茂木健一郎（@kenichiromogi）さんの連続ツイート第1660回「真実の口」

茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート１６６０回をお届けします。文章はその場で、即興で書いています。本日は、感想であります。

茂木健一郎 @kenichiromogi

昨日、尊敬する友人の一人のＨ氏とパーティーで話していた。Ｈ氏はオーストラリア出身で、日本で出版エージェンシーをしているのである。Ｈ、最近、気になることは何だい、と聞いたら、Ｈは答えようとしたが、そこで、私の別の知り合いが来て会話が始まった。

茂木健一郎 @kenichiromogi

ひとしきり会話をしたあと、Ｈは「気になること」の話題に戻ってきた。これは賢い人の一つの徴表である。会話が他にはずれていても、ワーキングメモリで覚えていて、戻ってこれる。「ぼくが最近気になることはね、もはや真実を言えなくなったということだ。」ここで別の知り合いが来てまた途切れた。

茂木健一郎 @kenichiromogi

数分、別の会話が行われたあと、またＨは戻ってきた。「もはや真実が言えない、ということの意味はね、ケン、君は、テロリストが無差別に攻撃するのと、ドローンが爆撃で市民を巻き込むのはどっちが悪いと思う」「そりゃあ、同じだろう」「だろう、でも、そんな真実をだんだん言えなくなってきてる。」

茂木健一郎 @kenichiromogi

「世界が日本のようになって来ているんだよ。日本では、昔から、本音と建前を使い分けるだろう。世界も、建前しか言えなくなってきたんだ。」それから、Hと私は、英国のある政治家について議論した。Ｈは、その政治家が嫌いだと言った。

茂木健一郎 @kenichiromogi

Ｈはリベラルである。「えっ、サッチャーさんよりも？」「ああ、そうだ。サッチャーは、少なくとも、自分がやっていることを信じていた。それに対して、彼は、自分のやっていることを信じてさえいない」「機会主義者か」「そうだ」

茂木健一郎 @kenichiromogi

それからひとしきり雑談して、私とＨは別れた。別れたあと、私は雑談の嵐にずっと巻き込まれていたが、Hが言った、「真実を言うことが難しくなって来ている」という言葉の余韻がずっと魂の底にあって、今朝こんな文を書いている。真実の口は、今はどこにあるのだろう。

茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート１６６０回「真実の口」をテーマに、６つのツイートをお届けしました。