「アサシンズ・フロム・ザ・パスト」

艦娘には艦娘の因縁があり、過去がある。 今、過去からの刺客がやってくる。
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Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「アサシンズ・フロム・ザ・パスト」

2015-11-24 21:04:06
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

その夜は雨が降っていた。ただの簡単な夜間訓練の筈であった。「ハァ…ハァ…」隣に身を預ける“姉”の息が荒い。脇腹に穿たれた穴から血が零れる。“私”は必死に止血を行った。遠く、荒れる海の上に立つは先生と、金色のオーラを纏った黒フードの化け物。「イヤーッ!」「イヤーッ!」 1

2015-11-24 21:09:37
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

先生と化け物の戦いは熾烈に続く。数合の打ち合いの後、二者は距離を取った。『退避を』先生からの短いノーティス。先生はどうするのか。“私”はそれを問えなかった。応急処置を終えた“姉”を抱え、“私”は教えられたとおりに戦線から離脱しようとした。先生と化け物が交錯。KABOOOM! 2

2015-11-24 21:13:00
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「あっ…」私は見た。振り向いて見てしまった。化け物の砲撃が、先生の顔に直撃したのを。化け物は勝鬨の咆哮を上げる。先生は糸の切れたジョルリ人形めいて倒れ伏し、沈んでいった。「先生…」私はその光景を見て立ち竦んだ。そして、叫んだ。「せんせぇぇぇぇい!」 3

2015-11-24 21:15:26
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「通さん…神通さん!」呼び声。ハッとし、“私”は、神通は顔を上げた。「大丈夫ですか?」雪風が心配そうな顔で神通を見上げた。「もしかして、さっきの夜戦でどこか被弾を」浜風も同じように神通を見る。「いえ、大丈夫ですよ」神通は安心させるように微笑み返した。 4

2015-11-24 21:18:21
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「本当ですか?」雪風がなお問う。「ええ、本当よ」神通は雪風の頭を撫でた。雪風は気持ちよさそうに表情をほころばせる。「あー!雪風いいなー!」それを見て、付近を哨戒していた皐月が近寄って来た。「神通先生、僕も僕も!」「はいはい」神通は苦笑し、皐月の頭を撫でる。 5

2015-11-24 21:21:36
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「皐月ったら」三日月が呆れた様に皐月を見る。当の皐月は神通に撫でられたことに夢中で三日月の視線に気づかない。「見えてきましたね」そんな様子を我関さずと見ていた吹雪が、神通に呼びかける。全員の表情が戦士のそれに変わる。「あれが…」艦娘達は洋上から、その島を見た。 6

2015-11-24 21:25:02
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「アレが目的地かー!」皐月が歓声を上げた。「漸くドラム缶を降ろせるよ!」「こら、まだ着いたわけじゃないでしょ!」三日月が皐月を嗜める。だが、そう喋る二人も、会話に加わらぬ4人も疲労が顔に出ていた。無理もない。1日がかりの強行軍となれば。 7

2015-11-24 21:29:00
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「急ぎましょう」吹雪が言った。「何時敵が来るか分かりませんから」「吹雪ちゃんの言うとおりね」神通はそう答え、艦隊の先頭に立った。「総員、行きましょう。目標は」神通は思った。因縁深い地に帰って来たものだと。その思考を億尾に出さず、彼女は島を指差した。「コロネハイカラ島です」 8

2015-11-24 21:32:25
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

コロネハイカラ島。先の大規模作戦「FS作戦」により敵精鋭群に壊滅的被害を与えた鎮守府はこの島に前線基地を作る計画を立てた。だが、敵もさる者。回復仕切っていない戦艦や空母部隊ではなく。水雷戦隊を差し向け、基地建設を妨害してきたのだ。このままではFS作戦での勝利が無駄となる。 10

2015-11-24 21:37:04
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

鎮守府大本営はこれを大規模作戦として発令。かくして全鎮守府合同による輸送作戦が開始されたのだ。コロネハイカラ島周辺は入り組んだ地形が多くこちらも戦艦や空母戦力を投入できないが、コロネハイカラ島からの支援要請に答えられる様、外周海域に多数の艦隊が展開していた。 11

