引きこもりゲーヲタだけど寝て起きたら秘密結社のリーダーになっていた件(仮題)

思い立ったパラレル設定で原作・アニメを超訳したら意外とつじつまがあったので突き進んでみた結果です。
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一白 @ippaku_u

@TOS 「ゲームだよ、ヒーロー。あんたは俺は俺から守り切るんだ」 違った。この世界の秘密を知っているわけではない。青年は安堵しながら、細い喉を握るクラウスの手をじっと見る。「お得意の、希望をな!」希望なんて得意ではない。”あの時”から、ずっと絶望しながら3年過ごしてきた。

2015-11-07 22:59:56
一白 @ippaku_u

@TOS 背後からプロップの気配がした。抵抗のかかる体を動かして、青年は絶望王を抱き込んだ。こいつは裏ボスっぽいのになぜ助ける、と戸惑う。あのバグが、レオナルドがやってきてから、青年は戸惑う事ばかりだった。ゲームを参考にして話せない動けない。いままで培ってきたクラウスという皮を

2015-11-07 23:03:22
一白 @ippaku_u

@TOS 皮が脱げないように、必死でしがみついてきたのだ。 ああ、だからか。青年は気付く。青年はクラウスを3年間演じてきたニセモノだったが、3年は青年をクラウスに寄せる。 世界を救うためにウィリアムを殺してはならない。 これはクラウスの直感であり、青年の気持ちだった。

2015-11-07 23:07:41
一白 @ippaku_u

@TOS 身を呈して守られた絶望王は、人間をあざ笑いながら自嘲する。先程の肉体操作といい、いつ死んでもよさそうな諦念を感じた青年は、背中の大岩の重みと肉体操作の抵抗をねじ伏せながら口を開く。「私は決して己を諦めているわけではない」 ゲーム。これがゲームと言うのか。

2015-11-07 23:13:12
一白 @ippaku_u

@TOS 降りる気まんまんの相手とゲームなんて、死ぬほどつまらないだろう! 「ゲームはいずれ盤上で。それが叶わぬのなら、今は貴殿に眠っていただくほかない」 「お前、俺を使って憂さ晴らししやがったな」 初見のボスは様子見なんて定石なのに、ヘンな勘違いをされる。

2015-11-07 23:15:32
一白 @ippaku_u

@TOS 「義眼のガキか。なんでお前があいつの事まで背負う必要がある。ずうずうしい奴」 青年は胸中で毒づく。レオナルドのことなんて背負っていない。あんな、チビで、やせっぽちで、弱くて、情けない……自分自身と見た目も名前もそっくりな、眩しいくらいにこころが強い奴なんて。

2015-11-07 23:19:35
一白 @ippaku_u

@TOS クラウス・V・ラインヘルツの中に入っている青年の名前は、レオナルド・ウォッチ。3年前に神々の義眼を押し付けられ、最愛の妹を犠牲にし、絶望と自己嫌悪とにまみれて暗い部屋でゲームばかりしていた、チビでやせっぽちで弱くて情けない男だ。

2015-11-07 23:22:15
一白 @ippaku_u

@TOS この世界のレオナルドが泣きながら這いつくばって生きる強さに、目が眩んだ。自分と同じ人間が、自分には出来ないことをしている、と。 それでも、思わないわけではなかった。あのレオナルドにできるのならば、このレオナルドにもできるのではないか?

2015-11-07 23:28:27
一白 @ippaku_u

@TOS バグだと思ったのだ。本当にバグなら、関わることがないよう消して(殺して)しまえば良かったのだ。それをしなかったのは、彼に、希望の光を見たからではないだろうか。 青年は思い出す。「光に向かって一歩でも進んでいる限り」、とレオナルドに言った。 青年の光は、この世界のレオだ。

2015-11-07 23:30:40
一白 @ippaku_u

@TOS 「貴殿が先刻己に課したように」 勝手な自分ルールで縛ったゲームによる自傷の手伝いなんてごめんだけれど 「私にも順守すべき法<ゲームのルール>と矜持<クラウスとしての自分>があるのです」 絶望王を止めなければレオナルドがここへは来られない。

2015-11-07 23:35:26
一白 @ippaku_u

@TOS 「シャイニング、光を欲している限り、貴方は彼を殺せない。希望を欲しているからこそ、彼を求めたのでは」 この暗い夜に、閉じたゲームの世界に、光をもたらすかもしれないバグ。彼を待ち望んでいるのは、青年も同じだった。

2015-11-07 23:37:38
一白 @ippaku_u

@TOS ヒットポイントはだいぶ削られて、ここへたどりつくまでに必殺技をかなり使っている。どこまで戦えるかはわからないけれど、縛りプレイはファッキン廃ゲーマーの腕の見せ所だ。 「ブレングリード流血闘術、推して参る!」 「俺から俺を救ってくれよ、ヒーロー!」

