【ミイラレ!第二十四話:合いの子のこと】(実況付き)

怪異に好かれる少年と退魔師の少女がなんやかんやするお話。龍造寺一家勢ぞろい。
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鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

轟音が鳴り響く。美咲は目を丸くした。自分を貫くはずだった大薙刀が半ばからへし折られている。敵二人の視線も、くるくると宙を舞う大薙刀の刃へ。不意に美咲は自身を包み込む暖かい力を感じた。これは「頭が高いわ、下郎!」一喝と同時、大百足が大地へと叩きつけられる!31 #4215tk

2015-11-26 20:48:03
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

……「何事!?」戦況を眺めていた怜は思わず声を上げた。傍では巡が眉根を寄せ、中空へ投げ出された蜘蛛の怪異、颯に人差し指を向ける。指先から迸った細い糸が颯に巻きつき、その体を引き寄せた。「う……申し訳ありません、巡様」「侘びなどいらん。ありゃあんたの手に余る」32 #4215tk

2015-11-26 20:51:09
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

そう言う巡の視線は、もはや助け出した部下に向けられていない。戦場の真ん中に突如として出現した、新たな怪異を見据えている。巫女服を着た長い白髪の女。その手には大きな鞄。不可思議な力で口裂け女を傍らに降ろした彼女もまた、巡へ視線を向けている。目に剣呑な光を湛え。33 #4215tk

2015-11-26 20:54:03
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「久しぶりだねえ、御伽の。元気そうじゃあないか」先に口を開いたのは白髪の巫女。巡はわずかに目を細めた。「どうも、ご無沙汰しております。こんなところでお目にかかるとは思いませんでしたな、ホクサンのビャッコ殿」その言葉に、怪異を囲んでいた退魔師たちがざわめく。34 #4215tk

2015-11-26 20:57:04
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「ビャッコだと?」化け猫と攻防を繰り広げていたTが辟易したように呟いた。「おいおい、どういうことだ。ちょいと大盤振る舞いすぎやしねえか」「ほう?家内を知っておるのかね」化け猫がにやりと笑う。「退魔師内でも有名なようだの。我輩も鼻が高いわ」「待て、家内だと?」35 #4215tk

2015-11-26 21:00:11
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

自慢げな化け猫に、Tが目を剥く。睨み合っていた巡もまた、あんぐりと口を開けていた。「……まあしばらく見ない内にけったいなことになってやがる。家内?いつの間にそんな」「ふふ、聞きたいかえ?ならば教えてやろうかね。あれはあの憎き退魔師どもを撒いておるときの……」36 #4215tk

2015-11-26 21:03:05
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「母ちゃん、今そんな長話してる場合じゃねえって!」隣の口裂け女が慌てたように口を出す。「母ァ!?」巡が頓狂な声を上げた。『ホクサンのビャッコ』がやや顔をしかめる。「そうとも。この美咲やそこの充虎はあたしが腹を痛めて産んだ子さ。かわいいだろう?夜桜さんに似て」37 #4215tk

2015-11-26 21:06:09
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「いやいや、そこはお前似だと思うがねえ」「嫌だわ、夜桜さんったら」人目をはばからずいちゃつき始めた怪異二人を見て、唖然としていた巡が息をついた。「……成る程、言われてみりゃあの気性の荒さはあんたの子だ。しかし道理で若い癖に霊気が強いと思ったよ」38 #4215tk

2015-11-26 21:09:08
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「あ、あの」ようやく気を取り直したらしい怜が、小声で尋ねる。「知り合いなんですか?あの怪異」「元同僚だよ。あんなんでも稲荷神の神使崩れの白狐だ」苦み走った顔で巡。「猫と狐の合いの子とはね……そりゃ霊気も強けりゃ上達も早いだろう。しかしいったい何の用だ?」39 #4215tk

