#空想の街 ハンツピィの宴2015 #作家と女房

タイトル通り空想の街、ハンツピィの宴です。前回より編集かけてます。
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佐和島ゆら@星月堂へようこそ(新作)販売中 @sawajimayura227

初めて見る不思議が、彼の存在を自分から盗んでしまうのではと思ってしまう。役所を出ると雨が降っていた。油断して少し薄着だった女房に、作家は上着を渡した。ぶかぶかだが温かい 「ありがとうございます。でもこれじゃあなたが冷えて」 作家は平気だと短く答えた。#作家と女房 #空想の街

2015-10-24 13:34:45
佐和島ゆら@星月堂へようこそ(新作)販売中 @sawajimayura227

傘屋が下手な鼻笛を吹いて傘を売りに来る。作家は声をかけると旅人だと感づいたのか、ずいぶんな値段で傘を売りつけていた。 作家は黙って傘を買ってしまった。 女房は思わず作家を睨む。必要以上のお金を使うのは抵抗があった。 作家は困ったように眉を下げて傘を開いた。#作家と女房 #空想の街

2015-10-24 13:38:02
佐和島ゆら@星月堂へようこそ(新作)販売中 @sawajimayura227

「あら、風車。すごく綺麗ね」 「買いたいのか?」 「いえ、ただ綺麗だなと思っただけで」 「……」作家は一度俯くと顔を上げ、とつとつと雨を踏みしめて風車をつけて歩く青年に声をかけた。 「すまないが……」 @nowhere_7 #赤風車 #作家と女房 #空想の街

2015-10-24 13:47:08
佐和島ゆら@星月堂へようこそ(新作)販売中 @sawajimayura227

女房は仰天した。作家はあの青年から風車を買い取ろうとしている。 慌てて女房は作家を追いかけた。#空想の街 #作家と女房 #赤風車

2015-10-24 13:50:42
不可村天晴/ネプリ配信中 @nowhere_7

@sawajimayura227 小雨がしんみりと一文字の肩を濡らす。やれやれ羽織が傷まんといいが、そんな風に思って弁慶を傾ければ、そこに生真面目そうな、それでいて穏やかそうな夫婦が立っていた。 「いい秋の雨だな――旅の者か?道に迷ったのか」 #赤風車 #空想の街 #作家と女房

2015-10-24 13:51:21
佐和島ゆら@星月堂へようこそ(新作)販売中 @sawajimayura227

@nowhere_7 「そうだ、今日この街に来た。さいわいまだ、迷ってはいない。すまない、君の持っている風車だが私に買わせてもらえないか? もちろん金は払う」 女房が目を開いて、けれどもそつのない走りで近づいてきた。 #作家と女房 #空想の街 #赤風車

2015-10-24 13:56:44
不可村天晴/ネプリ配信中 @nowhere_7

@sawajimayura227 「お客人か。俺の風車に目を止めてくれるとは嬉しいよ、旦那。小さいものは5クルークだ」好きな色と大きさを、と弁慶を差し出しとりどりの風車を見えるようにする。「この風車はお喋りでね。こうして持ち手を銜えると――」→ #赤風車 #空想の街 #作家と女房

2015-10-24 14:00:09
不可村天晴/ネプリ配信中 @nowhere_7

@sawajimayura227 鳴るのだよ、と一文字は説明しながら、持っていたものを吹き鳴らした。静かな秋雨の通りに、場違いなような珊瑚の音が鳴り渡る。 「こういうわけだ。鳥よけ、子供あやし、土産にと何にでも使ってくれ」後ろの女性にも言う。 #赤風車 #空想の街 #作家と女房

2015-10-24 14:02:53
佐和島ゆら@星月堂へようこそ(新作)販売中 @sawajimayura227

@nowhere_7 女房は不可思議な音を立てるそれを見て、目を丸くした。 可愛らしい小さな風車から不可思議な音に耳が奪われる。 「迷子になりそうな人にもつけても、いいでしょうね。音で居場所を教えてくれそうだわ」#赤風車 #作家と女房 #空想の街

2015-10-24 14:06:03
佐和島ゆら@星月堂へようこそ(新作)販売中 @sawajimayura227

@nowhere_7 作家は女房の言葉がよく分からなさそうに頭を傾げたが、女房が心を柔らかくしたことは何とか察した。 「買っても良いな」 「あなたも買って下さいね」 「何故?」 「風車兼迷子札です」 「……」作家はそういうことかと口を引き結んだ。#赤風車 #作家と女房 #空想の街

2015-10-24 14:08:27
不可村天晴/ネプリ配信中 @nowhere_7

@sawajimayura227 「迷子札とは名案だ。ご婦人、お主の言う使い方もまたいいものだね。暫しそこへ」売り物にはならないのではと思いつつ、賑やかしに飾っていた一番小さなものを何本か抜きながら一文字は口の端で笑う。「無論風でも鳴る。さあ」 #赤風車 #空想の街 #作家と女房

