なぜ世界にはいろいろな言語があるのだろうか?

国立民族学博物館で歴史言語学を研究する菊澤律子准教授のまとめツイートです。クラウドファンディングのプロジェクトページはこちら⇨https://academist-cf.com/projects/?id=19
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菊澤律子 Kikusawa Ritsuko @ReidLili

だいたい1200言語と言われています。ことばの数え方、というのは実は難しくて、考え方はいろいろあるのですが、目安と考えていただければよいかと思います。

2015-11-21 05:03:43
菊澤律子 Kikusawa Ritsuko @ReidLili

これは民博のオセアニア展示場にあるパネルです。言語名を書き込んでみましたが、全部を書く場所がなかったので、他○○言語、という表示がしてあるものもあります。 pic.twitter.com/111p1q2uyN

2015-11-21 05:05:18
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菊澤律子 Kikusawa Ritsuko @ReidLili

その中で、たとえば四角で囲った国、フィジーに焦点を当てみます。 pic.twitter.com/klKDVFTYfB

2015-11-23 13:40:14
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菊澤律子 Kikusawa Ritsuko @ReidLili

大きくするとこんな感じ。赤線で囲った部分が、フィジー諸島共和国、全部で400を超える島があり、人が住んでいる島は100以上あります。私はこれまで、赤点で示した五ケ所で言語調査をしました。一番大きな丸い島は四国の半分くらいあります。 pic.twitter.com/yvcENmoQAl

2015-11-23 13:41:32
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菊澤律子 Kikusawa Ritsuko @ReidLili

日本同様、フィジーには方言がたくさんあって、発音の仕方や単語だけでなく、文法などもすこしずつ、違っているので、ここは調べ甲斐があります。どんなふうに違っているか、というと…

2015-11-23 13:42:11
菊澤律子 Kikusawa Ritsuko @ReidLili

まず、「これ」という意味を表す単語を比べてみます。左側が言語(方言)名、右側が現地語の単語になります。スライドの右側に、各方言が話されている地域を模式的に示しました。 pic.twitter.com/sMOFG6ObSj

2015-11-23 13:44:01
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菊澤律子 Kikusawa Ritsuko @ReidLili

発音を掲載できないのが残念です。以下は発音記号での表記になります。 oqoo [oŋgo:] nei   [nɛɪ] qoi  [ŋgoɪ] kwee [kwɛ:] xaa [xa:] という感じです。字面だけでも、違った表現であるのを見ていただけると思います。

2015-11-23 13:45:23
菊澤律子 Kikusawa Ritsuko @ReidLili

文の例も見ていただくことにしましょう。今度は3言語(方言)のみ、お見せしてみます。

2015-11-23 13:46:00
菊澤律子 Kikusawa Ritsuko @ReidLili

いずれも、同じ意味を表す文ですが、地域によってずいぶん違っているのを見ていただけるかと思います。こちらも発音をお聞かせできないのが残念です。ちなみにフィジー語の c は [θ~ð](英語の th のような音)になります。 pic.twitter.com/w7FklyTkth

2015-11-23 13:46:38
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菊澤律子 Kikusawa Ritsuko @ReidLili

フィジーの中だけでもこれくらい違っているのですから、太平洋全体を見るとどんなにたくさんの言語が話されているのか、想像に難くないですね。

2015-11-23 13:46:41
菊澤律子 Kikusawa Ritsuko @ReidLili

こんなにたくさんの言語がどのようにして太平洋で話されるようになったのか、どんな経緯を経てこんなにたくさんできあがったのか知りたい!と、思いませんか?

