riem124blue

31 彼女はドアの方向いて、俺に背中向けたまま、動きを止めた。 横山「もぉ帰るんやろ?」 XX「…はい…。」 横山「ほんなら、一緒帰ろ。」 この時何考えてたんか…よう覚えてへんけど、なんか彼女と話がしたかったんかな。 一緒に部室を出た。

2016-04-25 21:20:39
りえぷぅ @riem124blue

32 盛り上がるどころか、自分から帰ろ言うたくせに何もしゃべらんと、なんとなくゆっくり歩いて。 彼女もそれに合わせるように歩いてた。 もうすぐ彼女と別れるって時に「今度どっか行こか」って。 彼女もやけど、俺自身もびっくりした。 「別れてん」って……なんか淋しかったんかな?

2016-04-25 21:20:43
りえぷぅ @riem124blue

33 ヒナにも言うてへんかったのに、彼女には何故かすぐに言うてもぉた。 それからちょくちょく会ったり、部活終わって2人で帰ったり……なんか一緒におったら不思議と居心地良かった。 4年の引退試合が近付いたその日も、部活終わってこっそり2人で帰る。

2016-04-25 21:20:47
りえぷぅ @riem124blue

34 XX「先輩、ちゃんと食べてますか?自炊してるんですか?」 横山「ぃやー…自炊なんてよぉせんわ。コンビニ弁当とかやなぁ。」 XX「……じゃあ……あたし、何か作りましょうか……?」 横山「えっ?!」 XX「あっ、いえ……そんな……迷惑ですよね、すみません……。」

2016-04-25 21:20:51
りえぷぅ @riem124blue

35 横山「そんなわけないやん!あの……そうしてもらえると、嬉しいわ……。」 XX「ほ、ほんとですか…?」 横山「おん……。」 そりゃバイト先でまかないは出るけど、試合前のこの時期は我が儘言うて、休ませてもらってるから、手料理にはめっちゃ飢えとるもん。

2016-04-25 21:20:56
りえぷぅ @riem124blue

36 XX「お、おじゃまします……。」 横山「ごめんな、部屋きたなぁて。」 XX「いえ!……あ、えと、キッチンお借りします……。」 使ってないキッチンだけが片付いとって、そこで彼女はテキパキと料理した。 出来上がった和食はめっちゃ美味くて、あっという間に完食した。

2016-04-25 21:20:59
りえぷぅ @riem124blue

37 腹がいっぱいになったら、急に2人きりが恥ずかしくなった。 いや…そんなやなくて……なんか、男が目覚めるっちゅーか…。 察したのかどうか、彼女がそそくさと片付けしだした。 男の部屋に来るってことは、ある程度覚悟しとるよなー? まだ「好き」も「付き合って」も言うてへんけど…。

2016-04-25 21:21:05
りえぷぅ @riem124blue

38 えぇんかなぁ……? いや、その辺はちゃんとせなあかんちゃうの…? でもなぁ……。 XX「あっ、あのっ…。」 キッチンから戻って来た彼女が、自分のバッグを拾い上げて、俺の隣に立った。 XX「あたし、そろそろ……。」 座ったまま、思わず彼女の手首を捕まえた。

2016-04-25 21:21:13
りえぷぅ @riem124blue

39 XX「…………っ。」 横山「……今日……泊まってかへん……?」 言うといてめっちゃ恥ずかしくて、下向いたまま。 でも、返事聞こえへんから、恐る恐る彼女の顔を見上げる。 彼女は真っ赤になっとって…でも、嫌な顔はしてへん。 ここまで言うたんなら、押すしかない。

2016-04-26 22:41:30
りえぷぅ @riem124blue

40 横山「…あかん…?」 彼女は真っ赤のまま、ふるふると首を横に振った。 軽く掴んだ手首を引っ張ったら、ゆっくりそこに座った。 その彼女を抱きしめたら、そういえば部活終わりで汗臭いかなって急に現実的なこと思ってしまって、慌てて離れる。

