豊崎由美さんによる、第144回芥川賞妄想選考会中継

豊崎由美＠アンチ維新 @toyozakishatyou

【妄想選考会23】徒然王子：これは世に言う「喪男」の悲哀を綴った私小説なわけですが、自らを道化として描く手法は目新しくないし、語り口もすでにできあがっているわけです。僕たち読者はじゃあどうやって楽しめばいいかと思うと、差異ですね。作品間で少しずつずれている違いを楽しむしかない。

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【妄想選考会24】シンちゃん：理屈なんかどうでもいいんだよ。現代小説の役目は今という時代が描けてるかどうかにあるんだよ。葉山の別荘でくっちゃべってる女２人の話と比べたら、こっちのほうがニートがテーマになってる分ましだろ。　よこたん：ニートがテーマじゃないと思うんですけど……。

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【妄想選考会25】シンちゃん：民主党が迷走してるわ、幼女をレイプするような低劣きわまりないポルノを野放しにしろなんて気が狂ったような主張をするオタクどもが消費社会の中心を担ってるわ、この大変な時代に対応した作品を候補にしてほしいよ、俺は。

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【妄想選考会26】リュウ：「今ここにある危機」から目をそむけた作品ばかりなのはたしかですね。　ナッキー：直接的に描くだけが小説の能とも思いませんが。　徒然王子：「今ここにある危機」なんかエンタメに任せればいいんですよ。お２人とも直木賞の選考委員になられたらいいんじゃないですか。

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【妄想選考会27】テルちゃん：まあまあ、池澤さんも島田くんもええやないの。新喜楽の飯がまずうなるようなケンカはやめとこか。まだ話に出てないようやけど、僕は田中慎也の『第三紀層の魚』がええな。タイトルはひどいけど、人情味のある、しみじみした話になっとるよ。

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【妄想選考会28】ろみたん：わたしは以前の作風のほうが好きですけどね。　テルちゃん：えー、そら、ないわ。あんな滅茶苦茶な人を小バカにしたような小説はありえへんよ。　よこたん：わたしも川上さんに賛成です。あの田中さんの作品独特の不穏な気配はどこにいってしまったんでしょう。

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【妄想選考会29】エイミー：テルさんはいい話っていうけど、違うよ、これはクサい話だよ。曾祖父の話を聞いてあげて、祖母の手伝いをして、女手ひとつで育ててくれてるお母さんのことを気づかって。こんないい子の小学４年生男子がいたら、きもーい。

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【妄想選考会30】徒然王子：いや、そう言うけど、わざとかもしれないよ。この主人公男子は母親の仕事の都合で山口県の海辺の町から東京に行くわけだけど、きっと馴染めなくてグレるんだよ。その予兆がラストの数行にこめられてるんじゃないか。　エイミー：島田くん、それ、深読みしすぎですから。

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【妄想選考会31】ナッキー：考えてみると、今回の候補作は面白いですね。『きことわ』と『第三紀層の魚』が海辺つながり、『第三紀層の魚』と『あぶらびれ』が釣りつながり、『第三紀層の魚』と『母子寮前』が親孝行つながり、『母子寮前』と『苦役列車』が私小説つながりなのか。

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【妄想選考会321】シンちゃん：どうだっていいよ、そんなこたあ！　早く決めてくれよ、俺は忙しいんだから。　リュウ：受賞作なしでいいんじゃないですか。　シンちゃんをのぞく一同：ええーっ！

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【妄想選考会33】さて、本当の選考会はどのように展開し、どの作品が受賞に至るのでしょうか。枡野浩一さんも出演するニコ生( http://live.nicovideo.jp/watch/lv37392022 )での発表を刮目して待て！