【ミイラレ!第二十四話:合いの子のこと】(実況付き)

怪異に好かれる少年と退魔師の少女がなんやかんやするお話。龍造寺一家勢ぞろい。
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鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

……退魔師Tは新手の怪異を観察する。小柄で線が細く、膂力に優れるようには見えない。が、怪異は見た目で判別できるものではない。「美咲、立てるか」こちらから目を離さぬままに怪異が言う。「へ、平気だよ」尻餅をついていた口裂け女が勢いよく立ち上がった。15 #4215tk

2015-11-25 18:09:08
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「ならばよし。ちと充虎を助けに行ってやれ。我輩、こやつの相手で忙しくなるでな」「……言われなくても!充虎ちゃんいじめやがって、あの連中タダじゃおかねえ!」口裂け女が憤怒の形相で駆け去っていく。風の如き速度。Tは手を出さない。いや、出せない。16 #4215tk

2015-11-25 18:12:09
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

眼前の怪異……念話でもたらされた情報によれば『鍋島の化け猫』は強い。霊気はもちろん、年季が違う。迂闊に仕掛ければ手痛い反撃が待っているだろう。片手間でどうにかできる手合いではない。もっとも、向こうも自分に同様の判断を下したようだ。周囲の喧騒に構わず睨み合う。17 #4215tk

2015-11-25 18:15:07
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「どういう風の吹き回しだ?」Tは軽口を投げかける。「かの有名な化け猫殿が、なんだって見ず知らずの人間の子供にちょっかいをかける」「我輩ではなく、家内がな」怪異が応じた。先手を取るきっかけが欲しいのは、向こうも同じということか。退魔師はそう考える。18 #4215tk

2015-11-25 18:18:18
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「しかし、訝しいといえばそちらも同じことよ!何ゆえたかが人間の子供一人をここまで守ろうとする?おぬしら退魔師とて暇ではあるまい」「人間を守るのがこっちの仕事なんでな」「ふうむ!」怪異が懐手で顎に手をやる。「どうも腹の探り合いは時間の無駄のようであるな」19 #4215tk

2015-11-25 18:21:09
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

怪異が一歩踏み出す。次の瞬間には、彼女はすぐ目の前まで距離を詰めてきていた。「シャッ!」繰り出される素早い拳打を右腕で防ぐ。じゅっ、と肉の焼ける音。怪異が顔をしかめ、手を引いた。その手の甲が黒く焦げている。が、すぐに元どおりの肌へと戻った。20 #4215tk

2015-11-25 18:24:06
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

何が起こったか。Tが腕に纏う破魔の気による現象だ。彼の破魔の気は怪異に接触するだけでも効果を発揮する。並の怪異であれば今ので除霊できるのだが……(さすがにそこまで甘くはねえか)「破ァッ!」防御姿勢のまま気を放つ。しかしその時には既に怪異は側面へ回り込んでいた。21 #4215tk

2015-11-25 18:27:08
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

……「オラァッ!」「ハイヤーッ!」一方、口裂け女の美咲は妹を追い詰めていた怪異の一人に蹴り!対するチャイナドレス姿の怪異は青龍刀で危うくその不意打ちを防ぐ!「ぞろぞろぞろぞろウザってェ!踏み潰すぞ虫ケラァッ!」「アイヤー、とんだ狂犬ネ!あれ、ネコだったっけ?」22 #4215tk

2015-11-25 18:30:06
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

首を傾げるチャイナドレス怪異に構わず、美咲は充虎の戦況を伺う。連絡を終え戻ってきたらしい三毛犬・四毛犬とともに、あの蟷螂の怪異や蟻の怪異と相対している。落ち着いたものだ。静かに感心した美咲はすぐに眼前の怪異へ視線を移した。ひとまずこれを片付ける。23 #4215tk

2015-11-25 18:33:13
@hiiragi_r_t_d

妹思いだ。どうにか話し合いで解決できれば良かったのだけれども #4215tk

2015-11-25 18:34:28
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「おっと、それ以上は近づかない方がいいヨ!近づくと」「近づくと?」「穴に落ちる」眉をひそめた美咲は、すぐに足下の異常に気づく。慌てて飛び退くと同時、道路が砕け長大な何かが突き出してきた。「なッ……」さすがにあっけに取られる美咲。その耳に風を切る音。24 #4215tk

2015-11-25 18:36:08
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

即座に振り返った彼女は飛来した苦無を掴み取る。眼前の変事の隙をついたか。いつの間にか背後にもう一体、蜘蛛足の怪異が出現していた。「次から!次へと!」「数の利を生かさぬ理由もないのでな」降ってきた声に、美咲は頭上を振り仰ぐ。長大な百足の胴体が目に飛び込んできた。25 #4215tk

2015-11-25 18:39:10
@hiiragi_r_t_d

ナイスコンビネーション!も止められたか……膠着状態になるか?オツカレサマドスエ! #4215tk

2015-11-25 18:41:27

鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

一瞬だけ、美咲の毛が逆立つ。相手の霊気を感じ取っての反応だ。しかし彼女は地を蹴り、赤い甲殻に包まれた巨軀へ飛び蹴り!「目障り」一方の大百足は体を捻り、無数の脚部でこれを迎撃。ハイヒールと棘のような脚が噛み合う。「……クソッ!」舌打ちし、離れたのは美咲である。26 #4215tk

2015-11-26 20:33:04
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

まだ空中にある美咲に向け、大百足は大薙刀を突き刺しに行く。美咲は体を捻りこれを回避。大質量が掠めていく。顔をしかめた彼女は、地に突き立てられた刃を見た。その側面を高速で這い登る蜘蛛脚の怪異!「なん」罵りの言葉を上げるより早く、怪異が苦無で斬りつける!27 #4215tk

2015-11-26 20:36:12
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「クソがッ!」美咲は姿勢制御し、大薙刀の柄にハイヒールを突き立てた。そのまま向かってくる蜘蛛脚怪異を迎撃!「ほう、これも防ぐ」蜘蛛脚怪異が呟いた。顔下半分が紺色の布で覆われているため、その表情はうかがえない。「やるな。子供にしては」「ガキ扱い!すんじゃねェ!」28 #4215tk

2015-11-26 20:39:09
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

激昂した美咲は腕を振り上げ、手を「ぬぅん!」「うおっ!?」突如として、彼女の体は宙に投げ出される。大百足が大薙刀を振り上げ、彼女を振り払ったのだ。引き戻される大薙刀の上に残った蜘蛛脚怪異が苦無を投擲し追い打ちをかける。美咲はかろうじてこれを打ち払った。29 #4215tk

2015-11-26 20:42:09
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

大百足はそれ向け左の掌を突き出す。掌に無数の切れ込みが生まれ、開き、目となった。それらが美咲を見据えた。美咲の体が痺れる。邪視。顔を歪めた彼女に、再び大薙刀の刃が迫る。万事休すか。美咲は目を閉じることもできず、その刃が自分に突き立てられるところを、30 #4215tk

2015-11-26 20:45:03
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