星雲鎮守府SS第三弾【雲ハ移リ行ク】

大切な仲間を守るため、"はみ出し者"達が策を講ずる。
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星雲の漣@ありがとうございました @YNebulaSub

* 「…」 執務室、じっと思案する提督。 「?」 そんな提督の姿を訝しげに見つめる雲龍。 …それは、遡ること数日前。 「お疲れ様でした」 「いやー流石に強いねえ君のところは。【阿修羅】の二つ名に恥じない」 「…それは光栄な事で」 *

2015-10-15 00:46:31
星雲の漣@ありがとうございました @YNebulaSub

* 演習を終えた、何気ない会話の一幕。 「君達はこんな外れの地にとどまることもあるまい。横須賀や呉への昇進も望むままなのではないか?」 「生憎興味が無いので」 見下すような目で、淡々とした受け答え。 …こいつの本性は広く知れ渡っている。 とんだ"下種野郎"だ。 *

2015-10-15 00:47:45
星雲の漣@ありがとうございました @YNebulaSub

* 「ところで、例の艦娘のことなんだが」 またその話か、と顔に出そうになる。 「何か進展は?」 「全然だ。君は本当に何も知らないかい?」 「『えぇ、残念ながら』」 「そうか…あぁ、一体どこへ…」 「心中お察しします。『早く見つかるといいですね』」 白々しく言葉を返した。 *

2015-10-15 00:49:30
星雲の漣@ありがとうございました @YNebulaSub

* … 「提督?」 「…ん、どうした雲龍」 「…いえ、浮かない顔をしていたようだから…って、いつもの事だったかしら」 「大きなお世話だ」 雲龍の声掛けで我に返る提督。 *

2015-10-15 00:50:37
星雲の漣@ありがとうございました @YNebulaSub

* 「お前もいちいち一言多くなってきたな」 「誰かさんの性格が伝染ったのね」 人格を持った兵器である艦娘は、そのあらゆる面において指揮する人間の影響を受けやすい。 彼女もまた例外ではなかった。 *

2015-10-15 00:51:20
星雲の漣@ありがとうございました @YNebulaSub

* 「何かあった?」 「例の件だ。この前やつと演習で当たってな」 「…やはり、あの娘がここにいることを感付かれているのかしら」 「その可能性は高い。当然"返す"気なんて無いがな」 「そうね。私にとっても看過できないこと」 *

2015-10-15 00:52:02
星雲の漣@ありがとうございました @YNebulaSub

* 星雲鎮守府において、"このこと"を知っているのはほんの一握り。 提督と、雲龍と、摩耶と、そして【当事者】だ。 「(必ず守る…私が…)」 *

2015-10-15 00:52:54

それから数日後

星雲の漣@ありがとうございました @YNebulaSub

* 「提督、手紙だぜ」 そう言って文書を手渡す摩耶。 「ご苦労さん。…あぁ、いつものお呼び出しか」 【お呼び出し】、それは各鎮守府の提督が艦娘一人を伴って行う大本営への定例戦果報告である。 戦功に応じて特別褒章が与えられることもある。 *

2015-10-27 02:50:10
星雲の漣@ありがとうございました @YNebulaSub

* 「今回はどうすんだ?」 「漣を連れて行く。呼んできてくれ」 「おう」 「よばれてとびでてサザナミちゃん!」 「普通に来やがれ」 *

2015-10-27 02:51:03
星雲の漣@ありがとうございました @YNebulaSub

* 「転んでもタダでは起きないのが漣クオリティですよ?これが生きがいです。そんな些細な生き甲斐が日常に彩りを加(ry」 「どこかで聞いたようなセリフはいいから。話が進まねえ」 「…ノリ悪モードですかご主人様?まぁいいけどー。呼び出しでしょ?チャチャッと済ませましょ」 「あぁ」 *