2015-11-26 21:12:05

鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

狐と猫の合いの子。その言葉の意味を理解した怜は相手の脅威度を改める。両者の間に生まれた子は人語を扱うまでの時間が早い。言い換えれば、怪異への適性が異常に高いのだ。その伝承に則ったうえ、強い霊気を持つあの二体から生まれた怪異たちとなれば…… 40 #4215tk

2015-11-27 18:39:08
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「それはそうと御伽の」相方の化け猫、夜桜と語らっていた『ホクサンのビャッコ』が不意に真顔へと戻る。「ずいぶんとうちの子らが世話になったそうじゃないか。こいつはちと礼をせねばならんねえ?」「やれやれ。子といい親といい、どこまでも手を焼かせてくれる」41 #4215tk

2015-11-27 18:42:09
栗なご @kurinago77

調べてみたら実際猫と狐は両方とも陰の動物とされてる?とか同じような祀られ方をされてる?とかで親和性が高いらしい。 #4215tk

2015-11-27 18:44:26
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

さすがにうんざりとした様子で鬼女が言った。「だいたい先に喧嘩を売ったのはそちらでしょうに。あんたの娘が攫っていった人間が誰か、知らんわけでもありますまい」「ほうほう。少なくとも助けようとはしてるわけかい」白狐が片手に持った鞄をゆっくりと揺らす。42 #4215tk

2015-11-27 18:45:10
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「まあ曲がりなりにも自分が選んだ後継。形だけでも助けに向かうのが道理さね」「……言いたいことがあるんならさっさとお言いになったら如何です?ただ嫌味を言いに来ただけではないでしょう」「無論、無論。だがその前にそちらの頭領殿を返しておくとしよう」43 #4215tk

2015-11-27 18:48:10
栗なご @kurinago77

やはり、狐と狸の化かし合いみたいなやり取りしてるなぁ… #4215tk

2015-11-27 18:51:02
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

そう言って、白狐は鞄を放り投げた……退魔師Tに向けて。Tが反応しかけたそのとき、鞄は内側からひとりでに開く。そして「うおっ!?」中から飛び出してきた鎖がTの腕を捕らえた。鎖は退魔師を鞄の中へと引きずり込む!「Tさん!?」驚愕する怜の前で、鞄はひとりでに閉じた。44 #4215tk

2015-11-27 18:51:09
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

一連の出来事を冷めた目で見やっていた巡が腕組みをする。「それもあんたの娘の力で?成る程、よう練れておりますな。感服いたします。しかし寺生まれ相手には無謀でしょう」「なぁに、お守りはつけてあるさ。あんたこそ仲良しの退魔師を見捨てて平気なのかい?」45 #4215tk

2015-11-27 18:54:06
栗なご @kurinago77

Tさん完全に不意をつかれてしまった感じか… #4215tk

2015-11-27 18:54:16
栗なご @kurinago77

仲良く無いの知ってて言ってると思われる辺り、なかなか辛辣だなぁ。 #4215tk

2015-11-27 18:56:14
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

その言葉に、初めて巡の表情が動いた。「……あれと親しくしていたことなど一度もない。万が一でもあんたの娘が金星を取れたら拍手で迎えてやりましょう」「ふぅん!成る程、一応は本心のようだ」白狐が嘲笑うように鼻を鳴らす。隣の口裂け女が、不可解そうに両者を見た。46 #4215tk

2015-11-27 18:57:07
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「さて、美咲!さっさと充虎を助けてあげな。お母さんはちとそこの『青行燈』に用がある。一人でできるね?」「できるよ!もうガキじゃねえんだから!」マスクの奥の顔を歪め、口裂け女が駆けていく。Tの相手をしていた化け猫も既に向こうへ加勢済みだ。「これで後顧の憂いなし」47 #4215tk

2015-11-27 19:00:06
栗なご @kurinago77

相手の本心を探るのに有効な手ではあるよね…わざと怒らせるというか…まあ、その後が大変なんだけど。 #4215tk

2015-11-27 19:01:18
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