1F2号機の建屋解体に絡み、2014年7月に話題になった解体作業によるダスト飛散と玄米の汚染について改めて考える

私としては昨年時点で答えは出ていると認識していたのだけど、世間の関心が薄れたこともあって未だに間違った認識のままの人も少なからずいるようなので、改めて。
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Flying Zebra @f_zebra

東電が1F2号機の建屋解体を来年から始めるというニュースに際し、解体作業に伴う汚染物質を含んだダストが飛散することを心配する声を見かけた。それで思い出したが、昨年7月にも似たような話があった。少し振り返ってみたい。

2015-11-27 19:12:01
Flying Zebra @f_zebra

実際の事象はさらに1年前、2013年8月の話だ。1Fサイトから20kmほど離れた南相馬で玄米から基準の100Bq/kgを超えるセシウムが検出され、その原因が当時サイト内で行われていた3号機の建屋解体作業による飛散ダストではないかと疑われ、話題になったのが2014年の7月だ。

2015-11-27 19:13:07
Flying Zebra @f_zebra

原子力規制委員会や環境省の公式見解としては解体作業との関連は認められず、玄米汚染の原因は分からない、というものだったが、2014年夏の時点では1Fでの作業が原因だという意見が多かったように思う。今でも、特に検証してみることもなく何となくそう思っている人が多いのではないだろうか。

2015-11-27 19:15:52
Flying Zebra @f_zebra

私自身は当時はあまり関心がなかったが、2ヶ月ほど経ってから検証し、自分なりの結論を得た。以下に当時のツイートを転載する。なお、現在に至っても公式見解は変わっていないし、それを覆す有力な証拠も出ていない。

2015-11-27 19:16:35

以下、2014年9月27日のツイートを再掲。

Flying Zebra @f_zebra

ずっと気になりながらきちんとフォローできていなかった、今年7月頃少し騒がれた話題について今さらながら調べてみた。昨年8月に南相馬の玄米で基準値越えのCsが検出され、その原因が福島第一サイトでのがれき撤去作業によるダスト飛散と疑われたというものだ。

2014-09-27 03:14:18
Flying Zebra @f_zebra

私は当初から懐疑的だったが、そのうち詳しい検証が為されることを期待しつつ特に自分で調べてみることはしていなかった。ところが今となっては世間の関心も薄れ、改めて検証されることは期待しにくい。何となく、今でもダストの飛散が続いているようなイメージだけが残された形だ。

2014-09-27 03:14:41
Flying Zebra @f_zebra

なぜ懐疑的だったかと言えば、20kmも離れた場所に何らかの有意な影響を与えるような放射性物質を含む「ダスト」はかなり粒径が小さいもののはずで、そうした微少なダストが20kmも拡散することなく集まったままということは考えられず、当然広範囲に拡がるはずだ。

2014-09-27 03:16:17
Flying Zebra @f_zebra

ところが全袋検査が行われている福島県内で同時期に米の汚染が確認されたのは非常に限定された地だけで、まずそこが不自然だと感じた。さらに、より福島第一サイトに近い地域で土壌その他の新たな汚染の報告がないのもおかしいと思った。

2014-09-27 03:16:56
Flying Zebra @f_zebra

がれき撤去などの作業で舞い上がるダストは、大小様々な粒径のものを含む。これらが風に乗って移動する場合、粒径が大きく重いものから先に降着する。降着物による汚染は重量にほぼ比例すると考えられるので、距離が離れれば汚染は指数関数的に小さくなるはずだ。

2014-09-27 03:17:25
Flying Zebra @f_zebra

つまり、サイト内の作業により飛散したダストが原因であれば、サイトの敷地内と少し外、例えば5km先では汚染の度合いは桁違いになるはずで、20kmも離れると更に何桁も小さくなるはずだ。逆に言えば、よりサイトに近い地域では桁違いに大きな汚染が確認されないとおかしい

2014-09-27 03:17:47
Flying Zebra @f_zebra

以上が、当時の断片的な報道や人づてに聞く情報だけから私が判断していた状況だ。その時はそれ以上調べなかったが、仮に発電所の外に何らかの影響を出したとなれば東京電力が徹底した調査と原因究明、再発防止をして公表するはずであり、それを見ればいいと思っていた。