2015-10-27 02:52:18
星雲の漣@ありがとうございました @YNebulaSub

* 「…ふむ、いつもながら戦果の方は申し分ないな」 「…恐縮です」 書類を手に淡々と戦果報告を確認する上官。 提督の横には漣がすまし顔で立っている。 「こと戦闘に関しては大いに結構なのだが…」 「「…」」 身構える提督と漣。 *

2015-10-27 02:53:19
星雲の漣@ありがとうございました @YNebulaSub

* 「君達はいつもそうなんだが、他の鎮守府との連携を取らないねぇ」 「連携」 「いかにも。もう少し情報をよそに回してあげてもいいと思うんだが」 「それは些か心外ですね。現に広報体制は充実しております」 上官のイチャモンに淡々と対応。 *

2015-10-27 02:53:58
星雲の漣@ありがとうございました @YNebulaSub

* 「倒した敵の情報はもう少し仔細に!どこも戦力が充実しているわけではないのだから」 「これはこれは、配慮が欠けておりました。失礼」 *

2015-10-27 02:54:39
星雲の漣@ありがとうございました @YNebulaSub

* 「どうも解せんのだよ。力があることはこちらも十分わかっている。今更誇示することもない。別に抜け駆けして一気に昇進しようというわけでもないようだし」 「我々には我々なりの考えがありますので」 長引きそうなところで遮る。 *

2015-10-27 02:56:03
星雲の漣@ありがとうございました @YNebulaSub

* 「情報に関しては善処致します。誰に似たのか加減知らずの艦娘ばかりなもので…次からは敵の肉片ぐらいは持ち帰らせましょう」 隣で聞いていた漣が俯いて肩を震わせている。 「コホン…まぁいい。…それと」 上官が声のトーンを一段落として提督の方を見る。 *

2015-10-27 02:57:07
星雲の漣@ありがとうございました @YNebulaSub

* 「…別の鎮守府を抜けだした艦娘を匿っているという噂を聞いたが」 「?…それは面妖な。根も葉もない噂ですね」 "事情"を知らない漣は一瞬提督を見遣ったがそこは演技派、すぐに澄ました顔に戻る。 *

2015-10-27 02:58:17
星雲の漣@ありがとうございました @YNebulaSub

* 「ふむ…ならよいが。艦娘は然るべき指揮官の下で戦うのが大原則だ。それは忘れるな」 「重々承知しております」 「それから、最近はその辺ではぐれた艦娘まで拾って艦隊に組み込んでいるらしいな?」 「…何か問題が?」 *

2015-10-27 02:59:39
星雲の漣@ありがとうございました @YNebulaSub

* 「いや、違反とかではないがそんな捨て猫を養うようなマネは些かみっともないだろう」 「そのまま捨て置くのも無情かと」 「艦娘はあくまで兵器だ。情は要らん」 それを聞いた漣がバレない程度に冷たい視線を送った。 「…お言葉ですが」 少し思案して口を開く提督。 *

2015-10-27 03:00:36
星雲の漣@ありがとうございました @YNebulaSub

* 「こちらもつまらない情で艦隊を率いているつもりは毛頭ございません。あくまでも兵器が兵器としてその力を最大限発揮できるよう取り計らうのみ」 「…」 漣は少しだけ俯き加減に部屋の壁のほうを見た。 *

2015-10-27 03:01:25
星雲の漣@ありがとうございました @YNebulaSub

* 「それならそれでいいのだが、君はもう少し誤解を受けないようにやってくれ」 「前向きに努力いたします」 「もうすぐ次の作戦海域があるのだから、尚更各軍の連携が大事だ」 「おっと…もうそういう時期でしたね」 *

2015-10-27 03:02:05
星雲の漣@ありがとうございました @YNebulaSub

* 「詳細については君達が持ち場に戻る頃にはまとまった報告ができると思う。それを待っていてほしい」 「承知いたしました」 「…以上だ。何か聞きたいことは?」 「特には」 「では、ご苦労だった。帰ってよろしい」 「失礼致します」 …その退出間際。 *

2015-10-27 03:02:44
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