黄昏町(九板)八日目
- hiiragi_r_t_d
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わたしはまた、黄昏の町を歩いていた。 いつものセーラー服。血の痕は綺麗に消えていた。 「……はぁー」 昨日頂いた豚汁のおかげで、空腹感はない。でも。 「なーんか、足りないんですよね……」 物足りない。腹が満たされても、心が満たされない。 01 #hollytk
2015-10-14 22:02:20不意に、一陣の風が吹く。 「……!」 風が、甘い香りを運んで来た。 わたしは三つの眼を閉じ、僅かな香りを感じる事に全力を注ぐ。 「これって……」 間違いない。この僅かな苦みと甘みの混じり合う芳しい香りは……わたしの大好きな、カカオだ。 02 #hollytk
2015-10-14 22:04:18「はあ……」 わたしはうっとりと香りを楽しむ。鼻腔から頭へと、甘い香りが抜ける。知らず知らずのうちに瞳が潤み、頬が赤く染まる。 「いい……早く食べたいです……」 ペロリと舌なめずりをしながら、わたしは香りの出処を探す事にした。 03 #hollytk
2015-10-14 22:07:03額の眼を見開きながら、風上へと向かう。 「うーん……良いカカオの匂いです」 きっと美味しいチョコレートを溶かしているのだろう。 「うふふ……」 ここはこんな町で、チョコレートなんてあるわけがないのだけれど。 「それでも、期待しちゃいますよねー」 04 #hollytk
2015-10-14 22:09:08わたしは走り出した。この先に、あの至高の甘味がある。そう考えるだけで体に活力が満ちるような気がした。 キュウキュウと胸を締め付けるような渇望と甘い匂いがもたらす幸福感を感じながら、わたしは路地を駆ける。 05 #hollytk
2015-10-14 22:11:09「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」 わたしは大の字になって、アスファルトの路面に転がっていた。 「なんでっ……見つからっ……ない……んです……かね……」 こうしている今も、甘い匂いは絶えずわたしに届き、嗅覚野からは痺れるような快楽が放たれ続けている。 07 #hollytk
2015-10-14 22:15:18早く、早くこの匂いの元を食べたい。耐え難い渇望に、わたしは生唾を呑み込む。 しかし疲れ切った身体は弛緩し、熱っぽい息を漏らしてばかりで立ち上がることもできなかった。 「……はぁー」 沈む夕陽を額の眼だけで眺めながら、わたしは呟いた。 08 #hollytk
2015-10-14 22:17:29──────── 【八日目】 【生存】 【魂±0】 【魂13/力1/探索2】 【異形】三ツ目(力+1、探索+2) 10 #hollytk
2015-10-14 22:19:41[町]どこからか、君の好物の匂いがしている。狂おしいほど懐かしい。口に入れればきっと心の底から癒される、と君は強く予感する。《探索3以上で発見【魂+3、不要な異形を1つ捨てることができる】》 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541547 #hollytk
2015-10-14 22:19:53