GB鎮守府の航海日誌 2015年10月から11月

kai jester @kai_jest

そうして、北上は息を整え……大井の顔から、バイザーを取り払った。 「大井っち！私だよ！わかる！？」 薄らと閉じていたまぶたが、徐々に見開かれていく。 「北上……さん……？」 #GB鎮守府

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そしてそのまぶたが大きく見開き、顔は驚愕の表情へと変化する。 「そのバイザーを取っちゃ駄目だ！！」 オペレータールームから廊下まで駆け込んできたアカシが叫ぶ。 しかしもうバイザーは取り除かれ、その両眼は北上を捉えている！ 「きた……かみ……さん……ドウシテ……」 #GB鎮守府

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「え……大井……っち……？」 「ドウシテナノ……オイテカナイデ……キャアアアアアアアアア！！」 ロビー全体を巻き込み大音声を上げる大井！ 「間に合わなかったか……！」 アカシが身を乗り出して階下を覗き込み、苦りきった顔をしている。 「アカシ！どういうことだ！？」 #GB鎮守府

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提督も窓から顔を出し、大声で怒鳴り声を上げる。 「深海化現象だ！あのバイザーはリミッターだったんだ！」 （え、どういうこと？大井っちが……深海化！？） 「大井は今、負の感情が溢れ出てる！視界を遮り、表情を消すバイザーが均衡を保っていた鍵だったんだ！」 #GB鎮守府

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「ヘイヘイヘイ！全然聞いてねえ話だぜアカシ！そう言うのは先に話すモンだ！」 「しょうがないだろう！？今さっきわかったんだから！」 二人がわけのわからない怒鳴り合いをしている。ちょっと、ちょっと待って。 「時間が無いんだ！完全に深海棲艦化する前に、大井を……！」 #GB鎮守府

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叫び声を聞きつけて来たのだろう。SWAT隊員が二階の廊下からロープで降下してくる。 今も叫び声を上げ続ける大井を取り囲み、肩に掛けようと右手を伸ばし―― 上半身が、消し飛んだ。 #GB鎮守府

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死んだ隊員は幸運だっただろう、その光景を目にすることなく逝ったのだから。 正面の隊員は22inch魚雷発射を喰らい、臓腑を撒き散らしながら死んだ。 後ろから仲間に駆け寄ろうとした隊員は、喉を握り潰され、苦しみながら絶命した。 #GB鎮守府

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周囲に恐るべき速度で8inch三連装砲が撒き散らされ、五体満足な者はいなくなった。 それぞれが逃げることも死ぬことも出来ず、ただ転がりながら呻くだけのモノと成り果てた。 あまりに一方的な暴力。それが一瞬の出来事だった。瞬く間に起きた殺戮だった。 #GB鎮守府

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どうすればいい、状況が掴めない。撒き散らされた死、大井っち、目の前の深海棲艦。 「北上ィ！飲まれてんじゃねえぞ！」 提督が怒鳴りつけるような声で叱咤してくる。 「提督ゥ……！私、どうすれば！」 「ここまで来たらもう決まってんだろ！」 #GB鎮守府

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マスクの虚ろな目が正面に向けられる。 そして堂々と手術用手袋を付けた右手を大井っちに向け、中指を立て、きっぱりと宣言した。 「その糞野郎から大井を奪い返す！気合入れてぶっ殺せよ！」 アカシ先生も声を大にして叫ぶ。 「だから！殺しちゃダメなんだって！」 #GB鎮守府

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