第一話・名付け

2215年
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とこ@幼神 @tokoshiratohime

???はまだ自分が生まれた事に気づいていません。

2015-11-08 13:18:01
とこ@幼神 @tokoshiratohime

???は白い視界の中でぼーっとしています。

2015-11-08 13:27:49
とこ@幼神 @tokoshiratohime

「………と…、…とこ」 ???は誰かに名前を呼ばれたような気がしてそちらに顔を向けました。

2015-11-08 13:29:22
とこ@幼神 @tokoshiratohime

するととても大きな手が左右から自分を掬い上げ、優しくゆっくりと、???は誰かの前に掲げられました。

2015-11-08 13:31:02
とこ@幼神 @tokoshiratohime

何が起こったか分からず、けれど何故かなんの不安も起こらず、とりあえず???は誰かの手の上でぷるんと体を震わせました。

2015-11-08 13:32:21
とこ@幼神 @tokoshiratohime

するとまた、誰かの声がしました。 「私の妻よ、私の声が聞こえますか。」 ???は呼ばれた何かは小さくうなづきました。 「では、私の姿は見えますか」

2015-11-08 13:35:52
とこ@幼神 @tokoshiratohime

そう言われて???ははじめて自分の目が見えない事に気付きました。首をひょこ、と傾げてから目に手をやろうとし、その両手もまた、細くぷにぷにした、二本の棒になってる事に気付きました。

2015-11-08 13:37:26
とこ@幼神 @tokoshiratohime

ぴょぴょぴょ、と慌てながら震えていると、???の頭を誰かの手がとても優しく撫でくれました。 「大丈夫ですよ。貴方はまだ生まれたばかりであるだけです。時期に成長し、元の姿を取り戻すでしょう」 その言葉に???はまたぴょこ、と首を傾げました。

2015-11-08 13:40:02
とこ@幼神 @tokoshiratohime

生まれたばかりなのにどうしてこの人は私の事を妻と呼んだのだろう。 「それはまだ、貴方が生まれ変わる前に私を夫として認めてくれたからです。」 誰かがまた、優しく言いました。

2015-11-08 13:44:40
とこ@幼神 @tokoshiratohime

「私の名前は野分大太刀之命(のわきおおたちのみこと)。そして我が妻よ、貴方の名は刀呼白兎日女之命(とこしらとひめのみこと)と言います。」 野分大太刀之命と名乗ったその人に名前を呼ばれた瞬間、刀呼白兎日女は自分に質感が生まれたことを感じました。

2015-11-08 13:47:11
とこ@幼神 @tokoshiratohime

ぼんやりとした魂だけの存在が名を名付けられることではじめて輪郭を得たようで、刀呼白兎日女はそこではじめて自分がぷにぷにした水饅頭のような小さな塊である事と、自分の夫の手が硬く、暖かなものであると知りました。

2015-11-08 13:49:39
とこ@幼神 @tokoshiratohime

「刀呼白兎日女之命、しかし貴方にはまだこの名前は重いでしょう。人の形を成すまで私は貴方の事を〝とこ″と呼びます。私の名前も、長いのでしたら〝のわ″で構いません。」 のわ様。 「はい」 とこは少し体を伸ばして考えると、相手の名前をそんな風に呼んだことがない事に気付きました。

2015-11-08 13:54:16
とこ@幼神 @tokoshiratohime

?と、また首をかしげると野分大太刀之命はそこだけふわふわとしたとこの髪の毛を撫でながらまた言いました。 「そうですね。元々私は別の名前を持っていました。貴方の魂は、太郎太刀という呼び名の方を覚えているかもしれません。」 その名前なら大好きな人だ、ととこは嬉しそうに弾みました。

2015-11-08 13:57:43
とこ@幼神 @tokoshiratohime

「ちなみにその頃は、…と言っても太郎太刀は今も私の御神体の名ですが、人間の時、貴方は許陽色という名前でした」 あんまり覚えてないけれど、相手が陽色とよく呼んでくれたことは覚えているのでとこはまたぽよぽよと弾みました。

2015-11-08 14:00:13
とこ@幼神 @tokoshiratohime

「とこ、貴方は私の妻となり、人から神へと生まれ変わりました。しかし神とはいえ貴方はまだ赤子。育つまではけして私のそばから離れずにいなさい」 素直にうなづくとこをゆっくりと下ろすと、大きな自分の膝に乗せて野分大太刀之命は言いました。

2015-11-08 14:04:27
とこ@幼神 @tokoshiratohime

「ここは野分大社が本殿、私の、そして貴方の家です。時に来社した人間の様々な声が聞こえてくることでしょう。貴方は元人であった身、それらの声と交わることで早く姿を取り戻すかもしれません。急ぐ必要はありませんが恐れる必要もない。邪念があれば私が守りますから、好きに自由に過ごしなさい。」

2015-11-08 14:08:14
とこ@幼神 @tokoshiratohime

こうして審神者の任を解かれた陽色は太郎太刀の嫁として生まれ変わりを果たしました。 時は2215年、野分大社が出来た1215年から丁度千年後の事でした。

2015-11-08 14:10:11