2014-09-27 03:19:34
Flying Zebra @f_zebra

今回改めて調べてみて、まずこの件に関する東京電力や規制庁のプレス発表がほとんどないことに違和感を持った。僅かなプレス発表も1号機のカバー解体作業におけるダスト飛散抑制対策に関するものだけで、その中にもサイト外の汚染については言及がない

2014-09-27 03:21:52
Flying Zebra @f_zebra

よくよく調べてみると、東京電力や規制庁が認識している、2015年8月の3号機原子炉建屋上部ガレキ撤去作業に関連する問題というのは「免震重要棟前ダスト濃度上昇及び身体汚染者発生」であり、サイト外の汚染問題とは認識していないことが分かった。

2014-09-27 03:22:13

ここの2015年8月というのは2013年のまちがい

Flying Zebra @f_zebra

時系列的には、2015年8月12日にダストモニタで警報が発報、入退域管理で身体汚染が確認された。次いで8月19日にも同様の事象があり、その原因として両日に風上で行われていた3号機原子炉建屋上部ガレキ撤去作業が抽出されたというものだ。

2014-09-27 03:22:53

こちらも同じく2013年のまちがい

Flying Zebra @f_zebra

この際、敷地境界のモニタリングポストでも空間線量率の上昇が記録されており、それは報道でも触れられていた。そのため私はサイト外にも何らかの影響があったと認識していたのだが、具体的な数値は今回改めて調べてみるまで知らなかった。

2014-09-27 03:24:10
Flying Zebra @f_zebra

風下方向の敷地境界にあるモニタリングポストNo.2において記録された線量率の上昇は、約50nGy/h、つまり0.05μSv/hだった。これは電子式のシンチレーション線量計などで検知できる限界より遙かに低く、放出が数時間継続したとしても有意な影響にはなり得ない

2014-09-27 03:24:24
Flying Zebra @f_zebra

東電は更に敷地内の駐車場での汚染調査と出入りする車輌の汚染調査を行っているが、いずれも通常の値と有意な違いは見られなかった。作業による飛散ダストが原因の汚染であれば、敷地内で有意な影響がないものが敷地外に有意な影響を与えることは考えられない

2014-09-27 03:25:16
Flying Zebra @f_zebra

つまり、東電としては3号機の作業で作業者の身体汚染などの問題があったことを把握し、原因究明をして1号機カバーの作業では再発防止対策を施しているが、この問題が発電所の外に影響を与えたとは考えていないということだ。調査の結果からすれば、妥当な判断だろう。

2014-09-27 03:25:38
Flying Zebra @f_zebra

この事象と南相馬での米の汚染を結びつけることにはそもそも無理があ、今に至ってその仮説を補強する検証結果が何も出てこないのも当然だ。今年7月にこの問題をスクープしたのが「あの」朝日新聞というのが、今となっては趣深い。

2014-09-27 03:27:32
Flying Zebra @f_zebra

福島第一原子力発電所の事故が福島県及び周辺に多大な影響を及ぼし、今なお多くの人が苦しんでいるのは揺るぎない事実だ。破壊された原子炉からは現在も一定量の放射性物質が環境中に放出されているのも間違いない。ただし、今も汚染が拡大しているという認識は明確に誤りだ。

2014-09-27 03:28:56
Flying Zebra @f_zebra

新たに放出される放射性物質による汚染は自然減衰よりも少なく、全く除線が行われていないサイト近傍でも線量は下がり続けている。汚染水も然り。汚染水の漏洩は完全には防ぎ切れていないが、周辺海域の汚染は下がり続けている。こうした「事実」は、正しく理解しておきたい。

2014-09-27 03:29:28
Flying Zebra @f_zebra

福島第一サイト内のがれき撤去作業によるダスト飛散はサイト外に有意な(何らかの測定値で検知できるほどの)影響を及ぼしたのかどうかという、ずっと引っ掛かっていた問題については、影響はなかったというのが私なりの結論だ。もし私が見落としている事実があれば、知らせて頂けるとありがたい。

2014-09-27 03:30:31