空想の街・ハンツピィ'15 最終日 #赤風車

こみや@空想の街 @Ne2_co

@nowhere_7 「――ほう、こりゃあいい」櫛巻きの要領で緩やかに結い上げられたその髪の様を手鏡の中に落とし込む。向かう姿見には、合わせ鏡の要領でその透明な風車と、ぼうと立つ一文字の姿が映り込んでいた。「とんだ持参金だね、店子さん」と振り返る。 #空想の街 #赤風車 #曳舟荘

不可村天晴／ネプリ配信中 @nowhere_7

@Ne2_co 風車の羽が、明かりを反射し、身動ぎする度に髪の黒が映り込む。これならどんな色に変わろうと映える。 併し、 ――間合いを一気に詰め、結い上げたばかりの髪からそれを引き抜く。鏡越しに目が合った。「このままのほうが余程いいよ。ヒキフネ殿」 #曳舟荘 #赤風車 #空想の街

こみや@空想の街 @Ne2_co

@nowhere_7 ヒキフネは驚いた。ああこんなに驚くの何時ぶりかしらん、と思いながら、その瞬間、体が動いていた。「それはどうも――でも、一旦もらったものを手放すほどにんげんが出来ていなくってね」一文字の手ごとヒキフネの手が風車を捉えている。 #空想の街 #赤風車 #曳舟荘

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@Ne2_co こちらを向き様閃光を放った瞳を一文字は黙って見つめ返した。――背が同じほど、そもそも男だ、掴まれた手も力が籠められている、それでも、「…何も渡さぬとは言っていない。俺とて一度贈ったものを奪い返す程の外道では、」 そこで口を抑える。→ #曳舟荘 #赤風車 #空想の街

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@Ne2_co 「すまん」放してくれ、と風車を渡し身を引いた。駄目だ。午後ずっと襲っていたものが形になる、此処を離れなければ。「…二階の荷には触れないでくれ。今日はお暇させて頂くよ、週に一日程しか帰らぬやも知れぬが金は払う」そして玄関へ急ぐ。 #曳舟荘 #赤風車 #空想の街

こみや@空想の街 @Ne2_co

@nowhere_7 「ちょっと、」はたと振り返った時にはもう一文字は部屋を飛び出していた。 #空想の街 #赤風車 #曳舟荘 「ひゃっ！」玄関口から見慣れぬ姿と行き会って思わず小さな叫び声を上げたのはちどりだ。「あ、かざぐるまの」とその急き込んだ姿に、先日の出来事を思い出す。

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@Ne2_co 玄関でぶつかりそうになったのは件の幼子たちだ。何か言うべきだと思ったが世話になることも風車のことも告げず、一文字はただ見上げてくる二人の頭をたった二秒程撫で、下駄を突っ掛けると夜の街へ抜けていく。 ――無礼を許してくれ。 #曳舟荘 #赤風車 #空想の街

こみや@空想の街 @Ne2_co

@nowhere_7 「お兄さん――」ふわり、とたなごごろの感触だけを残して、一文字は夜に飛び出していく。そこに、「一文字！」常には聞かない鋭い声が飛ぶ。「ちゃんと――戻ってくるんだよ！」下駄の音は遠のいて遠のいて、とうとう聞こえなくなった。 #空想の街 #赤風車 #曳舟荘

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ひゅ、と頭上を通り過ぎるように何かが飛んだ気がした。下駄が止まりかけたのは一瞬で、一文字はそのまま口を抑え森へ直行する。 深夜を回った。もう住宅の灯も消えつつある。がっしりとした樹に片手をつき、ずっと押さえていた手に向かって思うまま噎せこんだ。 #赤風車 #空想の街

不可村天晴／ネプリ配信中 @nowhere_7

荒い呼吸が落ち着くまで時間がかかる。手の中にぶちまけられたものを見て、何だ少ない、と脂汗の浮かぶ顔で己を嘲笑った。 生きていることはこんなにも重い。時間がない―― 早く来い、あの町から此処まで己を追ってくるがいい。 #赤風車 #空想の街

不可村天晴／ネプリ配信中 @nowhere_7

@TOS #赤風車 一つ、名から逃げぬこと――、 しつこく言われなくとも逃げる気などない。逃げたふりをして虎視眈々と狙っているだけだ。討つ機会を、ふたたびあの檻と向き合う瞬間を、そして己を含めすべてを終わらせる日を。 こんなにも心待ちにしているその未来をむざむざ無に帰す筈はない。

不可村天晴／ネプリ配信中 @nowhere_7

この街も守ってみせる、自分ひとりぬくぬくと此処で守られ続けるつもりなど端からなかった。去年住むと決めた時から、ずっと思っていたことだ。 この街に着く手前で迎え討ってやる。誰ひとり、巻き込みやしない、 ――一文字は夜の森の中、いつまでもそうしていた。 #赤風車 #空想の街

不可村天晴／ネプリ配信中 @nowhere_7

「――ああ楽しかった！お祭りって本当に素晴らしい。ここまではねを伸ばせたのはいつぶりかしら、こんなにいい街があったなんて。生死も男女も老いも若いも、混ざり合うのが一番ね。でもそれにしてもあの実――」 「ええ、お嬢様にそっくりで。またきっと、来れますでしょう」 #赤風車 #空想の街