2015-11-23 13:47:16
菊澤律子 Kikusawa Ritsuko @ReidLili

というわけで、前置きが長くなりましたが、今日は最初に述べたように、言語の何をみれば人の先史についてどんなことがわかるのか、ということをお話します。このあとはスライドにあがっているような順序でお話をすすめたいと思います。 pic.twitter.com/dvAzdj2gQC

2015-11-23 13:48:17
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菊澤律子 Kikusawa Ritsuko @ReidLili

まず最初に、ことばの歴史がどうして人の歴史と結びつくのか、ここでは移動誌を例にお話します。 pic.twitter.com/kkLCRWO5k8

2015-11-23 15:03:20
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菊澤律子 Kikusawa Ritsuko @ReidLili

さきほど「世界の言語」の地図で、英語はイギリスだけでなく、アメリカでもオーストラリアでもニュージーランドでも話されていますね、と書きました英語はもともとイギリスで話されていた言語です。それがなぜアメリカやオーストラリアやニュージーランドで話されるようになったのかというと…

2015-11-23 15:03:57
菊澤律子 Kikusawa Ritsuko @ReidLili

そうです。イギリスからこれらの地域に人が移動し、そこで英語を話すようになったからです。現在、これらの国で話されている英語を比べてみると少しずつ違っており、同じ「英語」とはいえ、話してもお互いに通じないこともあります。

2015-11-23 15:04:23
菊澤律子 Kikusawa Ritsuko @ReidLili

これは移動してから、それぞれの土地で、ことばが少しずつ変わっていったからです。変化はそれぞれで独立して起こりますから、積み上がってゆくと、違いがどんどん大きくなっていきます。そのままゆくと、やがては異なる言語になってしまうわけです。

2015-11-23 15:07:56
菊澤律子 Kikusawa Ritsuko @ReidLili

このようなことがもっと大きな規模で、長い年月をかけて起こったと考えられています。

2015-11-23 15:12:02
菊澤律子 Kikusawa Ritsuko @ReidLili

この、コトバとヒトとの関係を「樹」と「→」の関係と呼びたいと思います。「樹」は言語の系統樹の樹、「→」はヒトの移動ルートのことです。 pic.twitter.com/w5kyQ7q10E

2015-11-23 15:13:41
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菊澤律子 Kikusawa Ritsuko @ReidLili

さきほどのオーストロネシア諸語の系統図はこんな風になっています。 pic.twitter.com/HSnQuAuqNk

2015-11-23 15:14:30
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菊澤律子 Kikusawa Ritsuko @ReidLili

一枚で入りきらないので、下半分はこちら。 pic.twitter.com/ue11OZraXf

2015-11-23 15:14:49
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菊澤律子 Kikusawa Ritsuko @ReidLili

言語は話者がいなければ存在しませんから、言語が分岐したということは、ヒトの集団が分岐したということを意味しています。この考え方をもとに、オーストロネシア語族の言語の歴史を現在話されている言語の地理的位置と照らし合わせると…

2015-11-23 22:27:01
菊澤律子 Kikusawa Ritsuko @ReidLili

太平洋には図のような経路でヒトが拡散したのだということがわかります。 pic.twitter.com/D3uLQKV3XA

2015-11-23 22:28:41
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菊澤律子 Kikusawa Ritsuko @ReidLili

それでは言語の系統関係は、どうしたらわかるのでしょうか。ここで注意しておきたいのは、似ているかどうか、は必ずしも系統関係には関係がないということです。

2015-11-23 22:32:18
菊澤律子 Kikusawa Ritsuko @ReidLili

たとえば、マグロとクジラとカバを比べたときに、マグロとクジラはカバに比べて互いに似ていますし海の中を泳ぎます。でも生物進化の系統からみると、クジラとカバの方が、マグロとクジラより、うんと近いのです。形や機能の類似性は必ずしも系統関係を反映してはいないということです。

2015-11-23 22:35:28
菊澤律子 Kikusawa Ritsuko @ReidLili

言語の場合でも、類似性がみられる理由には、さまざまな可能性があります。偶然の一致にはじまり、借用関係や言語の普遍的な性質のひとつであることもあります。例えば、現代日本語には英語に似た単語がたくさんありますが、誰も日本語と英語の系統が同じだとは思いません。

2015-11-23 22:39:42
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