引きこもりゲーヲタだけど寝て起きたら秘密結社のリーダーになっていた件（仮題）

一白 @ippaku_u

@TOS わからないけれど、そこを目指して進んでいこうという、その気持ちだけは持ち続けて生きていこうと青年は決意した。 クラウスの大きな拳と、レオナルドの小さな拳が、打ち合わされる。急速に暗くなっていく視界の中で、肩を貸してくれていたスティーブンの慌てた声が笑えた。

一白 @ippaku_u

@TOS 気がつくと、青年はコントローラーを握ったまま寝落ちしていた。画面には黒い画面に白文字で「Ｔｈｅ Ｅｎｄ」と書かれている。どうやら、スタッフロールで眠気に耐えきれなくなったらしい。起き上がって、ハーフダイブ３のソフトをゲーム機から抜き出す。名作は何度やっても面白い。

一白 @ippaku_u

@TOS 丁重にＤＶＤをケースに仕舞ってから、彼は自室を見渡した。カーテンを引いて光を遮断した部屋には、菓子の空き箱で溢れたゴミ箱、床で干からびてカリカリになった冷却シート、脱ぎ散らかしっぱなしの服などで酷い惨状だ。青年はまず、カーテンを開く。久しぶりに浴びる朝日のはずだが、

一白 @ippaku_u

@TOS ついさっき日の出を見たばかりのような気もする。エンディングにそんなシーンはあったかと自問していると、ドアが控えめにノックされた。 「レオナルド、朝食、置いておくわね」 母親の押さえた声に罪悪感が募る。ひとときだけ忘れられていた自己嫌悪と絶望も同時に蘇る。

一白 @ippaku_u

@TOS しかし、カタツムリのような生き方は今日で終わりだ。死んだように生きているなら、あがいてから死んでも変わらないだろう。 レオナルドはドアを開ける。朝食を飛び越えて、階段を下りる途中の母親を追い越す。自分の名前を呼ぶ親を置いて、彼はリビングへ走る。

一白 @ippaku_u

@TOS 「パパ、忘れ物？」そう問いかけてくるミシェーラの膝に縋ると、「おにいちゃん？」と正解を出してくれた。「兄ちゃん、お前の目を、治したい」「どうやって？」 「ＨＬへ行く。それで、方法を探してくる」「それ遠回しな自殺じゃない？」「違う」しばしの沈黙ののち、妹は微笑んだ。

一白 @ippaku_u

@TOS 「もう決めたのね」しかたがないなぁと溜息を吐くさまはどちらが長子なのかわからなくなるような上から目線で、レオナルドは「うん」としか返せなかった。

一白 @ippaku_u

@TOS あれから半年。そして、青年もといレオナルドがＨＬに来てからしばらくが経っていた。 突然婚約したミシェーラの未来の旦那に取りついていたクソ野郎との決着がついた後、レオナルドは包帯グルグル巻状態で病院に突っ込まれている。意識の浮き沈みもはっきりしない。

一白 @ippaku_u

@TOS その不確かな思考で、レオナルドはＨＬに来てからを振り返っていた。ザップに踏みつけられ殴られかけとさんざんな目に合いながら辿りついたライブラのこと。１０００兄弟と戦った後に食べたスシが美味しかったこと、疲労マックス＆腹いっぱいになった斗流兄弟と執務室でザコ寝したこと。

一白 @ippaku_u

@TOS 友人が空を突き抜けんばかりに巨大化したこともあったし、ツェッドのために警察犬のまねごともした。毎日ドタバタでさわがしくて”可愛い女の子との素敵な出会いもない”けれど、これらの日々が妹を守りきった自分を作り上げたのだと思うと、悪くない日々だったと思われた。

一白 @ippaku_u

@TOS 意識が浮上する。誰かの衣擦れが聞こえた気がして、レオナルドは妹の名を呼んだ。 「目が覚めたかね」 「わ、わ、すいません……！」 そこにいたのは、入院以来、サシで話すのは初めてとなるクラウスだった。水を汲んでもらいながら雑談をしていると、不意に彼が雰囲気を改める。

一白 @ippaku_u

@TOS 「本当に、よく戦った」 労いの言葉に、口がふさがらなくなる。 クラウスは、レオナルドの挫折について饒舌に語った。その挫折が強さを作ったのだと。 「誇り給え、レオナルド・ウォッチ。私も君を、誇りに思う」 その言葉を聞いた瞬間、レオナルドの体を熱い塊が駆け抜けた。

一白 @ippaku_u

@TOS がむしゃらに何かを目指していた日々。それはミシェーラの治し方であったり、ライブラという組織の中で役に立つ自分だったり、そういうものだと思っていた。 それも真実だろう。真実だけれど、胸の奥の奥でくすぶっていた何かが今この瞬間に報われたような気がして、レオナルドは涙を流す。

一白 @ippaku_u

@TOS まるでクライマックス、エンディングの直前。でも、映画でもゲームでもないこの人生は寝て起きれば明日が勝手に始まって、また遠い遠い光に向かって歩き出すことになる。 光に向かって一歩でも進んでいる限り、人間の魂が真に敗北することなど断じて無い。

一白 @ippaku_u

@TOS 足跡はただただ背後に、時には体を引きずるような無様な跡を残しながら、弱い自分なりに考えて、ひたすらに顔を上げて進む。 簡単そうで難しいそれを行うために、レオナルドは襲ってくる睡魔に逆らわず目を閉じた。 朝を迎えに行く為に、いま必要なものは休息だ。 おしまい

よっぱげ(-⊡∀⊡)✧ @ypg57

@ippaku_u そう！胃痛のくだりも！素晴らしかったです！！！ やはり一白さんは文章の神に愛されてる人だなーと思いつつよっぱげも寝落ちましたw ゲーヲタの彼の見た目がレオそっくりで、だからこその「私は君を誇りに思う」だったら更に胸熱だなあと思いつつ。

一白 @ippaku_u

@ypg57 神に愛されてたら……原稿にこんなに苦労してないっす……！(｀；ω；´) えっレオそっくりってなんですかその胸熱展開！！よ、良かったらネタ元明記するのでラストで使わせてくださいー！！

よっぱげ(-⊡∀⊡)✧ @ypg57

@ippaku_u 神は時に試練を与えるものです(突然の信心) わわわわ気に入っていただけて嬉しい限りです！ こんなんで良ければ全然使ってやってくださいましヾ(´∇｀)ﾉ 体力も人並みで殺傷能力を持たないレオが、それでも全力で応援戦う姿は、ゲーヲタにとって眩しかったんだろうなと。

一白 @ippaku_u

@ypg57 実はそのゲーヲタさんこそが神々の義眼を押し付けられたレオナルド・ウォッチさんだったら、という謎構造とかも燃えますね！と思考が暴走します(｀・ω・´) いらない眼を押し付けられて罪悪感とか絶望にがんじがらめにされて引きこもりゲーヲタしてたけどっえパラレルワールド的な！

一白 @ippaku_u

あ、あと、途中からこの曲がイメージだなーと思って、歌詞の一部とかモチーフとかをパク、お借りしてました。名曲。標高が高いとこに咲くらしい青いケシの花を出したかったけど、例の山と湖は標高高そうだからいけるかと思いつつやめといた。 utamap.com/showkasi.php?s…