2015-11-24 21:40:03
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

既に外周に展開していた敵は聯合艦隊が掃討した。今回神通達が率いる艦隊の目的は、コロネハイカラ島基地への物資輸送だ。だが島周辺には排除しきれていない敵水雷戦隊が跋扈している。物資搬入の後、これらを打ち倒すのが神通達に与えられた任務であった。 11

2015-11-24 21:43:44
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「おう、よく来たな」コロネハイカラ島基地港湾部に到着した神通達を労うのは、褐色肌に古希めいた灰髪の大男だ。吹雪はその男の姿を認め、表情を和らげた。「リカルド司令官」「イヤーッ!」緊張を緩めた一瞬、神通がリカルド目掛け飛び掛かる!血迷ったか!? 12

2015-11-24 21:48:07
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「イヤーッ!」「イヤーッ!」神通のトビゲリを、リカルドは左腕を盾にして受け止めた。リカルドの体が数十センチ後退する。「イヤーッ!」リカルドは反撃の右チョップ突き!「イヤーッ!」神通はリカルドの左腕を蹴って空中に逃れる!そして空中で美しく弧を描き、着地した。 13

2015-11-24 21:51:46
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

二人はカラテを構え、睨み合う。「……」取り残された艦娘達はポカンとした表情でその数秒のカラテ交差を眺めた。「…いや、何してるんですか!?」まず正気を取り戻した浜風が叫んだ。「何って」「アイサツですかね?」リカルドと神通が不思議そうに浜風の叫びに答えた。 14

2015-11-24 21:55:34
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「アイサツ!?」浜風が悲鳴を上げる。「あんな物騒なアイサツがありますか!」「浜風さん…」吹雪が浜風の肩に手を置いた。その顔は諦観に満ちている。「諦めてください」「えっ」「アレがあの二人の普通です」「…アッハイ」謎めいた吹雪の気迫に負け、浜風は頷く。艦娘達は島に上陸する。 15

2015-11-24 21:58:35
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ともあれ、よく全員無事で来てくれた」「リカルド提督は何時此方に?」リカルドと神通は軽く握手を交わし、朗らかに会話を始める。「1時間前だな。ブインから「さつや」型を借りて来た」「さつや」型。鎮守府が所有する小型高速艇だ。その最大船速を捉えれる深海棲艦は現在確認されていない。 16

2015-11-24 22:03:15
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「「さつや」型…確かにあれなら、此方に来るのも容易いですね」「ああ、だがこの島はまだ基地として未完成だ」リカルドは建築途中の基地施設を見た。「修理となると、「さつや」から外の艦娘母艦に移動せにゃならん。とっとと物資を運びきらねぇとな」「ええ。その為には、此処を守らないと」 17

2015-11-24 22:06:37
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「リカルド提督、此方でしたか」その時、リカルドに声が掛かる。振り向けば、銀髪に練習巡洋艦の制服を着た艦娘が歩み寄って来た。「彼女は?」神通が問う。「ああ、確か。この島の常駐艦娘の」「鹿島と申します」鹿島と名乗る艦娘は神通に会釈した。神通も会釈を返す。 18

2015-11-24 22:09:48
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ドーモ、物資輸送艦隊旗艦の神通です」「ドーモ、ご苦労様です」鹿島は柔らかく笑い、会話に加わる。「貴女達が戦力として加わって頂けるなら百人力です」「ドーモ」「予測される敵戦力は?」「確認されているのは軽巡や駆逐艦くらいですが…」「が?」「どうも妙なのが」 19

2015-11-24 22:15:23
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「妙?」リカルドが問うた。「人型の軽巡が何隻か」鹿島が答える。「ツ級?」神通が眉を顰めた。「それとも軽巡棲鬼ですか?」「いえ、どちらでも無いそうです」リカルドが唸った。「もしや」「何か思い当たりがあります?」「新しい姫級とかならまだいいんだがな…」リカルドが呟く。その時! 20

2015-11-24 22:20:44
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

BEEEP!BEEEP!突如鳴り響く警告アラーム音!「何だ!」『敵襲!敵襲!』事態を告げるアナウンス!『敵水雷戦隊群が港湾部に接近!迎撃を!』「お早い歓迎ですね」神通が鉢巻を締め直した。「迎撃できるか?」「直ぐにでも」「頼んだ!」 21

2015-11-24 22:24:20
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