2016-04-26 22:41:33
りえぷぅ @riem124blue

41 横山「あっ、ごめ…俺汗臭い…よな…。」 ムードもなんもぶち壊しやな。 こーゆーの、もっとうまくできん自分に腹が立つ。 XX「そっそんなっ、それは…あたしだって……。」 ますます赤くなる彼女がかわいくて仕方がない。 横山「あ、俺風呂入って…あ、先入る?」

2016-04-26 22:41:37
りえぷぅ @riem124blue

42 XX「えっ……あっ……いえ、お先に…どうぞ……。」 横山「お……おん……。」 襲う気満々なんバレへんように、いつもよりちょっと長めに入った。 彼女が出てくるんは、小さいテレビ見て別に待ってへん感……バレてるかもしらんけど…。

2016-04-26 22:41:41
りえぷぅ @riem124blue

43 「髪乾かしたるよ」とか、思わず言うたけど、もしかして、きしょかった? 妹の髪、よぉ乾かしてあげとったなぁ…妹はもっと髪長かったけど。 XX「よく……彼女とかの髪乾かしてあげるんですか…?」 横山「へっ?!なんで…?」 XX「なんか……慣れてるのかなぁって…。」

2016-04-26 22:41:45
りえぷぅ @riem124blue

44 横山「えっ?!やっ!ちゃうで!昔妹のんよぉやってたから…。」 あっ、シスコンってバレてまう…! それはそれであかんやつ! XX「あ……妹さんいるんですね…ふふ、仲良しなんだ…。」 横山「え?お…おん……そやな……。」 セ、セーフ??

2016-04-26 22:41:49
りえぷぅ @riem124blue

45 横山「よし……乾いたで?」 XX「ありがとうございます!」 元気にそう言うて、体操座りのまま顔だけ後ろに向ける。 これはまた……かわい……。 思わず後ろから肩抱いてチュッて……。 急にくっついた距離に、彼女はまた顔を赤くした。 いや、たぶん俺もやけど…。

2016-04-26 22:41:52
りえぷぅ @riem124blue

46 その顔を隠すように彼女の身体を腕の中に収めた。 あーもーあかん、限界や…。 ギュッとしたまま首筋に唇を這わせた。 ビクッとして、身体が固まる。 こんな反応今は煽ってるとしか思えん。 首筋から耳に辿り着いて、小さなキス繰り返したら、ちっちゃい声がした。

2016-04-26 22:41:56
りえぷぅ @riem124blue

47 XX「せ、せんぱぃ……あのっ…、///」 横山「……ん……?」 もーあかんとか言うても絶対ムリやで? 服の上から、柔らかい胸を撫でた。 XX「ぁっ……あのっ……、あの、あたし……、///」 横山「……なに……?」 XX「…は…はじめてなんです……!///」

2016-04-26 22:42:00
りえぷぅ @riem124blue

48 横山「…………えっ?!」 さすがに動きを止めた。 XX「……やっぱり……こんなこと言って……引きます……?」 横山「やっ!ちゃうやん……!」 めっちゃ焦る。 彼女カワイイし、今までも彼氏おったやろうから……初めてとか思ってへんかったし。

2016-04-26 22:42:04
りえぷぅ @riem124blue

49 それやのに、俺はまだ告白もしてないアホなわけで…。 でも正直もうそのスイッチ入ってまってるし……つか、初めてなのに、泊まるって……いいってことやろ? ちゃうの? てか、この流れやとアレやな、告白しな……。 XX「あっ、あのっ!」 俺の腕から抜け出して、立ち上がる彼女。

2016-04-26 22:42:07
りえぷぅ @riem124blue

50 あー……やっぱり帰るって感じ……? なんとなくツラレて立ち上がる。 XX「そ……その……お手洗いに……、///」 横山「えっっ?!あっ、おん!」 真っ赤な顔を隠すように下向いて、トイレに入る彼女。 帰る……ってわけでもないんか…。 なんかホッとしてまう。

2016-04-26 22:42:11
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