◇黄昏町と私◇その８
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RiverInWestern
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鹿奈しかな a.k.a SS
@RiverInWestern
ちょうど身を起こすところだった彼女に、私は手を差し伸べた。彼女は目を丸くして私を見やる。あ、この腕で起こそうとするのは失敗だったかな……力加減間違えると怪我させちゃうし。「……ええ、ありがとうございます」が、彼女は私の手を掴み、立ち上がった。9 #4215tk
2015-10-17 17:54:09
鹿奈しかな a.k.a SS
@RiverInWestern
掴まれたときに伝わってきた力に、私は少し驚く。長袖の服のせいでわかりにくかったけど、ひょっとしてこの人も鬼の力を持っているのでは？それに背後に覗くのは竜の尻尾だし、よく見ると額に三ツ目がある。なんだか異形が似ているな。ちょっと仲間意識を覚えた。10 #4215tk
2015-10-17 17:57:12
鹿奈しかな a.k.a SS
@RiverInWestern
「助かりました。水を飲もうとしたら、不注意で罠にかかってしまって」彼女が改めて頭を下げる。背が高いなあ。物腰も相まって、大人の女性って感じだ。ちょっと憧れちゃうね。「いえ、こういうときはお互い様へぶっ」口を開いた私の横っ面に、飛んできた何かがぶつかった。11 #4215tk
2015-10-17 18:00:17
鹿奈しかな a.k.a SS
@RiverInWestern
『あ、ん、た、ねぇーッ！人をなんだと思ってんのよ！？』びゅんびゅんと私の周囲を飛び始めたのは明里ちゃんである。むむ、なぜこんな怒ってるのか。「こんなときになにをいってるんですか。親友だと思ってますよ」『親友を投げんじゃないわよ！』「友達を蹴る人だっていますし」12 #4215tk
2015-10-17 18:03:11
鹿奈しかな a.k.a SS
@RiverInWestern
「……それは、ボールが友達、という類の話？よくわからないけれど、あまりそういうのと一括りにしてしまうのは可哀想だよ」窘められてしまった。彼女はほんの少しだけ片眉をあげ、私の周りを飛んでいる明里ちゃんを見る。「その火玉、明里ちゃんっていうのか」「ああ、はい」13 #4215tk
2015-10-17 18:06:05
鹿奈しかな a.k.a SS
@RiverInWestern
彼女は改めて深々とお辞儀をする。「ありがとう、明里ちゃん。あなたのおかげで池にはまらずに済んだ。礼を言うよ」『あ……』明里ちゃんがぴたりと動きを止める。炎が風もないのに揺らめいた。ははあ、これはあれか。照れているのか。『ね、ねえ』「なんです？」14 #4215tk
2015-10-17 18:09:12
鹿奈しかな a.k.a SS
@RiverInWestern
『あの、どういたしましてって伝えてくれる？あたしの声、聞こえないだろうしさ』「ああ、はいはい。いいですよ」了承し、彼女へと向き直る。「べ、別に助けたくて助けたわけじゃないんだから！勘違いしないでよねっ！とのことです」ぼふ。私の横面に再度明里ちゃんがぶつかった。15 #4215tk
2015-10-17 18:12:09
鹿奈しかな a.k.a SS
@RiverInWestern
「……ええ、実際はどういたしましてと言っていました」「あはは。まあ、そんなことだろうと思ったよ」愉快そうに彼女が笑う。ちょっとしたジョークのつもりだったんだけど、明里ちゃんは機嫌を損ねてしまったようだった。繊細なお年頃というやつだ。たぶん。1 #4215tk
2015-10-17 18:15:13
鹿奈しかな a.k.a SS
@RiverInWestern
そういえば、いつの間にか彼女の口調が砕けている。それなりに信用してもらえたのかなあ。それとも……子供っぽいと見られてしまったのか。どっちだろ。「じゃあ、私はそろそろ行くとしようかな」「そうですか、じゃあ私も」と、私は横手を見やる。そこに痩身の影があった。2 #4215tk
2015-10-17 18:18:09