2015-10-24 14:10:04
佐和島ゆら@星月堂へようこそ(新作)販売中 @sawajimayura227

@nowhere_7 女房はひっそりと笑い、風車を受け取った。 「こうでもしないと、私の夫はどこかに行ってしまいそうなの。ほんとう……不思議なものに好かれてしまうもので。この風車なら見つけられそうだわ」 女房はふと上の空になっている作家を見る。#赤風車 #空想の街 #作家と女房

2015-10-24 14:17:00
佐和島ゆら@星月堂へようこそ(新作)販売中 @sawajimayura227

@nowhere_7 彼は今、何を見ているのだろう。目の前で降る雨なのか。風車を売る青年か。それともエッセイか。それとも彼の魂を食べたい不思議なものか……。女房は作家を放したくなかった。だから風車は彼女の小さな拘束だ。#空想の街 #作家と女房 #赤風車

2015-10-24 14:20:53
不可村天晴/ネプリ配信中 @nowhere_7

@sawajimayura227 一文字は、目の前にいるのにも関わらず異国を彷徨う瞳をした男性を見る。女性は随分と彼のことを心配しているようだった。 「ご婦人、どの色がお好みかね。それは5クルークのものより小さいものだ、3クルークでいい」 #赤風車 #空想の街 #作家と女房

2015-10-24 14:24:35
佐和島ゆら@星月堂へようこそ(新作)販売中 @sawajimayura227

@nowhere_7 女房はすくりと背筋を伸ばした。 「そうですね。私はこの5ルークの紅梅色のものをいただきたいわ。彼には濃い紫の3ルークのものを」 作家はふと意識を取り戻したかのように、正気を宿した瞳で女房を見た。 #作家と女房 #赤風車 #空想の街

2015-10-24 14:29:47
不可村天晴/ネプリ配信中 @nowhere_7

@sawajimayura227 「承知した。包まぬほうが宜しいか」代金を受け取り、一文字は婦人の細い掌へ風車を渡した。 男性の意識は浮上しないように思えたが、この分では己の風車の音など必要ないかもしれない。ふたりを見て一文字はそう感じる。 #赤風車 #空想の街 #作家と女房

2015-10-24 14:39:30
佐和島ゆら@星月堂へようこそ(新作)販売中 @sawajimayura227

@nowhere_7 女房は作家の服のベルトに風車をつける。そうして自分の服の腰帯にもつける。 これで大丈夫でしょうと急に抱えていた怖さが薄れゆくのを感じた。 女房は青年に頭を下げる。 「ありがとう、良い買い物をさせていただいたわ」 #赤風車 #作家と女房 #空想の街

2015-10-24 14:44:54
不可村天晴/ネプリ配信中 @nowhere_7

@sawajimayura227 「お客人に恵まれて風車たちも嬉しかろう。宴は明日夜が本番だ、どうか楽しんでいってくれ」 礼儀正しく物静かなふたりを見送り、一文字が手を一度上げる。何か思いつめたように訪れた彼らだったが、きっと大丈夫だろう。 #赤風車 #空想の街 #作家と女房

2015-10-24 14:48:38

夫婦げんかinさるカフェ

佐和島ゆら@星月堂へようこそ(新作)販売中 @sawajimayura227

@sarukotonagara「さる、カフェ?」 入ったカフェには女性の店主らしき女性が忙しそうにしていた。 手早く出来るものを頼むと店主は愛想良く頷き、キッチンへと軽やかに向かった。 「すごく良い雰囲気な女性ね。安心するわ」女房は言った。#さるカフェ #作家と女房 #空想の街

2015-10-24 15:16:41
さることながら@さるカフェ @sarukotonagara

手早くできるもの…そうね、寒いし細いパスタでスープ仕立てなんかどうかしら。@sawajimayura227 #さるカフェ #作家と女房 #空想の街 お待たせいたしました。『蝶々の煌めき』のブイヨンと『髪の華やぎ』の甘煮のスープのパスタです。『不器用な恋慕』のチーズでどうぞ。

2015-10-24 15:22:36
佐和島ゆら@星月堂へようこそ(新作)販売中 @sawajimayura227

@sarukotonagara 二人でばたばたしている最中に店主が注文の品を持ってきてくれた。顔を紅くして、受け取る。作家はよく分からない顔をしている。 湯気の立つパスタは美味しそうで、とりあえず休戦して、二人でいただきますをする。#さるカフェ #作家と女房 #空想の街

2015-10-24 15:28:40
佐和島ゆら@星月堂へようこそ(新作)販売中 @sawajimayura227

「じゃあ話をしよう?」 立ち上がる作家の服を女房はぐいっと引っ張った。 「なんでそうなるの」 「何で? 良い人なら話してみると良いだろう」 「今お昼なのよ。飲食店なら、生きるか死ぬかの戦場なのよ」 「花月、君は何でそんなこと詳しいんだ」#空想の街 #さるカフェ #作家と女房

2015-10-24 15:29:55
三木 学@読書&創作垢 @jackman0774

@sarukotonagara #さるカフェ #古本屋ジャック #空想の街 #赤風車 #作家と女房 食事をひととおり終えて、顔を上げると客が自分の他にもいたことを今更ながらに知る。さて、どうしようか…。食事を終えて、街を廻るか、もう少し店に残るか。この店は居心地がいい。

2015-10-24 15:30:56
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