2015-11-07 23:39:27
一白 @ippaku_u

@TOS 空中戦は初めてだった青年だったが、クラウスとしての身体能力と動体視力でなんとかなると手ごたえを得た。しかし、空間転移からの突き落としは初見で対応しろとか無理難題だ。地面にたたきつけられ、瓦礫に背をあずける形で動けなくなってしまう。

2015-11-07 23:57:39
一白 @ippaku_u

@TOS 絶望王も満身創痍のようだ。息を切らしながら悪態をついている。 「お前がここでくたばっても、きっと、次のお前が、お前を生かすさ」 青年の肝が冷える。何度も考えた、死ねばこの世界を出られるのではという可能性が甘く誘ってくる。

2015-11-07 23:59:42
一白 @ippaku_u

@TOS それに、もし現実世界の自分が死んだとしても、こんなクソ野郎は死んだ方が世界のためなのではないだろうか。霧の無い夜明け前の空はほの青く高く、気持ち良くゲームオーバーになれるのでは。青年が防御のパッシブをオフにしかけた、その時だった。 「そんなの!僕は嫌だ!」

2015-11-08 00:02:07
一白 @ippaku_u

@TOS レオナルドが叫ぶ。そんなものは理由にならないと否定する。 「僕にはまだ、それが本当に正しいのかわからない」 青年もそうだった。ゲームから逸脱したこの状況で、何が最善なのか判断できないのが 怖かった。 「だから、考え続けるよ」 青年はハッとする。し

2015-11-08 00:11:49
一白 @ippaku_u

@TOS 「今度君に会うときは、きっと、今よりもっとマシな答えが返せるように」 思考を放棄していた自分をぐさりと刺されたようで、青年の胸がつかえる。 でも、しかし。 戦闘力皆無のレオナルドが、満身創痍ながらも強大な力を持つ絶望王相手に何ができるのか。

2015-11-08 00:16:10
一白 @ippaku_u

@TOS 「ホワイトォォォー!」 レオナルドは叫び出す。結界と同化した少女、メアリ・マクベスの名を。 「君が!光に向かって!」 虚を突かれた。 「一歩でも進もうとしている限り!君の魂が!真に敗北することなど!断じて無い!! 」

2015-11-08 00:19:17
一白 @ippaku_u

@TOS それはあの日、青年がレオナルド<自分自身>に告げた言葉だった。 立ち止まったままの自分が、這いつくばって前へ進む自分へ送る、賛辞だった。 レオナルドは、それを、友人への鼓舞に使う。 前へ進むべきだと、あきらめるなと。 まるで、道を照らす光を手渡すように。

2015-11-08 00:26:19
一白 @ippaku_u

@TOS 青年が自失しているうちにレオナルドは絶望王にヘッドバットをかます。倒れた青いコートがしばらくして起き上がると、もう全てが終わっているようだった。 おそらく神々の義眼を用いて何かをしたのだろうが、クラウスとしての目には何も起こらなかったように見える。

2015-11-08 00:30:21
一白 @ippaku_u

@TOS 虹色に光る蝶がレオナルドを掠めて青い空へ消えていく様だけが、ミッション終了のファンファーレだった。 レオナルドが瓦礫の丘を登ってくる。心の準備ができていなかった青年は、数メートル離れて立ち止まった彼に自分なりのジョークを言ってみた。うまく通じなかったようなので誤魔化す。

2015-11-08 00:34:30
一白 @ippaku_u

@TOS クラウス・V・ラインヘルツなら、何と言うだろうか。 「見事だった」 とりあえず労うが、そこから何も出てこない。口調だけ取り繕って、語るのは青年自身の気持ちだった。 「今回の件、彼らを救ったのは、君という一人の人間だ」

2015-11-08 00:37:37
一白 @ippaku_u

@TOS レオナルドというバグが無ければ発生しなかったであろうミッションだが、レオナルドがいたからこそ、こんな静かな解決になったのだろう。 考えて考えて考えた、レオナルド。傷だらけで走ってきたレオナルド。 なのに彼はただただ卑屈なすみませんを繰り返すので、青年はイラっとした。

2015-11-08 00:40:29
一白 @ippaku_u

@TOS 「胸を張り給え、レオナルド・ウォッチ」 自分だからこそわかる。ここに至るまでにどれだけ恐怖したか。それでも彼はここにいる。 「私は君を」 褒めたいのか。ちがう、そんな上からの気持ちじゃない。 「誇りに思う」 君は、僕の光だ。青年は口に出さずに付け足した。

2015-11-08 00:43:33
一白 @ippaku_u

@TOS グールの掃討を終えたらしいライブラメンバーがやってくる。スティーブンに肩を借りた青年は、レオナルドに拳を突き出した。 予感があった。このゲームは、エンディングを迎えたのだと。 元の自分に戻った時に、レオナルドのような強さを持てるかはわからない。

2015-11-08 00:59:42