#空想の街・ハンツピィ宴2015【#飴渡り】

遊稀🌸 @La_trampara

@hmoegi 「そうです」大きな帽子が陰を生んで、その人を詳しく見せてはくれない。心地良く響く声からも性別は感じ取れなくて、シンはこっそり首を傾げた。不思議な、ひと。「あの、色を売っていますか？」考えずに口を開いたら微妙な聞き方になってしまった。 #空想の街 #飴渡り #色売り

萌葱［moegi］ @hmoegi

帽子の陰で、思わずくすり、と笑った。それは、そうだろう。きっと随分不思議なものに見えるはずだ。「私は #色売り 。小瓶に色を詰めて、お譲りしています。なにか御入用ですか」籠の中で、色小瓶がほんのりと光る。 @La_trampara #空想の街 #飴渡り

遊稀🌸 @La_trampara

@hmoegi くすり、と笑われたような気がして、思わず頬が暑くなった。性別も、年齢も分からない人なのに照れてしまう。「お祖父ちゃんに頼まれて。飴に使う色、下さい」こんな飴、と鞄から木箱を取り出して見せた。並ぶのはとんぼ玉のような澄んだ色の飴たち。 #空想の街 #飴渡り #色売り

萌葱［moegi］ @hmoegi

木箱の中には色が詰まっていた。鮮やかな、あるいは控えめな色が、蜻蛉玉のように丸く閉じこめられて並んでいる。綺麗だ、と思った。何色でもありそうな飴だ。@La_trampara 「もちろん、喜んで。お好きな色味や、できあがりのイメージはありますか」#空想の街 #飴渡り #色売り

遊稀🌸 @La_trampara

@hmoegi 好きな色味や、できあがりのイメージ…お祖父ちゃんは何を言ってたっけ。そう。「初めて。初めてグラデーションに挑戦するって。だから、色売りさんの思う色をって、言ってました」あの人の色はいつも素敵だから、詳しい注文は必要ないと笑っていた。 #空想の街 #飴渡り #色売り

萌葱［moegi］ @hmoegi

「初めての、グラデーション、ですね」徐々に移り変わる色。季節や、空のような。「 #紅葉黄金（もみじこがね）か、#冴暁（さえあかつき）。 #春先桜（はるさきさくら）も良いかもしれませんね」色はきっと、言葉の中に住んでいる。@La_trampara #空想の街 #飴渡り #色売り

遊稀🌸 @La_trampara

@hmoegi 色を呼ぶ声に合わせて、シンの中にも浮かびあがる。山を染める赤や黃、空に広がる金、幹に滲むピンク。どれも素敵で飴にぴったり。「ふたつでもいい？ #春先桜 と #冴暁 欲しいんです」お使いとは別に、自分の分も欲しくなってしまったのだ。 #空想の街 #色売り #飴渡り

萌葱［moegi］ @hmoegi

「どうぞ、お持ちください」受け取った少年の手の中で、光がふたつ、とろりと揺れる。掌が夜明けに染まる。見惚れる少年に微笑みかけたとき、その頬に春が映った。「綺麗な飴になりますよ。お祖父様にも宜しくお伝えください」@La_trampara #空想の街 #飴渡り #色売り

遊稀🌸 @La_trampara

@hmoegi 小瓶の中で光が揺れる。とろりと緩やかに蜜のように。どちらかと言うと #春先桜 の方が濃いような揺れだった。「すてき」うっとりとした声は、すでにどう飴にするか考え始めている。「ありがとう、ございます。お代は、いくらですか？」 #空想の街 #色売り #飴渡り

萌葱［moegi］ @hmoegi

少年の手からコインを受け取り、#色売り はまたにっこりと微笑んだ。「あなたにも、お祖父様にも、良い飴になりますように」色の持つ風味に思いを馳せる。凛と澄んだ、或いはふわりと春の香る、美しい飴になるのだろう。@La_trampara #空想の街 #飴渡り

遊稀🌸 @La_trampara

@hmoegi 「いい飴になりますように」優しい響きで言われて、シンはにっこり笑った。「絶対、なります」添う夜明けの暖かさのような、柔らかく滲む桜のような、そんな眼差しを帽子の奥から受け取って。「また会えたら、嬉しいです」シンはぺこりと頭を下げた。 #空想の街 #色売り #飴渡り

萌葱［moegi］ @hmoegi

「こちらこそ。きっと、またお会いしましょう」大きな帽子を傾けて、#色売り は小さく会釈する。@La_trampara どんな飴になるのか、楽しみだ。少年の背中を見送りながら、その色と味とを想像して、それがあの木箱に並ぶ様子を想像して、またふわりと笑った。 #空想の街 #飴渡り

遊稀🌸 @La_trampara

まだ街が静かに眠る早朝、シンは中央に建つ時計塔を見上げていた。緑草鹿の皮で作られた柔らかい濃紺のポンチョを羽織り、黒いズボンに同じ黒の頑丈そうなブーツをはいている。シンの旅姿だ。ポンチョで隠れた白い大きなショルダーバックには、たくさんの思い出が増えていた。 #空想の街 #飴渡り

遊稀🌸 @La_trampara

時計塔は街のシンボルに相応しく、街のどこからでも目印に出来るほど高い。シンの小さな身長では時計を見るので精一杯で、先端までは到底見えなかった。「不思議な、ひと。不思議な、まち」ひとり渡り歩く見知らぬ客であったシンに、そっと寄り添ってくれた親切さに感謝する。 #空想の街 #飴渡り

遊稀🌸 @La_trampara

柔らかに微笑む #色売り の小瓶は、割れないようにタオルで包んだ。一文字の薄氷色の風車は潰れぬようバックの紐穴に通した。 #さるカフェ の珈琲はまだ舌先に薫りがある。「すごく、ありがとう」 またこの街に来よう。きっと、おかえりと迎えてくれるから。 #空想の街 #飴渡り #赤風車