第二話・卯の刻

夜明けの時間に
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とこ@幼神 @tokoshiratohime

卯の刻 太郎太刀は千年を夢見ていた。 陽色がいない千年を。 彼女に出会った2215年から敵の残党の全勢力が残る1215年に送られ、神風を起こし勝利しそして その時代の人間に祀られ、神社を建てられ囚われた。 戻れなくなった2215年にいるはずの恋人を千年耐えて待ち続けた。

2015-11-10 00:48:42
とこ@幼神 @tokoshiratohime

それはさながら冬の夜のような、長い長い時間だった。 明ける時刻は分かっている。 しかしその時のなんと遠いことか。 夜が更けるごとに気温は下がり、星が増えるほどに闇は深くなる。 孤独を忘れるために仕事に没頭し、寂しさを埋めるために人に尽くした。

2015-11-10 00:52:59
とこ@幼神 @tokoshiratohime

そして御神体もないまま祀られた台風は小さな御堂から八幡、弟、そして己の身を得てまた数百年、ついには大社と呼ばれるまでに大きくなった。 そして そして千年 卯の刻、日の出の時よ 「すー、すー」 目を覚ませば朝日の中で小さな小さな妻が心地よさそうに眠っていた。

2015-11-10 00:57:14
とこ@幼神 @tokoshiratohime

生来の真白い体 まだ開かぬ赤い瞳 自分の小指一つを抱えて眠る拙くも確かな生命に、欠伸をする前に涙が出た。 ずっと、会いたかった 妻を起こさぬよう静かに指を引き抜くと、脹脛まで伸びた長い黒髪をきつく結い直した。 さあ、美味しい朝食を用意しましょう。 常世での彼女のはじめての食事を

2015-11-10 01:03:28